昨秋に続いて今秋もキンモクセイが二度咲きした。再び、あの美しい香りが我が家の周辺を満たしている。セミの抜け殻はまだ頑固にくっ付いている。
しかし、ほとんど日常的なことであるが、こんな身近な樹についても、私は何も知らないに等しいなぁ・・・ということで、少し調べてみた。
すると、これが江戸時代に中国南部から渡来したものだということが分かった。ということは、紫式部も鴨長明も源実朝も、戦国時代の武将や庶民の皆さんもこのすばらしい香りを知らなかった・・・ということになる。
また、元の名を桂花といい、濃いオレンジ色の花はワイン漬けにしたり、花茶にしたり、蜜で煮て香味料になったりすることや、様々な料理にも使われていることが分かった。この強烈ともいえる芳香で、かつては便所の臭い消しとしても植えられていたことなども面白い事実だと思った。
英語名は"fragrant orange-colored olive"「薫り高きオレンジ色のオリーブ」・・・実に分かりやすい命名だ。
実家の昔の玄関にはジンチョウゲが一本植えてあり、この芳香がこれまた強烈で、初春の開花期になると、思春期前後の少年のウキウキした情感を更にかき立てるような働きをしていたように思う。
春のジンチョウゲと秋のキンモクセイは、その「香りの持つ力用」という点で、私にとっては庭木の双璧に位置している。