憲法学者である木村草太准教授(首都大学東京)が月刊誌「潮」9月号に「『七・一閣議決定』を読む」という一文を寄稿しています。こういう政権擁護、与党擁護の理屈もあるのかと感心し、これを批判しておく必要があると考えました。 ※「談」と注意書きがあるので、口述が元です。
木村准教授の寄稿は法律の技術職人といった風で、一読したところ緻密な立論を重ねているように見えます。そのおかげで、7・1閣議決定を合憲と判断しているのか、違憲と判断しているのか、一読してわかりづらいところがあります。これは元が口述だからというよりも、論理が迷走しているからだと考えます。彼の論旨に二面性があるからです。
論旨は、前半で、閣議決定という行為そのものは内閣の通常の行為に過ぎず、7・1閣議決定も通常の内閣の行為の範囲内であり、問題はないとしています。最高裁が違憲判決を避けて門前払いするのと同じやり方で、自公与党と安倍政権にお墨付きを与えたわけです。
そして後半では、今後制定される法律が合憲であるか違憲であるかの分かれ目であるとして、読者に注意を喚起しています。ここで、学者としての自分の良心を守る算段をしています。今後制定される関連法の行く末によっては、「だから私はこう言っていた」と逃げることができる論旨です。
寄稿文がこのような迷走ぶりを見せる結果になったのはなぜでしょう。
世の中は強いものに抵抗することが難しいものです。給料取りは上司に弱く、社長であってもお得意先には頭が上がりません。学者・評論家であっても、強いものに弱い人の方が、そうでない人よりはるかに多い。単純にそれが一つ。
もう一つは、細部の法律論的分析にこだわり過ぎる職人性です。このために7・1閣議決定に執心した政権側の意図の分析が推測になるため、意識的に切り捨てているようにも見えます。
結果、彼の議論は政権側の進行にエールを送ることになります。彼はNHKにも出ていますし、与党議員との人脈も豊富なようですから、政権側を刺激しないような立論をし、同時に憲法学者としての良心を守る方途を選んだと、私なんぞは見ているわけです。誠実に見える学者にも注意が必要です。
次回に、月刊誌「潮」9月号の木村准教授寄稿文を批判したいと思います。
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<私のアピール>
2012年末の安倍政権成立以後の短年月、武器輸出3原則の緩和、特定秘密保護法の新設、憲法9条解釈変更の7・1閣議決定と、先行き不安な政策ばかり急激に推進されています。第2次大戦後の日本において安倍政権は最も危険な政権です。
安倍内閣退陣の機運を盛り上げていきましょう。与党であれ野党であれ、安倍首相と同じ考えの人、同じ路線の人を選挙で落としましょう。