先月、2018年(平成30年)4月10日、愛媛県職員作成になる加計文書が朝日新聞朝刊で報道され、その日のうちに多くの報道が後追いして同じ文書を紹介しました。文書には、2015年(平成27年)4月2日に愛媛県職員、今治市職員、加計学園関係者がそろって官邸を訪問したと書かれてありました。
同日4月10日、この文書――愛媛県職員作成になる官邸面会「首相案件メモ」に名の上がっている綾瀬唯夫経済産業省審議官(当時の総理大臣秘書官)がコメントを発表しました。下に、掲載します。
4月13日、農林水産省内で探索調査したところ同じ内容の文書が見つかったと、同省の斎藤大臣が公表しました。上に掲載した写真の文書は、この農林水産省公表のものです。
下に、4月10日、一斉にメディアで流れた文書を掲載します。これは毎日新聞から採取しました。上の写真、4月13日農水省公表のものと、下に掲載した4月10日~11日一斉報道のものとでは、2の項が若干異なる文章になっています。大勢に影響のない些末な相違ですが、このことについては、中村愛媛県知事記者会見で質問が重なり、中村知事がその理由をくわしく答えています。
愛媛県知事の情報公開姿勢は政府に比して、誠実なものです。引き続き「首相案件メモ」に関して、次回に、中村愛媛県知事記者会見録を掲載します。
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(愛媛県職員官邸面会「首相案件メモ」毎日新聞2018年(平成30年)4月11日から)
獣医師養成系大学の設置に係る内閣府藤原次長・柳瀬首相秘書官との面談結果について
27・4・13
地域政策課
1 4/2(木)、獣医師養成系大学の設置について、県地域政策課長・今治
市企画課長・加計学園事務局長らが内閣府藤原次長及び柳瀬首相秘書官らと
それぞれ面談した結果は、次のとおり。
《藤原地方創生推進室次長の主な発言(内閣府)11時30分》
・要請の内容は総理官邸から聞いており、県・今治市がこれまで構造改革特区
申請をされてきたことも承知。
・政府としてきちんと対応していかなければならないと考えており、県・市・
学園と国が知恵を出し合って進めていきたい。
・そのため、これまでの事務的な構造改革特区とは異なり、国家戦略特区の手
法を使って突破口を開きたい。
・国家戦略特区は、自治体等から全国レベルの制度改革提案を受けて国が地域
を指定するものであるが、風穴を開けた自治体が有利。仮にその指定を受け
られなくても構造改革特区などの別の規制緩和により、要望を実現可能。
・今年度から構造改革特区と国家戦略特区を一体的に取り扱うこととし、年2
回の募集を予定しており、遅くとも5月の連休明けには1回目の募集を開
始。
・ついては、ポイントを絞ってインパクトのある形で、2、3枚程度の提案書
案を作成いただき、早い段階で相談されたい。
・提案内容は、獣医大学だけでいくか、関連分野も含めるかは、県・市の判断
によるが、幅広い方が熱意を感じる。
・獣医師会等と真っ向勝負にならないよう、既存の獣医学部と異なる特徴、例
えば公務員獣医師や産業獣医師の養成などのカリキュラムの工夫や、養殖魚
病対応に加え、ペット獣医師を増やさないような卒後の見通しなどもしっか
り書きこんでほしい。
・かなりチャンスがあると思っていただいてよい。
・新潟市の国家戦略特区の獣医学部の現状は、トーンが少し下がってきてお
り、具体性に欠けていると感じている。
《柳瀬首相秘書官の主な発言(総理官邸)15時00分》
・本件は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受け
るという形で進めていただきたい。
・国家戦略特区でいくか、構造改革特区でいくかはテクニカルな問題であり、
要望が実現するのであればどちらでもいいと思う。現在、国家戦略特区の方
が勢いがある。
・いずれにしても、自治体がやらされモードではなく、死ぬほど実現したいと
いう意識を持つことが最低条件。
・四国の獣医大学の空白地帯が解消されることは、鳥インフル対策や公衆衛生
獣医師確保の観点から、農水省・厚労省も歓迎する方向。
・文科省についても、いい大学を作るのであれば反対しないはず。
・獣医師会には、直接対決を避けるよう、既存の獣医大学との差別化を図った
特徴を出すことや卒後の見通しなどを明らかにするとともに、自治体等が熱
意を見せて仕方がないと思わせるようにするのがいい。
・加計学園から、先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣
が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があった
とのことであり、その対応策について意見を求めたところ、今後、策定する
国家戦略特区の提案書と併せて課題への取組状況を整理して、文科省に説明
するのがよいとの助言があった。
2 ついては、県としては、今治市や加計学園と十分協議を行い、内閣府とも
相談しながら、国家戦略特区の申請に向けた準備を進めることとしたい。
また、これと併行して、加計学園が想定する事業費や地元自治体への支援
要請額を見極めるとともに、今治新都市への中核施設整備の経緯も踏まえな
がら、経費負担のあり方について十分に検討を行うこととしたい。
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(柳瀬審議官(愛媛県職員面会当時総理大臣秘書官)「コメント」 毎日新聞 4月10日 22時53分)
平成30年4月10日
経済産業審議官 柳瀬唯夫
朝日新聞等の報道に関しまして、以下のコメントをさせていただきます。
国会でも答弁していますとおり、当時私は、総理秘書官として、日々多くの方々にお会いしていましたが、自分の記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません。
自分の総理秘書官時代には、国会でも答弁していますとおり、50年余り認められていなかった獣医学部の新設がどうなるかという制度論が議論されており、制度を具体的にどこに適用するかという段階ではありませんでした。実際、その後、獣医学部新設を追加規制改革項目として、取り上げるかどうかについては、いわゆる「石破四原則」の決定により、検討が開始されることになり、翌年の平成28年11月に、獣医学部新設が国家戦略特区の追加規制改革事項として、決定されたと認識しています。
具体的な地点の選定手続きは、私が総理秘書官の職を離れてかなり時間がたってから始まり、今治市が特区を活用して、獣医学部新設を行う規制改革が決まったのが平成29年1月だったと認識しています。
したがって、報道にありますように、私が外部の方に対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をすることはあり得ません。
(以上)