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久しぶりに書店へ行き、正価で買った文庫本。たまには行くものです。全然知らなかった作家。1970年生まれ。少女小説でデビューしたそうで、官能的な作品が多いという。
面白かった。難しく疲れたその先にかすかな光明のように自分の知見が開かれる小説もいいけれど、(苦労した分偉くなったと錯覚する)読みやすくて、人間の、女性のエロスの深いところまで下りていく作品。
短編集になっているけれど、登場人物は重複し、主役になったり、脇役になったりで、全体として一つの小説になっている。
主役はみな女性、結婚しても子供がいなかったり、子供がいても、夫がトランスジェンダーであるのを知った後の苦悩とか、夫に女として相手にされない寂しさとか、体を持つ女の、その体を持て余すどうしようもなさがよく書けていると思った。
男性には書けない作品。女性の隠された欲望を知りたい男性には必読の書と思いますが、怖くなるかも。
エロいし、それはまあいいとして、時々劇画調になるけど、くっきりと場面が浮かび、展開も早いので読んで面白い。
女が男と出会って深い仲になり、子供を産んで育てる。人生とは言ってみればそれだけのもの。で、何よりも大切。太宰治が「斜陽」の中で女主人公に言わせています。
しかし、女の欲望、不満も千差万別。でも日常生活ではまず口にしない。そのいろいろがここにはあります。自分に似た人がいるかもしれない。女の人生を深く知りたい男性と女性におすすめです。