日本人の引き揚げ列車は
貨物列車でしかも、無蓋車でした。
無蓋車は天井がありません。
太陽のあかりを受けながら走るのですから
明るくていいのですが、
雨が降ってきたらひとたまりもありません。
幸い、奉天駅まで晴天続きで幸運でした。
… … …
やがて、相談がまとまったのか
引き揚げ列車は奉天駅を出発しました。
行く先は朝鮮半島を通るコースではなく
葫蘆島(ころとう) を目指していました。
数時間走った頃、大平原の真ん中で列車は
止まってしまいました。
しばらくして、世話役の一人が
私たち家族が乗っている無蓋車にやってきました。
「機関手が金をくれ!…金をくれないと走らない」と
いっていると、皆からいくらかの金を集めて
いきました。
やがて、引き揚げ列車は葫蘆島目指して
走り出しました。