■■【日本経済の読み方】 11月前半のまとめ 時系列的にエッセンスをコンパクトにまとめました
◆ 日本のGDP年率3期ぶりのマイナス成長 2012/11/14
今年7月から9月まで、第2四半期のGDP(国内総生産)の伸び率は、物価の変動を除いた実質で前の3か月と比べてマイナス0.9%(年率-3.5%)と、3期ぶりのマイナスとなりました。
世界経済の減速、企業の設備投資も落ち込み、日中問題などの影響で輸出などが大幅に減少したためです。
野田首相は、「景気の下振れを感じつつありましたので、今月中をめどに経済対策をまとめるように担当閣僚に指示している。危機感を持って対応したい」と危機感を述べました。
前原経済財政担当大臣も「景気後退局面に入っていた可能性は否定できない」と、一層の危機感を吐露しています。
金融庁も、4年前のリーマンショックのような深刻な金融危機を避けるために、国際的に大規模な金融取引を展開する銀行や証券会社、それに保険会社を対象にした包括的な危機対応制度を新たに設ける方針を固め、制度の原案を公表しました。
「財政の崖」が叫ばれる中、アメリカ発一段の世界的不況・金融危機を回避すべく、各国が真剣に取り組んでいます。日本では、選挙による政治不在状態で、生き残れるのでしょうか?
◆ 日本企業の中国ビジネス不況への対応 2012/11/12
尖閣諸島問題などから中国反日感情は依然続いています。経済的には相互依存関係があるので遠からず改善するでしょうが、政治的には長引くことが懸念されます。
自動車産業は、トヨタや日産が前年比40%以上のダウン、ホンダに至っては50%以上も売上が減少していますので、本腰を入れた対策を打ちませんと、中国市場での打撃は大きくなってしまうでしょう。
日産は、反日デモに伴う破壊行為で車が壊された場合、修理費を全額、負担する制度を設けることにしました。トヨタやホンダも車を壊された人達の負担を減らすため相談に応じ始めました。
トヨタグループは、中国偏重を避ける動きを始めています。今後5年以内にインドネシアに約1000億円を投資し、社員の数も増加させ4万人以上の体勢を整えると発表しました。
世界経済の減速も手伝って、影響を受けているのは自動車産業だけではなく、全ての分野と言っても過言ではないでしょう。
輸出や生産が減少する素材メーカーでは、収益性の低い部門を売却したりして事業の選別を各社が始めています。
常に先を読み、リスクマネジメントを確実に進めていく必要がありますね。
◆ TPP 進むのか?止めるのか? 2012/11/10
アメリカやオーストラリアなど太平洋を囲む国々で関税の撤廃などを進めるTPP(環太平洋パートナーシップ協定)を巡って、国内では大きく2つに割れたまま、結論を先延ばしにしています。
2011年11月に、交渉参加に向けて関係国との協議に入るという方針を決めました。国内の意見集約が済んでいないという理由です。また、アメリカが自動車市場の一段の自由化などを迫っていることも先に進むのを阻んでいるようです。
そのような中で、枝野経済産業大臣は、日本にとって重要な枠組みですので、現民主党政権で参加の是非を判断すべきだという考えを示しています。
民主党政権がいつまで続くか殆い中、担当大臣としては、その決断をした大臣であるという歴史を作りたいのかもしれません。
NOなら、推移を見守るという選択肢もあっていいでしょう。
YESなら、遅くなればなるほど、日本の声は届かなくなります。
枝野大臣と思惑は異なりますが、私も早期にYESなのかNOなのかを決めるべきだと思います。
◆ 牛肉が安くなる? 2012/11/08
「BSE」という言葉が私たちの記憶から大分遠くなっています。
Bovine Spongiform Encephalopathyという言葉の頭文字を取ったもので、「牛海綿状脳症」と日本語では言います。牛の病気の一つで、脳がスポンジ(海綿)状になる病気で、「狂牛病」と一般的には略称されています。
脳やせき髄などに病原体が蓄積しやすく、感染した牛を食べるとけいれんを起こしたり、重症化すると運動機能が低下したりすると言われています。
生後20か月以下ですと、病原体が少ないことから、これまではアメリカ産牛肉は園条件に合ったものが輸入されてきました。過去10年間に感染した子牛が生まれて規定にことから「30か月以下」に緩和されることになります。
アメリカ牛肉は、安さが売り物ですが、味はいまいちです。
今年の穀類の価格急騰で、その安さもオーストラリア産などと差が少なくなってきています。
味の方は、日本向けに工夫していますので、以前に比べると良くなる可能性があります。
私事ですが、1970年にアメリカに赴任し、カルチャーショックの一つが「わらじステーキ」でした。わらじのステーキが饗されるわけではなく、わらじのような大きさ、形状のステーキで、当時2ドルでおつりが来ました。ただし、1ドル=360円の固定相場制時代の話です。
◆ 求人あるのに就職しない大学生 2012/11/07
内定が得られないで、いまだに就活をしている大学生が36%にあたる20万人もいるほど、就職難が続いています。
ところが、求人数は、大学生の数を上回っているのです。
大学生が選り好みをして、大企業志向でいるだけの問題ではなさそうです。
人を求めている中小企業の情報が、大学生の目に留まらないと言うことがその原因の一つです。中小企業だけの力では、求人活動が思うように言っていないのが、残念ながら現状です。
大学生の中には、大企業志向者ばかりではないですが、就職支援をしている職員が大企業志向ですから、情報提供もアドバイスもそれをベースにしてしまっています。
ある大学に、「経営コンサルタント歴35年の経験から中小企業の見分け方という視点で就活支援をしたい」と申し出ました。ところが「その様な情報提供は自分達でできる」と言って、平素中小企業を相手にしている経営コンサルタントの話を、就職課の職員と同列に見るしか能力がないといえます。
また中小企業のための団体が、中小企業の力の及ばない部分で支援すべきです。
ところが中小企業のための団体である商工会議所が、まだまだ充分な役割を演じていません。なぜなら、日本商工会議所の役員の大半が大企業出身者で占められているからです。これでは、中小企業の現状をキチンと把握して、そのニーズに即したサービス提供をすることができないのはあたり前と言っても過言ではないでしょう。
◆ 新米価格が上昇 2012/11/04
農水省が今年の新米における卸価格について、平均で前年同月比10%上昇したと発表しました。
卸売業者などに販売した新米の価格は、全銘柄の平均で60キロ当たり1万6650円でした。福島県産の「ひとめぼれ」のように20%も上昇したものもあります。
農林水産省によると「震災のあと業者間で在庫確保の動きがある」という見方です。
気になるのは、小売価格への転嫁ですが、厳しい経済情勢の下、消費者はより安いコメを求める傾向が強く、小売業者としては値上がり分を十分に販売価格に転嫁するのは難しそうです。
◆ 東京駅の利用者が30%増加 2012/11/02
赤煉瓦の東京駅丸の内駅舎が、10月1日にリニューアルオープンして、早くも1か月が経ちます。東京駅を利用する私ですが、まだ新しい駅舎は見ていません。余計なことですが、東京スカイツリーもまだ登っていません。
さて、その東京駅ですが、太平洋戦争末期の空襲で焼失してしまいました。今までの駅舎はドーム部分がとんがり帽子で、新しい駅舎のように丸みを帯びたドームではないのです。また、今までの駅舎は2階建てでした。
外観だけでなく内装のレリーフなども復元されました。
100年程前は、オランダのアムステルダム駅と酷似した姿ですが、戦前の3階建ての姿に復元されたのです。
リニューアルオープンしてから1か月間に駅を利用した人は、去年と比べて30%余り増加しています。とりわけ土日を中心に訪れる人が多いようです。
丸の内ホテルも全面改装し、最高級のスィートルームは1日50万円近くもするといいますので、一度覗くだけでも覗いてみたいですね。
設計者は、辰野金吾氏(1854.10.13~1919.3.25)です。もともとは武士で、現在の東京大学で学び、そこの学長を務めたこともあります。
◆ デフレ脱却ができるのか? 2012/11/01
政府の介入を嫌う日銀ですが、両者が共同文書という形で政策を発表しました。
2か月連続で追加の金融緩和を決め、市場に大量の資金を供給する基金を11兆円積み増しすると発表しました。消費者物価の上昇率1%の実現を目指し、デフレの早期脱却を目途としています。
その背景には、再来年4月からの消費税率の引き上げを控え、経済環境を整える必要性に迫られていることが挙げられます。それには、あらゆる対応をとる姿勢を内外に示すべきだという、政府側の思惑があったものとみられます。
日本経済を取り巻く環境は、海外経済の減速や長期化する歴史的な円高を背景に一段と厳しさを増している中で、政府・日銀が実効性のある政策を打ち出すことができるのでしょうか。