五蔵(臓)の肝については、もともと抑肝散がアルツハイマーの症状に効くお話から派生していったのでしたね。
今回は、肝については一応最後の、
3)そして血自体が減ってしまう場合
についてお話を致します。
前回までは、肝の血の中の水分(津液)が減って虚熱(きょねつ)が発生したり、それが冷えて、瘀血(おけつ)が発生する場合までお話しました。
この瘀血(おけつ)は交通事故や、手術、柔道やレスリングなどのからだを痛めつけるスポーツなどでも発生いたします。
今回は血自体が減ってしまった、或いは製造量が少ない場合を考えてみたいと思います。体力が弱ったり、胃腸の働きが悪かったり、大手術や量の多い月経が続いたりして、血自体が少ないということをイメージしてみましょう。
これは体が非常に冷えます。人の体はこういう冷え方をしたときに、大事な心臓までもが冷えてしまわないように、胸には熱を残そうとします。
そうしますと、からだは冷えていて、夏でもしもやけができたり、とにかく寒い。
しかし、胸には熱がありますので、これはむしろ熱いというよりは、イライラや不安感、或いは胸のドキドキバクバク感があったりします。
この状態は特にご婦人に多く、とにかく寒がります。
当然、婦人科系に問題があることが多く、生理痛、不妊症、性行為に興味がもてない、消極的で落ち込んでしまうなどの症状が出ることがあります。
漢方薬を処方する場合、代表的な方剤は、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)が大変よく効きます。
このように、東洋的な意味での肝はその「蔵」と「経絡」のコンビネーションでできており、氣血(きけつ)やその血の中の水分(津液)の多寡によって、基本的な3つのアンバランスの状態が起きます。
このアンバランスの状態があるときに起きている病気は全てこれらのアンバランスと関係があると考え、それがどんな病であっても、その病名に関係なく効果がでてくるのです。要は病が存在する理由がなくなってしまうとイメージしてみましょう。
他には、その患者さんの状態によっては、上記の瘀血(おけつ)の駆逐を主にしたり、胃腸のアンバランスを主にしたり、またはそれらを併用したりいたします。
まあ、漢方薬の処方のコンセプトはこれだけではないのですが、今後は残りの五蔵「臓」のうちの四臓にも、お話を広げていきたいと考えています。
日本伝統鍼灸漢方