ごっとさんのブログ

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「認知症薬」米国で撤退相次ぐ

2018-06-17 10:42:16 | 
アメリカの大手製薬会社が認知症薬の研究開発から相次ぎ撤退しているようです。

認知症薬については、このブログでも2月に「認知症薬開発の壁」ということで、各社の開発が難航していることを書きました。

この記事でも認知症を根本的に治療するのは難しく、その開発には大きな壁があることを書いています。こういった壁を乗り越えて良い治療薬が出てくることを期待していたのですが、どうも雲行きは怪しくなってきたようです。

こういった治療薬の開発には巨額の費用が掛かる一方、治療につながる成果が得られておらず、開発の継続は困難と判断する会社が多いようです。実際は人口の高齢化に伴い患者の増加が予想されており、新薬開発の期待は高まるばかりのようです。

アメリカ大手のファイザー社は、「商品開発や科学的知見で最も強みのある領域に集中する」として、認知症患者の6割を占めるアルツハイマー病の治療薬などの研究開発を打ち切ると発表しました。関連業務に就く約300人を削減し、浮いた賃金は他分野の研究開発充てるようです。

メルク社も2月、期待した効果が得られないとして、アルツハイマー病患者の脳に蓄積する異常なタンパク質の生成を抑える薬の臨床試験を中止すると表明しています。同種の薬を巡っては。先にイーラーリリー社も新薬承認申請を断念したほか、ジョンソン・アンド・ジョンソンも今月、安全上の問題が確認されてとして臨床試験を打ち切っています。

アメリカアルツハイマー協会によると、米国のアルツハイマー病患者は570万人に上り、2050年までに約1400万人に増えると予想しています。アメリカ食品医薬品局(FDA)はこれまでに6種類の薬を承認しましたが、根本的な治療薬は開発されていません。

今回開発中止となった治療薬は、いずれも脳に蓄積するアミロイドを減らすタイプの根本的治療薬ですが、やはり認知症の難しさのようです。

一つには発症の20年ぐらい前から蓄積が始まり、発症した時点ではこのアミロイドのために脳細胞が損傷しており、アミロイドを分解しても脳細胞は元に戻らない、つまり症状は良くならないといった点にあるようです。

そこで各社は認知症の前段階にあるような人を対象に臨床試験を行ったようですが、これも認知症の診断基準が難しく、有効性の証明が非常に難しくなっているようです。こういったところから大手の撤退が相次いでいるようですが、ベンチャー企業の活動に期待する動きは出ているようです。

民間資金としてマイクロソフトやフェイスブックなどからも多額の資金提供が始まっており、新しいストラテジーでの新薬開発に期待が集まっています。それにしても認知症というのは人間にとってかなりの強敵といわざるを得ません。