エイズや肝炎のほか、今話題のはしかや重篤な病気を引き起こすウイルスに対する薬は近年大きく進歩しているようです。
このウイルスと戦う薬が世に出たのは、1980年代になってからで、帯状疱疹などを引き起こすヘルペスウイルスに効く「アシクロビル」でした。
ウイルスは感染した細胞の機能を利用して増殖しますので、細胞に害を与えずにウイルスだけを倒すのは難しい戦略が必要です。ですからウイルス対策は治療薬ではなく、抗体を前もって作っておくというワクチンが主流となっていました。
実は私も昔(40代半ば)抗ウイルス薬の開発をやろうと試みたことがありました。研究所の同僚で評価を担当しているグループとも相談し、ある戦略で進めようというところまで行ったのです。ところが大きな壁がありました。
ウイルスは危険な微生物ですので、それを扱うためには外と完全遮断できる、当時の規制で言うとP-3という設備が必要でした。こういった実験室に改造するためには、かなりの大がかりの改築が必要で、すでにある研究所内の改築では難しいということになってしまいました。
研究所幹部だけでなく、本社などにも働きかけたのですが、この設備投資の額があまりにも大きくなってしまうということで実現できませんでした。この時の我々の戦略は、現在発売されている抗ウイルス薬と非常に近く、もしやっていればと残念な記憶です。
さてアシクロビルが効く仕組みは、ウイルスが感染した細胞に入り、ウイルスの遺伝子(DNAやRNA)を作るのを妨げるというものです。ウイルスはヒトの細胞にある遺伝子の部品をつなぎ合わせて、自分自身の遺伝子を作り出しますが、この薬を間違えてつなぐとそれ以上遺伝子ができなくなるという仕組みです。
これは当然人間本来の遺伝子合成も妨げてしまいますので、重症の貧血などの副作用が出てしまいます。こういった点の改良が進み、現在ではほとんど副作用が無くなっているようです。
またエイズウイルス研究では、新たな戦略が用いられました。ウイルスは自身の遺伝子を基にタンパク質を作り出しますが、この酵素の働きを妨げるという薬も開発されました。これが2013年に発売されたものですが、体内での分解を抑えるなど様々な工夫により、耐性ウイルスが生じにくい薬となっています。
その他、長いウイルスタンパク質を良い大きさに切断する、プロテアーゼという酵素を阻害する薬などが開発されています。
細菌の病原菌に対しては、抗生物質によって完全に治療できるようになっていますが、次の難敵であるウイルスも薬での治療が可能となる時代に入ってきているようです。
このウイルスと戦う薬が世に出たのは、1980年代になってからで、帯状疱疹などを引き起こすヘルペスウイルスに効く「アシクロビル」でした。
ウイルスは感染した細胞の機能を利用して増殖しますので、細胞に害を与えずにウイルスだけを倒すのは難しい戦略が必要です。ですからウイルス対策は治療薬ではなく、抗体を前もって作っておくというワクチンが主流となっていました。
実は私も昔(40代半ば)抗ウイルス薬の開発をやろうと試みたことがありました。研究所の同僚で評価を担当しているグループとも相談し、ある戦略で進めようというところまで行ったのです。ところが大きな壁がありました。
ウイルスは危険な微生物ですので、それを扱うためには外と完全遮断できる、当時の規制で言うとP-3という設備が必要でした。こういった実験室に改造するためには、かなりの大がかりの改築が必要で、すでにある研究所内の改築では難しいということになってしまいました。
研究所幹部だけでなく、本社などにも働きかけたのですが、この設備投資の額があまりにも大きくなってしまうということで実現できませんでした。この時の我々の戦略は、現在発売されている抗ウイルス薬と非常に近く、もしやっていればと残念な記憶です。
さてアシクロビルが効く仕組みは、ウイルスが感染した細胞に入り、ウイルスの遺伝子(DNAやRNA)を作るのを妨げるというものです。ウイルスはヒトの細胞にある遺伝子の部品をつなぎ合わせて、自分自身の遺伝子を作り出しますが、この薬を間違えてつなぐとそれ以上遺伝子ができなくなるという仕組みです。
これは当然人間本来の遺伝子合成も妨げてしまいますので、重症の貧血などの副作用が出てしまいます。こういった点の改良が進み、現在ではほとんど副作用が無くなっているようです。
またエイズウイルス研究では、新たな戦略が用いられました。ウイルスは自身の遺伝子を基にタンパク質を作り出しますが、この酵素の働きを妨げるという薬も開発されました。これが2013年に発売されたものですが、体内での分解を抑えるなど様々な工夫により、耐性ウイルスが生じにくい薬となっています。
その他、長いウイルスタンパク質を良い大きさに切断する、プロテアーゼという酵素を阻害する薬などが開発されています。
細菌の病原菌に対しては、抗生物質によって完全に治療できるようになっていますが、次の難敵であるウイルスも薬での治療が可能となる時代に入ってきているようです。