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生命の起源にも関連する代謝のありえない反応

2022-04-28 10:27:33 | 化学
このブログでも度々触れていますが、生命の起源というのが私が最も興味を持っていることのひとつで、いろいろ調べていますが本当に進展していません。

最近脂質二重膜が化合物を濃縮する性質があり、これが生命の発生部位ではないかという説を紹介しています。ここでは生命に欠かせない代謝の反応としての発見に関するものです。

これはケンブリッジ大学の研究チームの発見ですが、当然有機化学に関することですのでやや分かりにくいかもしれません。

非常に簡単にすると、通常は複雑な高分子(大体が酵素です)の存在下に起こる代謝の反応が、単純に代謝に関連する化合物何種類か混合するだけで、必要な化学反応が生じたというものです。

ここではこの反応を「勝手に起こっている」と表現していますが、酵素というタンパク質でできた触媒なしに進行したことを確認しました。ここでは解糖系といわれる糖を分解してエネルギーにする反応の一部を取り上げています。

生体はいわゆるエサを摂取し、それを分解してエネルギーにすることで生体系を維持していますが、そのすべての反応は酵素によって触媒される反応となっています。

従ってエネルギーを得るすなわち生きていくためには必須の工程ですが、酵素が先に作られたのかまたは何らかの化学反応が酵素なしに生じたのかは、生命の起源を考えるうえで重要な問題でした。

研究チームは解糖系に登場する12種類の化学物質(代謝中間体)をそれぞれ純水に溶かし、5時間にわたって70℃に加熱しました。これは海底火山付近の条件を模倣したものです。この結果解糖系や関連する代謝経路の化学反応が17種類も始まったとしています。

ただしこれは高感度の分析装置での観察ですので、どの程度の反応が進行したのかの詳細は分かっていません。またこの時原始の海に溶けていたと考えられる化合物のリストから、色々な物質を添加しました。

そのうち鉄を添加すると完全な代謝回路を含む28の化学反応を起こすことに成功しました。2017年までには、硫酸塩によって駆動するクエン酸回路を作ることに成功したほか、「糖新生」と呼ばれるプロセスによって、単純な化学物質から糖を作ることにも成功しています。

このような酵素という完全触媒を必要としない代謝回路として、二酸化炭素をアセチルCoAに変換する「アセチルCoA経路」など、他の代謝過程についても同様の成功を収めています。

今回の研究成果は酵素といった複雑な高分子がなくとも、生命のエネルギー代謝に必要な化合物が作られる可能性を示しましたが、生命の基幹となるタンパク質や核酸の高分子までは程遠いものです。

それでも生命の起源を探索する上では徐々に進んでいると言えるのかもしれません。


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