皮膚に貼るだけで血糖値を測定

東京大学生産技術研究所の研究グループが、人間の肌に直接貼っても無痛であり簡単に血糖値などが測定できるマイクロニードル型センサーシステムを開発したと発表しました。

血糖値の計測に向けた製品化への検討を進め、実用化に向けた取り組みを加速させています。このセンサーの計測部となる「マイクロニードル」は、その直径が2〜30μｍと非常に細く、その長さは0.8ｍｍ程度の細長い針状になっています。

これは蚊が刺したのと同様なので、装着しても痛みなど感じず、長さも短いため針は皮膚の毛細血管までは届かないようです。

針部分は皮膚下の細胞間質液に触れる深さに刺さり、マイクロニードルは小さな穴が内部にたくさん空いた多孔質組織になっているため、細胞間質液を吸収しグルコースレベルなどを正確に計測できる仕組みになっています。

例えば血糖値センサーなどに利用する場合は、グルコース酸化酵素など2種類の酵素に染料色素を組み合わせて使うと、血糖値の量によって発色が異なることから、その明度によって血糖値が測定できる仕組みとなっています。

このグルコース量の定量法は多くの臨床検査などにも用いられており、精度の高い測定法となっています。研究グループはこれまでＭＥＭＳ（微小な電気機械システム）などの微細システムを長年研究開発してきました。

今回のマイクロニードルは、人間に刺したときに針の一部が中に残っても安全なように、生体分解性ポリマーであるＰＬＧＡ（ポリ乳酸・グリコール酸共重合体）を素材として採用しています。

このＰＬＧＡの針を多孔質組織にするために、微細な塩粒子を混合させ、この粒子を水で溶かすことにより微細な穴が開いた多孔質組織を形成させています。マイクロニードルは吸水性を持つ紙製の基盤に立っている構造であるため、吸収性が担保されています。

このセンサーを例えば糖尿病患者の血糖値測定に利用すると、日本では720万人と推定されている患者がいいますので、高い利便性が得られるだろうとしています。

現在は各種の測定機器が開発され、私が持っているスマートウオッチ（腕時計）でも、腕につけておくだけで血圧測定ができます（かなり正しい値が出ています）。しかし血糖値の測定には血液が必要であり、簡単にはなっていますがそれなりのわずらわしさがありました。

今回開発しようとしているシステムは、皮膚に貼るだけという簡単なものですので、血糖値の管理が必要な人にとっては良いニュースといえるでしょう。

将来は流体素子回路などにこのセンサーを組み込むことによって、健康診断などの応用対象が広がると考えられています。