簡単に切ってはいけない盲腸

突然わき腹が痛くなる盲腸ですが、自身に経験がなくても周りに盲腸を発症し苦しむ姿を見たり聞いたりしたことがある人は多いでしょう。

日本人の15人に1人が一生のうち一度は経験するといいますが、昔は盲腸は不要な臓器だから痛みが出れば手術で切るのは当然でした。しかし現在は人の健康にかかわる大事な臓器であることが分かってきました。

私は中学生のころですので半世紀以上も前の話ですが、盲腸の手術をしました。これが私の今までの唯一の入院でしたが、その手術中医師が「あれ別に腫れていないが、せっかく開けたから取ってしまおう」という声をはっきり覚えています。

結局私の盲腸というのは誤診だったのですが、当時はそんな感じで済まされてしまったようです。盲腸は小腸と大腸のつなぎ目にある袋状の部分を指します。

その盲腸から飛び出している5センチほどの管が虫垂で、その管が細菌感染などにより痛むのです。ですから盲腸は正式には虫垂炎と言われています。

虫垂は長い間その役割が分からなかったため、不要な臓器と考えられてきました。進化の過程で機能が失われた痕跡器官と考えられていました、最近はその役割が分かってきて、簡単に切除してはいけない臓器だとの見方が広がっています。

虫垂は腸内に悪玉菌が増えたときに、善玉菌の避難所になる役割が分かってきました。盲腸の手術で虫垂を切除すると、手術後1年半から3年半の間に大腸がんになるリスクが2.1倍も高くなることが分かりました。

普段は善玉菌が必要に応じて隠れ家の虫垂から出退場することで、腸壁がガン化するのを防いでいるのに、隠れ家が無くなりその機能が失われるためとされています。3年半を過ぎると盲腸を切っている人もそうでない人も予後は変わらないということが分かっています。

かつては積極的に手術で切除してきた虫垂炎は、抗生物質などの薬で制御する治療も重視されるようになっています。この虫垂炎はなぜか梅雨の晴れ間に発症することが多いようです。

虫垂炎の最大の原因は便秘で、便が固まり虫垂をふさいでしまい、そこに細菌が繁殖するためです。この時虫垂にある免疫細胞から顆粒球が分泌されて細菌を攻撃します。顆粒球とは細菌や細菌の死がいを食べて掃除する働きがあります。

顆粒球は気圧が低くなる雨天では交感神経が活発になるためその働きが活発になります。その結果酸化酵素が発生し、それが虫垂内の細胞をさらに傷つけて虫垂の炎症が激しくなると考えられています。

まあ若干こじつけのような気もしますが、梅雨時や台風が来たときなどは、特に便秘にならない様気を付けた方が良いのかもしれません。