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生分解性プラスチックの原料合成技術

2022-11-18 10:36:04 | 化学
プラスチックは身近で有用なものとして大量に使用されていますが、海洋のプラスチック汚染問題などが出ており、レジ袋有料化など本質と無関係なほとんど意味のない対策が行われています。

このプラスチックの問題は、分解されるまでに非常に長時間かかることも一因であり、天然で分解される生分解性プラスチックが注目を集めているようです。

大阪公立大学は2022年9月に、太陽光と炭酸ガスを利用して生分解性プラスチックの原料である3-ヒドロキシ酪酸を合成することに成功したと発表しました。現在生分解性プラスチックの原料の中では、特にポリヒドロキシ酪酸(PHB)が注目されています。

このPHBは3-ヒドロキシ酪酸を重合することで得られる物質で、水に不溶で強度のあるポリエステルとして包装材などによく使われています。

大阪公立大学の研究チームは、再生可能エネルギーである太陽光と地球温暖化の原因の1つとなっているCO2を活用して合成することができれば、CO2を削減しながら生分解性プラスチックを作る方法となり、地球のプラスチック問題と地球温暖化の問題の両方に貢献できると考えました。

その結果太陽光を利用した光酸化還元系と2つの酵素を組み合わせて、CO2を結合させたアセトンから約80%の高収率で3-ヒドロキシ酪酸を合成することに成功しています。

具体的には光合成細菌中にアセトンカルボキシラーゼ(AC)と3-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素(HBDH)という2種類の酵素を発現させ抽出し、色素と触媒で構成される光酸化還元系に加えた結果、CO2とアセトンを結合させACの働きでアセト酢酸を生成し、それをHBDHの働きで3-ヒドロキシ酪酸に変換することができました。

しかし残念ながら私はこの反応はあくまでの実験室での成功であり、企業化することはできないと思っています。まずポリエステルなどが包装材に使われる理由は安価であることが最大の要因です。

今回開発された原料の合成法は、色々メリットがあるものの多くの問題があり、決して安価に製造できる工程ではありません。確かに原料としてはアセトンとCO2という安価なものですが、使用する2種の酵素を細菌から取り出すのにかなりコストがかかってしまいます。

さらにこういった酵素反応を行うには基質濃度(原料)を高くすることができません。多分石油化学であれば、1トンの反応器で300キロ以上の生成物ができますが、こういった酵素反応では数キロもできないでしょう。

これだけを見てもこのプラスチック原料は石油化学の100倍以上のコストがかかってしまうのです。実は私は有機合成に酵素を使うという研究をかなりやっていました。

この記事を書いて当時を思い出しましたので、そのうち昔話を書いてみます。


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