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認知症治療薬「アヂュカヌマブ」は本当に効くのか

2021-08-04 10:25:25 | 
アルツハイマー病治療薬の「アヂュカヌマブ」については、これがアメリカで承認されたというニュースをこのブログでも書いています。

アルツハイマー病がアミロイドβの蓄積によって発症するという説が主流となって以来、このアミロイドを除去する非常に多くの薬が臨床試験に失敗しています。

アヂュカヌマブもいったん中止(効果が出ない)となったのですが、その後のデータの分析から効果があるということになり、承認されたという経緯をたどっています。私はこの薬に対しても、かなり否定的な考えを持っています。

ひとつにはアルツハイマー病の発症にアミロイドが関与していることは確かですが、アミロイドは発症の20年も前から蓄積が始まるとされています。この蓄積によって徐々に脳細胞が死滅し発症しますので、この段階でアミロイドを除去しても死滅した脳細胞は復活しません。

つまり薬を使っても、進行を止めることは可能ですが、改善させることはできないとされているのです。

現在認知症治療薬として使用されているアリセプトなどは、認知症にアセチルコリンが関与しているという仮説に基づいたものです。現在この仮説は完全に否定されていますので、現在のアセチルコリン分解酵素阻害剤は全く効果がないはずです。

こういった既存薬から比べれば、進行を止める可能性があるだけましなのかもしれません。現在日本でも承認申請が出されており、多分承認されると思いますがそれほど現状は改善されないでしょう。

日本で今後承認されたとしても、約600万人いるとされる認知症患者の大部分は治療の適用にはならないとされています。特に日本では80歳以上の超高齢者の患者が多くを占めている点でも、治療効果は限定的と考えられます。

アヂュカヌマブは抗体薬ですので、投与には注射が必要ですが、これがどの程度高価な薬になるのかも問題です。あまり高価であれば、軽度認知症と呼ばれるこの治療が効果が出そうな患者たちも、わざわざそんな高価な注射を打とうと思わないような気もします。

日本の認知症の患者と家族の会は、この米国での承認を受けて、「新たな扉を開く希望の光」というようなコメントを出しています。また認知症が治療の可能性がある病気として理解され、認知症のイメージが大きく変わるきっかけになって欲しいとも述べています。

遺伝性の認知症の家族に、若いうちに予防的に投与すれば発症しない可能性はあるかもしれませんが、果たして予防のために高価で面倒な治療を受けるかといった点も課題としてあるような気がします。

アヂュカヌマブについては慎重な態度とる医師もいるようですが、治療薬が出るとすぐに飛びつくのが日本の体質ですので、承認は慎重にやってほしいと思っています。



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