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動作の学習記憶と神経回路の変化

2022-09-15 10:41:30 | 健康・医療
私は若いころから人の顔と名前を覚えるのが苦手で、どこかであった人という記憶はあるのですが名前が出てこないことがよくありました。

私の仕事はそれほど人に合うことは多くないので、それほど問題なく過ごしてきました。これはそのまま続いており、ドラマを見ても俳優や主人公の名前は全く覚えていません。

ところが化合物の名前や構造式はちょっと見れば記憶に残り、なかなか忘れないのですが、この差が何故出て来るのか記憶の不思議なところと言えそうです。

生理学研究所などの日独の研究グループが、身体の動きを学習して身に付ける過程で、脳内の神経回路の構造が変わっていることをマウスの実験で解明しました。これは従来の学習で一旦できた神経回路が、そのまま成熟するといった見方を覆すもののようです。

思い通りに字を書いたり自転車に乗ったり、日常生活のさまざまな動きは試行錯誤するうち身体が学習し、やがて意識せずにうまくできるようになります。この過程の脳の仕組みについて従来は、大脳皮質に新たな神経回路ができ、成熟して記憶の回路になると考えられていました。

一次運動野に信号を伝える神経細胞のつなぎ目である「シナプス」ができることが分かっていました。ただ学習したことが記憶として脳に保持される仕組みや、この動きで重要な脳の領域などはよく分かっていませんでした。

研究グループはマウスに穴の先にあるエサを手でつかませる実験をしました。当初は手を伸ばしても20%ほどしか成功しませんでしたが、5日目あたりから40%ほどに高まってきました。1〜4日目の学習初期には従来の研究通り、一次運動野にシナプスが盛んにできました。

この時運動が上達したマウスほどシナプスの数が多く、シナプスの形成が重要であることが分かります。シナプスをよく調べると、学習初期にできたものの多くは「二次運動野」などから信号を受けていました。

二次運動野は運動の計画や準備、運動の補正に関する情報を処理していると考えられています。ところが5〜8日目の学習後期になると、初期に一次運動野にできたシナプスの8割は消えてしまいました。

残ったものは二次運動野ではなく、間脳にある脳の多彩な信号の中継役である「視床」から信号を受け取っていました。これらのシナプスでは、信号を受け取る「棘突起」が大きくなり、視床からの信号を一次運動野がより強く受け取るれるよう強化していました。

こうした一連の結果から、運動の学習の段階では二次運動野などから一次運動野への信号が重要で、その後の記憶は視床からの信号が引き継いで保存されることが分かりました。

今回の成果が脳の記憶機構にどう関連するのか、私では理解できませんが、脳機能の解明に一歩近づく結果といえるのかもしれません。


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