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第5のガン治療であるBNCT法を開発

2021-08-14 10:25:39 | 健康・医療
ガンの治療法は年々進歩していますが、手術(外科療法)、抗ガン剤などの薬物療法、放射線治療および新しいものとして免疫療法が標準的な4種の治療法となっています。

最近第5の治療法として「BNCT(ホウ素中性子補足療法)」を大阪府立大学と関西の企業ステラファーマが開発したと発表されました。BNCTはホウ素薬剤を投与し、中性子を照射することでガンを治療します。

体を傷つけることなく、基本的に1回(1日)で治療でき、他のガン治療法と比べて患者への負担が少ないことが特徴です。BNCTとは、ホウ素中性子捕獲療法の英語名の略ですが、その名前が示すようにホウ素と中性子の2つの粒子が主役となっています。

BNCTの治療ではまずガン患者にホウ素の同位体(ボロン10)の化合物からなるホウ素医薬品を投与します。この化合物はガン細胞に選択的に取り込まれる性質を持っています。

このホウ素がガン細胞に集まることは以前から知られており、抗ガン剤などにもホウ素分子を導入するといった試みもされていましたが、なぜホウ素がガン細胞に集まるかはよく分かっていないようです。

その後患部に弱い中性子線を照射すると、ガン細胞内のボロン10にぶつかり核分裂を起こし、放射線(アルファ粒子とリチウム核)を発生します。この放射線がガン細胞内のDNAやミトコンドリアを破壊し、ガン細胞を死滅させます。

細胞の大きさは約20マイクロメートルですが、発生する放射線は10マイクロメートル程度しか飛ばないため、ガン細胞をピンポイントで破壊することができるわけです。

ガン組織の中では、ガン細胞だけが塊になっているのではなく、ガン細胞と正常な細胞が入り乱れて存在しています。このBNCTはガン細胞選択的治療と呼ばれる通り、ガン細胞を死滅させ正常な細胞への影響を最小限にできることが特徴とされています。

この治療法の開発にはホウ素の同位体であるボロン10の安価な製造法が大きく寄与しています。ステラファーマは独自のボロン10の濃縮技術を開発し、原子力発電用の中性子吸収材としての利用を開拓しようとしていました。

この技術が無ければ、BNCT法を開発するにはもっと長時間かかってしまったようです。一般に新しい技術が開発できたとしても、ニュースになることはほとんどなくその大学や企業内の技術として埋もれてしまうことがほとんどです。

現在は学会発表などだけではなく、開発技術を宣伝するようなイベントも多くなってきましたが、異種の技術をどうやって融合させるかは大きな課題として残っています。

今回は大阪府立大学とステラファーマという企業の良い出会いがあり、BNCTという治療法が開発されたことは、大きな意義があると思っています。



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