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膵臓ガンの新たな治療法を開発

2021-02-16 10:26:06 | 健康・医療
ガンの中で5年生存率が最も低い膵臓ガンですが、年間死者数も3万人を超え早期発見が難しいという難題を抱えています。

膵臓は周囲を臓器に囲まれ検査がしにくく、初期症状もほとんどなく進んでも特有の症状が現れにくいため、早期発見が困難となっています。5年生存率も11%とガン平均の68%を大きく下回っており、手術可能な症例は20%程度とされています。

その難しい膵臓ガンの新たな治療法を東京都健康長寿医療センターやカリフォルニア大学の共同チームが発表しました。研究チームが注目したのは「FGFR4」という受容体でした。

これは細胞の表面にあり、外から来たガンの増殖因子と結合し、細胞増殖に必要な信号を細胞核に送る装置と言えます。FGFR4は膵臓ガンについて多く現れる受容体で、ガン細胞のうち半分程度にみられるものです。

しかも腫瘍が大きくステージが進んでいる患者に発現する傾向にあり、正常細胞には発現していません。そこでこの機能を抑制し膵臓ガンの進行を止める方法を検討しました。

FGFR4阻害剤の研究を進め、この機能を低下させる化合物として「BLU9931」という低分子化合物を見出しました。これは細胞を増殖させる信号経路を阻害し、膵臓ガンにこの阻害剤を投与したところガン細胞の増殖は低減したようです。

阻害剤を加えた状態で膵臓ガン細胞を培養すると、DNA障害が起き、細胞の老化がみられることを見出しました。阻害剤を投与するとガン細胞にSASPという因子が増加し、細胞が老化した際それを示す物質を分泌する現象が起こりました。

そこで研究チームはこの老化した細胞を除去することを試みました。すでに老化細胞除去剤として「ケルセチン」という物質が知られており、これを投与すると血管内皮細胞の老化細胞の除去に有効であるという研究結果が出ています。

そこで先の阻害剤とケルセチンを投与したところ、膵臓ガン細胞の生存率を低下させることができたようです。またこの2剤を投与すると、免疫細胞が効力を発揮する可能性まで見つかりました。

通常ガン細胞は免疫細胞に敵と認識されないのですが、老化とSASP因子を産出させることによって「免疫応答」が引き出せたとしています。

この一連の治療を研究チームは「老化誘導治療」と名付けていますが、まだ当然基礎研究の段階であり、今後動物実験や臨床研究に進むまで遠い道のりかもしれません。

こういったインビトロでの研究結果が動物実験では良い結果が出ないといったケースもありますが、膵臓ガンの新な治療法として夢があるような気がします。またこの手法は他のガンにも応用できる可能性があり、今後の進展に期待したいと思っています。


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