新型コロナ自粛と喫煙率

新型コロナウイルス感染症の流行拡大が収束しつつあり、緊急事態宣言が全面的に解除されました。

自粛で外出できずテレワークが多くなった結果、喫煙行動にも影響が出ている可能性があります。緊急事態宣言中は在宅する時間が増えた人も多く、その影響は様々な面に出ています。

タバコの本数（消費量）が増えたり再喫煙してしまった喫煙者もいるようです。実際喫煙行動は生活環境や社会的なつながりに強く影響されます。地震などの災害に際し、人間は心理的・精神的に大きな影響を受けることが知られています。

こうしたストレスにさらされると、薬物や行動、物質などへの依存が増し、中毒になるリスクも増えもともと依存症だった人はストレスの強さで依存度が増すようです。

過去の研究によれば、災害などのストレス状態にさらされると、喫煙者のたばこ消費量は増えることが分かっています。

2005年に米国南部を襲ったハリケーン・カトリーナの被害を受けたニューオーリンズの喫煙者175人と被害が軽微だったメンフィスの喫煙者222人を比較した調査研究によれば、ハリケーン後の27カ月間でニューオーリンズの喫煙者の方がニコチンの依存度が上がり、タバコの消費量が増えたという結果が出ています。

また日本の東日本大震災後の煙草の消費量を調べた研究によれば、消費量が増えたのは20代から30代の女性喫煙者、男女を問わず40代から50代の喫煙者と失業した人でした。この傾向は新型コロナ感染症の流行による影響と重なるかもしれません。

ストレスと再喫煙に関する研究は多いのですが、概してストレスのバイオマーカーとして知られる、副腎皮質ホルモンの一種であるコルチゾールの数値の上昇が再喫煙への願望とつながりがあると考えられています。

感情や衝動といった複数の主観的な動機と、脳の視床下部からのストレス反応によるコルチゾールが複雑に絡んでいるようです。再喫煙のトリガー（引きがね）になるのは、他の依存症を含めた多くの研究があるように依存対象に関連する記号です。

具体的には、オンライン飲み会でタバコを吸う相手の姿、自粛生活での買い出しに出かけたコンビニでタバコの広告や、レジの背後に並べられたタバコのパッケージ、動画配信中の映画の中の喫煙シーンなどがトリガーになる記号となります。

今回のコロナ自粛中の喫煙行動についての研究はまだ結果が出ていませんが、これまでのストレスとの関連からいえば、やはり喫煙数の増加や再喫煙者が出ている可能性は高そうです。

私自身はこれがそれほど悪い事とはとらえていませんが、やはり日常生活が変わることは、予想外の部分にも影響が出るようです。