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超高純度の鉄、生体になじむ性質

2020-06-22 10:15:46 | 化学
東北大学が開発した超高純度の錆びない鉄が生体によくなじみ、インプラント(人工歯根)や血管を補強するステント(網状チューブ)などの医用材料として有望であると発表しました。

実用化すれば周囲の細胞との接着性の低さや毒性など、従来の金属などが抱える課題を克服できそうです。

研究グループが開発した純度99.9996%の超高純度鉄「アビコアイアイン」の表面にコーティングなどの処理をしないまま、マウスなどの哺乳類由来の細胞を置き、変化を調べました。

その結果細胞は鉄によく接着して順調に増殖し、比較のために使った合金ではほとんど増殖しませんでした。骨などの元になる間葉系幹細胞や筋肉の元になる筋芽細胞の分化もできました。

この間葉系幹細胞の分化は、培養実験で一般的に用いるプラスチック製のシャーレより好成績だったようです。遺伝子発現の解析でも、毒性や重金属ストレス応答など問題は見られませんでした。

生体に用いる医用材料としてこれまで、チタン合金やコバルトとモリブデンの合金などの金属やセラミックスが用いられてきました。従来の金属は加工しやすく強度がある半面、毒性や金属アレルギー、周辺の細胞や組織とのなじみにくさなどの負の面があります。

セラミックスは生体になじみやすいが柔軟性がなく、加工できる形状にも制約がありました。こうした課題に対応するため、様々な材料で表面加工などの工夫が続いてきたようです。

今回の実験により、アビコアイアインが表面処理をしなくても生体になじみ、安全性が高いことが判明しました。インプラント、ステント、骨を固定するプレートやボルトなど、医用材料としての用途が見込めることが分かりました。

このアビコアイアンの製造法については省略しますが、一般に高純度物質は安定性が増加し、全く異なった性質が発揮されます。アビコアイアンは市販の高純度鉄に比べて不純物が100分の1であり、錆びない他塩酸につけてもほとんど溶けず、加工しやすく割れにくいなどの特徴があります。

2011年にはドイツの「国際標準物質データベース」に登録されるなど世界的に認知されています。優れた品質の反面、1キロ当たり100万米ドル程度とされるコストが大きな課題となり、実用化に至っていません。

研究グループは、原子炉や航空機ではなく医用材料ならば、使うのはごく少量で現実的な費用になるだろう、まず医療分野で普及してコストダウンが進むと、多彩な用途に拡大するのではと期待しています。

このような超高純度金属はどんな性状が出るかわからない部分も多く、面白い材料分野と言えるようです。


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