「ガン悪液質」に治療薬が登場

ガンの患者が重症化する理由の一つに「悪液質」という症状があります。

これは私が現役のころはよく出てくる言葉でしたが、その後あまり聞かなくなりこの概念は無くなったのかと思っていました。今年4月に国内初の治療薬が開発されたという記事があり、まだ現在でも問題になっているようです。

ガン悪液質は、「通常の栄養サポートでは完全に回復することはできず、進行性の機能障害に至る骨格筋量の持続的な減少を特徴とする多因性の症候群」と定義されています。つまり体重が減少し、特に筋肉が痩せて歩けなくなる状態です。

ガン患者の体重が減少する主な原因は二つあり、ガンの症状や治療の副作用で思うように食べられず栄養不足になることとこのガン悪液質です。ガン悪液質では、筋肉や脂肪の分解が進むため、食べても痩せ食欲自体も落ちてきます。

半年間で体重が5％以上減ることが診断の目安となります。原因は不明ですが、ガンに抵抗するため体内で起こる炎症反応や、ガン細胞から産生される物質のかかわりが指摘されています。

非小細胞肺ガンなどの患者は、進行ガンと診断された時点から多く見受けられます。乳ガンや前立腺ガンでは、命に係わる状態になるまで発症しにくいとされています。

症状が進むと治療に影響し、歩けなくなるほど全身状態が悪化すれば、抗ガン剤などの治療が難しくなる恐れがあります。ガン悪液質に対する有効な治療法はなかったのですが、国内初の治療薬として飲み薬の「アナモレリン」が登場しました。

薬の有効成分は脳に届き、食欲を増す指令を出し成長ホルモンを分泌します。このホルモンは肝臓が別のホルモン「GF-1」を分泌するのを促すことで筋肉を増やします。

肺がん患者を対象にした臨床試験で、この薬を12週間服用した群では、脂肪を除く体重が約1.38キロ増えましたが、偽薬を服用した群は0.17キロ減少しました。数字は小さいのですが、増減分を比較するとそれなりに効果はあるようです。

ただしアナモレリンの治療では、筋肉は増えても筋力は改善しませんでした。京都府立医科大学などのチームは、筋肉への負荷が必要として患者が自宅で行うプログラムを開発しました。

太ももやふくらはぎ、尻の筋力を鍛えるもので、椅子から立ち上がる、膝を延ばすなど5つのメニューとなっています。この医薬によってガン悪液質の治療ができるようになりましたが、なんで悪液質になるのかの原因は分かっていないようです。

悪液質という言葉を久しぶりに見ましたが、昔は悪液質になると助からないという状況でしたが、やっと対症療法が出てきたというのは、新しいガンの対策と言えそうです。