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食中毒の腸管出血性大腸菌

2021-11-30 10:26:11 | 健康・医療
腸管出血性大腸菌と聞いてもあまりなじみがありませんが、O-157という大腸菌名は昔かなり流行った気がします。

O-157というのは多分20年ぐらい前のことかもしれませんが、重症の食中毒になる大腸菌としてメディアを賑わせました。

あまり記憶は確かではありませんが、集団食中毒が発生し、それに罹った人が10年以上たってO-157が原因で亡くなったという話があり、大腸菌でも怖い菌がいるものだと感じました。

大腸菌の中でもベロ毒素を産生し、出血を伴う「腸炎」や溶血性尿毒症症候群(HUS)を引き起こすものを腸管出血性大腸菌と呼び、代表的なものとしてO-157やO-111などが知られています。

感染経路は飲食物を介する経口感染がほとんどで、加熱が不十分な肉からの感染例が多く報告され、多くの飲食店で牛刺しなど生の牛肉の提供が禁止されたこともあります。

通常の細菌性食中毒の潜伏期間が数時間から3日程度であるのに対し、病原性大腸菌感染症は4〜8日と長いのが特徴です。症状は無症候性から軽度の下痢、激しい腹痛、頻回の水様便、さらに血便と共に重篤な合併症を起こし死に至るものまでさまざまです。

特にHUSは深刻で、全身の血管に小さい血の塊(微小血栓)ができることで各臓器がダメージを受け、それと同時に出血を止める血小板が消費されてしまうので出血が起こりやすくなる病気で、これを発症すると重症化し、致死率は3〜5%まで上昇するといわれています。

日本では治療のために「レボフロキサシン」や「ホスホマイシン」といった抗菌薬を3〜5日程度服用するケースが多いようです。しかし抗菌薬投与自体については賛否両論があり、現在でも統一的な見解は得られていません。

大腸菌はグラム陰性菌に分類されていますが、通常の風邪などの細菌はほとんどがグラム陽性菌ですので、通常の抗菌剤と違ってやや特殊な強い抗菌剤を使う必要があります。

日本は早期の抗菌剤服用に肯定的な意見が多いのですが、欧米では抗菌薬の投与によってベロ毒素放出を増やし、HUSの危険が増大するといった理由により、否定的な意見が優勢です。抗菌薬を服用する場合、発症から3日以内の早期に開始することが望ましいとされています。

発症から4,5日が経過しているとHUSの危険が増すため、抗菌薬は服用しない方がいいとされています。細菌性食中毒の下痢に対し、市販薬で止めてしまうと細菌が排出されないため、回復が遅れてしまうということもあるようです。

単なる食中毒と思っても、原因菌により重篤になることもあるようですので、症状によっては早期の受診が重要なようです。


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