こころとからだがかたちんば

YMOエイジに愛を込めて。

音盤日誌:大貫妙子&坂本龍一「黒のクレール/アヴァンチュリエール」’81

2023-04-07 18:00:00 | 音楽帳


教授の訃報は幸宏と同じように、亡くなってから数日経った日曜に知らされた。
日曜晩から月曜はどこも追悼だった。
テレビやネットはいつもどおり。ひどい語り口も目についてしまい・・・という具合なので、目をふさいで通り過ぎた。
その中で信頼するラジオだけは慎重に選んで聴いた。いつも生放送の番組は、緊急事態を避けては通れない。そんな番組の1つ、ライムスターの宇多丸さんのラジオは、幸宏氏のとき同様、熱い語りと選曲だった。どこもかしこもひねれば戦メリばかりで辟易する中、「ライオット・イン・ラゴス」「パラダイス・ロスト」「ニューロニアン・ネットワーク」が選曲された。

長年YMO3人の存在があることを前提で生きてきたのがYMO世代。
その元少年たちの動揺は、語りの熱さのあちこちに痛みとして感じられた。

教授はすっかり世間では映画音楽家、ピアニストみたいな扱いになってしまったが、既成概念に対して果敢に戦った激しい作品、アヴァンギャルド、現代音楽作品、民族音楽の研究者になるはずだったがゆえのエスニックな作品、クラシック、ジャズもあればボサノバもありアンビエントもあり、歌謡曲も童謡も・・・全方位的にあらゆる分野に手が伸びており、その森の全容は一言では語り切れない。
宇多丸さんが意識する「B-2unit」などのすごさは全くその通りだが、私の個人的な想い入れとして、やっぱり好きで仕方がないのはメランコリックでロマンティックな作品。
そういった曲は、坂本さん自身の名義よりも、ほかのミュージシャンの作品に投影されているものが多い。



80年代の夜明け、YMOの出現と共に知ったファミリーの大貫妙子さん。
大貫さんの好きな曲はどれも教授が渾身の力で、心血注いだアレンジ曲ばかり。くもおさんが言うように、「自分の曲ではなく誰かの曲においても惜しまない音楽への愛」によく胸を打たれ、胸踊らされた。ひと昔前、セレクションCDをよく人に贈っていたが、大貫妙子さんの曲は(失礼ながら)クレジットを「大貫妙子&坂本龍一」に勝手に書き換えていた。2人の魂の共鳴した美しい世界が好きだった。

1981年マクセルのカセットテープのキャンペーン曲に大貫さんの「黒のクレール」という大名曲がある。とても切ない別れの曲であるが、これでもかというほどに感情に訴えてくる坂本龍一のロマンティックなピアノ・シンセサイザーとアレンジが美しすぎてたまらない。
このシングル盤はあくまでマクセルのCM用としてシングルカットされたものだが、何よりすごいのが、B面にも大名曲「アヴァンチュリエール」(LP「アヴァンチュール」からの1曲)が収録されていること。実質両A面シングルといって良い。この2曲は、坂本さんが関わった曲の中でも特に素晴らしく、忘れられず、愛してやまない。時を超えて残る名曲だと思う。


■大貫妙子&坂本龍一 「A・黒のクレール/B・アヴァンチュリエール」1981■



「黒のクレール」作詞・作曲:大貫妙子、編曲:坂本龍一
キーボード・ドラム:坂本龍一、ギター:大村憲司、ベース:細野晴臣


白い光の海を
眩しく船が幻を連れてくる
夏を追いかけて行く
二人の愛がさめるのがこわくて

あなただけを待ちつづけた
この海辺の家
幾度 夏がめぐり来ても
あなたは帰らない

愛の行方 うらなう時
The Card is Black
悲しく 砂の上にすべり落ちて
ちらばり
小波が運ぶ

誰も知らない島で
子供のように暮らすのが夢だった
一人渚を行けば
あなたの声が耳元に聞える

愛し合った日々思えば
心はさすらい
幾度 夏がめぐり来ても
あなたは帰らない

いつか風にくちてしまう
思い出も あなたも
走りさった時の中で
夕映えが永遠をうつす

「アヴァンチュリエール」作詞・作曲:大貫妙子、編曲:坂本龍一
キーボード:坂本龍一、ギター:大村憲司、ベース:中村裕二、ドラム:高橋幸宏


誰もが憧れる島
サントリン アイランド
永遠の眠りから
今甦る

波間に沈んだ
一夜の夢あと
潮風に聞く
ミノアの宴
何千年の時を越えて

遙かな海は
光に満ちあふれ
果てしない記憶と
出会う喜び

訪れた春の
フレスコの壁画
ユリとツバメと
男と女
あなたと私の Shangre-la

太陽の神に
祈りを捧げる
その時海は
ふたつに割れて
逃れる人々の道をつくる

once upon a time…
ロマンと愛に満ちて
恐れを知らぬ
冒険者達
さあ船出しよう 時を越えて…

「アヴァンチュリエール」を初めて聴いたのは、1981年5月19日のサウンドストリート。
ゲストに土屋昌巳氏を迎えての回だったな。。。
コメント (6)
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音盤日誌:ジェームス・ホワイト&ザ・ブラック「オフ・ホワイト」‘79

2023-04-02 15:30:00 | 音楽帳

本日も備忘録。

振り返ると、1979年発表のこのアルバム「Off White」は、FM雑誌の新譜コーナーのモノクロ紙面でジャケットだけは見た記憶がある。ただこのアルバムがFMで特集された記憶はない。
とあるきっかけで気に入った曲「オールモスト・ブラック」は70年代終わり~80年代初め頃、まだ混沌とした時代の移ろいのただなか。その紫煙の中で掛かっていた音楽の匂いや雰囲気を感じさせる。1981年4月に始まった「坂本龍一のサウンドストリート」で、教授が1981年早々にかけてくれた様々な音楽にも通じるゴッタ煮感覚がここにはある。(というか実際番組でかかったように思う。夏の「電気的音楽講座」だっただろうか?。)

このアルバムを聴いたのちに、ジェームス・ホワイト&ザ・ブラックを調べてみると、ブライアン・イーノが監修した「No New York」に入っていたザ・コントーションズのリーダー、サックス演奏者ジェームズ・チャンスの別名義のバンドだった。
イーノの「No New York」は持っているというのに、すれ違っていた。



どこかで聴いたようなこのバンドを久々に聴いたのは、ユーチューブだった。
70年代後半のTBSラジオ番組「夜はともだち」の1コーナー「それゆけスネークマン」で彼らの曲「オールモスト・ブラック」が掛かっていた。えらく気に入り、いろいろ調べるうちに1枚丸ごとiTunesに入れて聴くまでになった。
アルバム「Off White」は、1曲気に入ったら、全曲聴きたいと思わせる1枚。

バンド名に始まり、アルバムタイトルや曲名にはやたらホワイトにブラックと皮肉めいた言い回しがされているが、白人音楽だの黒人音楽だのを超えたところで音楽が響いてくる。多様なスタイルが混じりスープ状に融け合った中で演奏される音楽は、とてもワクワク感に満ちた自由さがある。ディスコ、フリージャズ、ファンク、パンク、アヴァンギャルド・・・色々な言い方も可能だろうが、そんなカテゴリーすることが馬鹿らしくなるほど自由な1枚。聴いて損はない。
ヴォーカルは、ジェームス・ホワイトだけでなく、曲によって女性ヴォーカルが混じる。そのヴォーカルにはスリッツとか(「ラ・ヴァリエテ」などの)ウィークエンドとかを思い出す箇所がある。BUT!1曲だけリディア・ランチが例のあえぎ声のヴォーカルを取っていて、室内やスピーカーで聴いていると周囲に誤解を受けるので音量等にご注意を。


■JAMES WHITE & THE BLACKS「Contort Yourself」1979■
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