昔、入院中に偶然出会ったのが、この本だった。タイトルと黒い表紙が目を引く1冊。
院内にあった図書館的スペースで発見したこの本。パラパラめくってピピッと反応し、早速借りて入院ベッドで読み出した。
だが、読んでいる途中で退院が決まり、最後まで読み切れず、それっきりになってしまっていた。
今年に入ってスイッチが入り、この本を買ったが、買った勢いだけで失速し、「積んどく」本のチームに入ってしまい再読機会を失っていた。
しかし、2021年7月23日ついに東京五輪開催へ強行突入してしまったことが起爆剤となって、やり場のない想いを持って、積んだままだった本をここ数日で読み切った。
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東京五輪誘致決定が2013年9月。
この本が出版されたのは2014年6月である。
この本のテーマは、東京五輪と東京大改革をとりまく「カネと利権」。
五輪誘致決定までの闇、そして新国立競技場建設の闇、、、、闇・闇・闇だらけの裏の真実。
最近タイトル倒しの本が多いが、この本は調査に基づいて積み上げられた事実がまとめられている。
全7章構成で、タイトルを読むだけでも、内容がどんなものか伝わってくる。
序章 ヤクザ・オリンピック
第1章 五輪招致とカネと旧皇族
第2章 森喜朗と「新国立競技場」の深い闇
第3章 五輪ビジネスの支配者たち
第4章 東京大改造バブル
第5章 築地市場移転と五輪利権
第6章 「カジノ利権」に蠢く政財界ウラ人脈
第7章 東京ホットスポット
終章 「石原ー猪瀬ー舛添」の黒い紐帯
新旧織り交ぜた街で構成された都市=東京。
この超過密都市で真夏に五輪を開催する・・・そのためには街をぶっ壊して、無理矢理カネかけて再構築していいんだ、という無茶苦茶な理屈。
そんなことが通用するのか?
いや通用させるのだ、と為政者は言った。
まさにキチガイとしか言いようがない為政者とその犬たちは、高笑いでカネと権力にむしゃぶりついた。
まっとうな神経ではありえないのだが、東京はふるさととして生まれ育った人も少ない土地。
カネと権力に群がることを「ビジネス」と言い換えて悪に手を染めるサラリーマンが多い東京、そして日本社会。
建設業、広告業、他さまざまな業界で、本件のおこぼれをもらう配下企業と関係者の裾野は広かった。
異常な計画の中止を祈るこの8年だったが、戦後の匂いを残した街もこの機に刷新してしまえ、という風が吹く中、想定通り街は様変わりした。
また国立競技場周辺の一帯再開発や、都営霞ヶ丘アパートを話し合い抜きで立ち退かせ全部解体など、中国が過去五輪でやった強引な手法を、この国は平気で市民に行った。
写真や図解が挿入され、非常にわかりやすい一冊。
2014年6月発行と7年前の本であるが、こういった本があるおかげで、たぶらかしてきた政府とすぐたぶらかされる民との間で忘れ去られてしまいがちな五輪の初期問題を振り返ることができる。確かに東京五輪には、今では語られなくなったカジノ(6章)や築地移転(5章)などの問題も絡んでいた。五輪に絡めて、それまで着手出来なかったことも一気に誤魔化してやってしまうつもりだったのだ。
そもそも、この本の表紙の5人。
ああそうか、この5人が当初五輪に関わっていたのだ。。。5人とも五輪実施された2021年の関係者席にはいない。
罪の重さや罪の質はそれぞれ違うが、全員犯罪を行った存在であり「WANTED」。
ここに竹中や、その後罪を継承した小池や菅も入れるべきだろう。
これまでの壮大な迷走は、元々カネで開催地を東京へ無理矢理誘導を行った出発地点から始まる。
「多様性と共生」だの「復興五輪」など言っているが、そんな主題は元々無く、「カネと利権」のために東京で開催する必要があった。
カネと利権だけが計画の目的であり、途中で奇妙な事件が多発し迷走したが、どんなウソをついても誘致させ、五輪開催を目指した。
そもそもの東京五輪のコンセプト土台の設計が如何にいい加減だったかを証明している。計画に無理あるものは、後々巨大な失敗に繋がる。
コロナという想定外の問題があろうがなかろうが、それ以上に深い根腐れが誘致時点ですでに発生していた。
「コロナがあったから仕方ない」ではなく、コロナがあったからそれを隠れ蓑にして、おおもとの問題をもみ消そうとしている。
コロナという特殊事態のノイズを除いて2021年最終地点へ繋がる道を確認する際、参考文献として読むことを勧める。
よく言われる通り、80年代から「五輪は商売になる」ということで商業主義になっていった五輪。
たった2週間程度の世界競技会に、わかるだけでも3兆円超の税金が投入され、都民のテレビ観戦料は一人約10万円とも言われる。
どんな不具合があろうと何ら説明せずごまかし、人をとっかえひっかえしながら、押し倒して突入した五輪。
・・・・「いざ始まってしまえば、あいつら始まるまでの不満なんか忘れますよ」
電2+政府関係者+マスメディア+利権者はそう言い、7月23日前までの空気を一転させるように、開会式を契機にニュースは五輪だけに染まり、大事な天気や生活に関わるニュースすらそっちのけにする。
何があってもシラを切り、突っ張り、押し切れば、何とかなる、という姿勢。
うつろいやすい国民は「また」開催前までの気持ちを忘れて、五輪終了後の選挙戦に向けて誘導されていくのではないか?。そんな心配がよぎる。
先日の都議選ですら、多くの都民は投票にも行かず、異議すら示さず、ありえない結果に終わっている。
そうならないためにも、こういった本を読みつつ、再度8年前からのプロセスを確認しておきたい。