中央の「3RD MAN」という文字表記と足から血を流す白い天使の石像。
そんなジャケットデザインのシングル盤。このシングル盤は、中古レコード店のエサ箱で、昔よく見た。
昔とは80年代のことで、場所的にはお茶の水のディスクユニオンが多かった。
中古レコード店に行くたびに、いつもナゾに思うレコード盤があった。
必ず中古でエサ箱にある定番レコード。しかし、その中身を聴くことが出来なかったので、いつまでもナゾのままだったレコード。
例えば、LPではファクトリーレーベルのミュージシャンを紹介した「ファクトリーサンプル」という盤。
ここには初期のドゥルッティ・コラムの曲も収まっていた。
「3RD MAN」も同じように、中古レコード店のエサ箱でよく見たものだった。
「3RD MAN」というのが演奏者名なのか?裏面には2人の若者の横写し写真と名前があるので、多分2人のバンド名なんだろう。わかるのはそれ位のこと。
これを購入したのは、あれから数十余年経った21世紀に入ってからだと思うが、購入したもののジャケットばかり見て、中身はろくに聴かないままだった。
今年に入ってからこのシングル盤を摘み上げて、何回も聴いては調べるうち、これがフラ・リッポ・リッピの前身バンドということを知る。と言っても、フラ・リッポ・リッピとは似ても似つかない別バンドの音ではある。
A面「Oral Pleasure」は、ピポピポ言う安っぽいカシオトーンらしきシンセと延々続くリズムボックスの音から始まる曲。
その音から、レコードの回転数は合っているのか?針飛びしてないか?と不安になるのだが、ノイジーなギターとこれまたくぐもったヴォーカルが聞こえてきて、とりあえず曲として始まっていることが確認できる。
初期のニューオーダー、1枚目の「ムーヴメント」や各種12インチシングルで展開された音が想起出来る。
一方B面「Pleasure Recycled」は、回転数を上げた声や電子機器に接触した際のジジジッといった音、まるで練習中と思えるようなホーンの音、それに交じってA面の曲の断片が入ってくる。曲名に「リサイクル」とあるように、ダブヴァージョンの位置付けなのだろう。
バンドというのは、だいたいが数年で散っていくケースが多いが、3RD MANからフラ・リッポ・リッピに向けて、メンバーが作品1枚ごとに違う。
この「Oral Pleasure/Pleasure Recycled」は、Bjørn SorknesとMorten Sjøbergの2人。
フラ・リッポ・リッピ1枚目「イン・サイレンス」は、Morten SjøbergとRune Kristoffersenの2人。
2枚目「スモール・マーシーズ」では、Morten Sjøberg、Rune KristoffersenにPer Øystein Sørensenがヴォーカルとして新たに加入している。
「3RD MAN」のシングルには、キラッと輝く何かを見い出すのは難しいが、1982年ノルウェー産の音楽と思うと粗末に扱えず、つい切り捨てられないのである。
■3RD MAN 「Oral Pleasure」1982■