中国では、この胴の削りというのは、みな型で削り出します。
と言いますのは、二胡を作る木の材料というのが、普通ならば金属を切る刃物を使いますから、フリーハンドで刃物やそのほかの道具を使って削っていたのでは時間がかかりすぎて、採算に合わないからです。
普通、二胡の胴も棹も、木工屋さんというか以前は家具屋さんだったようなところが、量産体制で作るのです。
型を使う以上量産体制にしないと型代の償却が出来ません。
中国でかなり良いもので2万元(日本円で、20万円、日本での販売価格は、たぶん50万を超えるでしょう)くらいします。それにしても量産には違いありません。
いくら名人と言われている人でもこの木の部分は、量産の一環なのです。
もちろんその中でも、一番良い木を使い、良い取り方をして、健全に鳴るような木の組み合わせというのは考えます。
それらの良い木で作ったものに、皮の良い処を使って作るのです。
それにしても楽器ですし、木は一台一台違いますし蛇も一枚一枚違います。
それらの良い組み合わせが出来上がった時に、良い楽器が出来上がるのです。
私の場合は違います。
どちらかというとバイオリンの制作者のように、一台づつ使う木が鳴るように削り上げていきます。
偶然を極力排除します、もったいないですから。
そうでなくとも偶然に頼る部分というのは楽器つくりには必ずあります。ストらでバリウスのバイオリンだからと言って全部が全部良い鳴りとも言えないのと同じです。
それでも作る時には、ひとつづつ最大限の注意を払って削ります。
まず、皮を張る部分を削り出します。
このように中を削り、高音が出やすいように、また、弾きやすいように、かなり薄く削ります。
たぶん、ほとんどは、2ミリくらいです。
木の硬さに合わせて削っていかないと削り過ぎると、今度は低音が重低音という感じになりませんし、厚すぎれば、今度は弾きにくい高音の出ない楽器になります。
この皮を張る部分というのは、皮と一緒に振動していますから、皮の厚みというのも重要な役割を果たします。
皮の、厚みと木の厚みのバランスですね、これはやってみないと何とも説明できません。
このあたりは、訓練というか練習というか、いかにたくさん失敗したかの積み上げです。
この木はアフリカ黒檀です。アフリカンブラックウッドというのが、世界中で使用されている名前です。
以前頼まれて作った時にはそれこそ胴の材料だけ手に入り、あとは、棹や代までスリランカの真黒という黒檀の最高級品を使いました。
それがとても良い音だったので、あちこち探して、ついにアフリカンブラックウッドの板を見つけたので今は、後20台ほどは作る分があります。
ちなみに、このアフリカンブラックウッドで作ると金額は44万円です。(会員は15%オフ)
この木はもともとがクラリネットやオーボエなどの管楽器を作るための木です。
華やかに鳴りますし高音の綺麗さは、いわゆる黒檀とは違います。
だいたいが黒い色をしているので、アフリカ黒檀と言っていますが、本当はマメ科の紫檀の仲間ですから、削りたては、紫檀特有の薄いストライプ柄もみえます。
音は明るい音なのです。
実は本物の真黒と言われる、黒檀の二胡というのはこの3年半の間に、光舜堂で見かけたのは、本の数台きりありません。
ですので皆さんが黒檀と思われている音というのが意外とこのブラックウッドや縞黒檀の音だったりもします。
ある東京の大きな教室の北京系の楽器の胴の部分はほとんどがこのアフリカンブラックウッドのようです。
独特の音色がしますね、
棹に関してはブラックウッドの物もあり、インドネシアの黒檀の物もあり中にはカリマンタンエボニーもあるようです。
ですから黒檀と言って購入された方がなんだかこの楽器は黒檀の音がしない、あの黒檀のまろやかな少し沈んだ音がしないといって持ってこられる場合も多いです。
このあたりのことは木の名前を世界に通用する名前で統一して欲しい事の一つでもあります。
いずれにせよ、この華やかな鳴りの二胡は、鳴らし始めると、爆音になります。
木村ハルヨさんの二胡の音のの大きさはここからきているとも言えます。
彼女はたまに北京系の8角形を弾いている人との共演もあり、北京系に匹敵するといっています。
そのくらいに鳴りやすいのがこのアフリカンブラックウッドです。
上の胴の写真、高級なビターチョコみたいで美味しそう~!綺麗な木ですね。
六片の木を繋ぎ合わせて作られているのに、楽器の表面には全く繋ぎ目が見えず、それが何とも不思議です。
来年は一台あるいは2台だけ、黒檀、真黒の、黒檀の二胡作ります。お楽しみに。