二胡工房 光舜堂

二胡を愛する全ての人へ

日本の二胡の現状について、その12。

2012-07-03 08:44:23 | ■工房便り 総合 
今、 私はバイオリンの製作にも取り組んでおります。

理由は、二胡の場合いくら良い物を作ったとしても、どうやら、世界一を目指すのは不可能だと気ずいたからです。

二胡は中国のものが一番と思っておられる方がとても多いというのも理由の一つではあります。

また、中国が好きでその二胡が本来の形であると思っておられる方も多いということも有ります。

楽器は好みですからその事にとやかくはいいませんが、物つくりの基本として私は、取り組んだ以上、より良い性能と、より良いデザインを追求してしまうということがあります。

科学者たちが、新しい理論を見つけると、その倫理的な問題は差し置いて、その技術と新しい知識を追求する事に溺れてしまうのといっしょでしょう。

フランケンシュタイン博士の、怪物もそうですし、原子爆弾もそうですし、クローン再生や、遺伝子の操作などもそうですね。

二胡はそこまで、危険は孕んでいませんが、(多分、爆発はしません)折角の中国の伝統?という物を穢してしまうのだと思う方も多いと思います。

如何に弾きやすく鳴りやすい、全音に渡って綺麗になり、爆音がする、という二胡を作ったとしても、それは二胡では無いと一蹴されることに少しうんざりしているというのも有ります。

もちろん、先生方や楽器屋さん達はそんなに弾きやすく、綺麗に音が出てしまっては、御自分達が推薦する二胡を否定してしまうことになります。(そんなことは無いのですよ、中国製でも良い二胡は沢山あるし、新しいデザインも沢山あるのですが、それらを今までは取り入れて来ていませんから。販売に都合の良い物を仕入れていたというのも有り、御自分の気に入った工房のものだけ取り寄せていたというのもあります)

当然、身を守ることになり、西野二胡は、否定されます。

もちろん当然です。(私が同じ立場でもそうするでしょう、私だったらもっと徹底的にやるでしょうね、その点今の先生方は、とてもお優しいのだと思います)

そこで、私はジタバタしないのが信条ですから、楽器を作りたいという気持ちを他に向けている結果、バイオリンなら、昔チェロを弾いていたということもあり、とても楽しそうだと思ったのです。

その上、今や日本人がバイオリンの製作でも金賞を取るような時代になりました。

日本人の作った、バイオリンなんてとは、だれもいいません。(日本にバイオリンが入って来てから、150年は経ちますしね。)

ですからHPからも西野二胡の値段は消しました。

積極的に、二胡を売るというより、これは良い欲しい!といっていただけるかたにお買い上げいただければ良いのではないかと考えたのです。

もし、ホントに私の作った二胡が良いものでありさえすれば、時間がかかっても皆さんに広がって行くはずだと信じています。

もちろん、皆さんが評価がが良ければということで、駄目な楽器だったら伸びていかないでしょう。

まあそれはともかくとして、二胡です。

最近、私の周りにとても良い楽器が集まり始めています。

50万円、60万円、中には80万円という楽器達です。

もちろんお客様がお持ちの楽器の調整にいらして診せていただいたものです。

これらは、空弦を弾いた瞬間に違いが判ります。

ずんーーんときます。

明らかにプロ用に作ってあります。

プロ用というのがあるのです。

弾く時に、弓の毛に抵抗感があり、一瞬遅れて音が出ます。

二胡は比較的バイオリンなどと違い、弾きにくい物が多いのです。

バイオリンも中には多少弾きにくい物がありますが、二胡ほどではありません。

それらのプロ用と思われるものをちゃんと鳴らすには、かなりの練習量が要ります。

相当シッカリと弓の毛が弦をとらえていないと、皮だけが鳴り、ズンーーーんとはきません。

唯弾きにくい楽器としか感じられないかもしれません。

そして、その弾きにくさだけが、量産物にも影響を与えています。

本来ならば、初級者が弾く楽器というのがあっても良いのではないかと最近は考えています。

要するに、弾きやすい楽器です。

それは単純に、皮を張ってあるところの、木の厚みの問題なのですが、(勿論削り具合は木によって違います)それをプロ用と分けていないのです。

そのおかげで雑音も多く、弾きにくい楽器が出来上がります。

プロが弾くような程厚みのある楽器は、それなりの皮も必要なのですが、皮が合っていないことが多いのです。

おかげで、皮の薄い分、少しは弾きやすく鳴りやすいのですが、妙な雑音になってしまいやすいのが、今の殆どの二胡だともいえるのです。

元々は、良い楽器(プロ用)として開発されたのでしょう。

その時には十分に良い木を使って、重低音の出るくらいな厚みの木に削り、見合うような厚みの皮を張ったはずなのですが、単純にその形態だけが、伝統として残ってきています。

ですから、良い工房が、良い木を選び、良い皮を張った、というもの以外は、その伝統にちゃんと則っていないのではないかと思うのです。

それほどの高級材の木ではなくとも、それほどの良い皮でなくとも、二胡は十分に良い楽器になりうるはずなのです。

変な固定化された、伝統という物が、本来の意味を全うせずに形骸化されて作られてしまっていると言ってもよいかと思います。

花梨でもバリサンダーでも、安いパドークでも、それに見合った木の厚みとそれに見合った皮で作りさえすれば、十分良い音になります。重低音になります。

それを研究するのが楽器作りの一つの仕事でもあると思うのです。

単に伝統と言いますが、その伝統の寄って来たる所の意味まで考えられていなければ、それはただの形でしかありません。

いままで私の作った二胡は、弾きやすい方向でした。

もちろん、良き木も使って有りますし、そこそこの皮は使って有ります。唯、皮を張る部分の木が振動しやすいように、本の1,5ミリほど今までの二胡より薄く削り込んであるのです。

最近、どうせ人様に日本製などと相手にされてもいないようですので、これぞプロ用というのを作ろうと始めています。

木はアフリカンブラックウッドです。今までに一台だけ作らせていただいたのは、二泉用でした。そのおかげで、かなりプロ用に近い厚みに作り上げてあり、木も皮も厚く、お買い上げいただいた方は苦労されているかと思いますが、二泉を張ってある限り、それほどの抵抗感は無いと思います。二泉のおかげでむしろ弾きやすく感じるかもしれません。

二泉弦の振動は、普通の二胡元より振動が大きく、元々弾きにくいものではありますので、むしろ、この木の厚みが良い抵抗になっているはずなのですが、相当弾きこまないと本来のなりにならないのではないかと危惧しております。

ドデカゴンなので、鳴りだしたらこれはもう止まりません。

その、二泉胡を作らせていただいたおかげで、最近、プロ用を目指しています。

どうせ公然と評価されないなら、とんでもないのを作ってやろうとしています。

その第一段階が、ある関西の演奏家お二人に弾いてもらって、かなりの効果(音楽としての)を上げているようではあります。

今作りつつあるアフリカンブラックウッド、(多分8月終わりぐらいに完成?)はもう、陸さんの作った楽器並みの木の厚みになりますので、これはまた、このお二人に試していただこうと思っています。とにかくこの方式は1台作るのに、4ヶ月位皮にかかってしまいます。
ゆっくりゆっくり育て上げようと考えています。

売るとか売らないとかではなくとにかくみなさんにこの重低音を弾いてみて欲しいのです。

3台のうち1台は光舜堂に残しますので、皆さんこの重低音試しびきにいらして下さい。

半拍遅れの重低音お楽しみください。







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4 Comments

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琵琶がそうですね。 (nishino)
2012-07-04 14:20:58
琵琶は奈良時代から日本のは変わっていないのではないですかね。
多分先進国の物は一番と信じてそのまま残したら、ホントに置いて行かれたのかもしれません。

二胡は大丈夫です、私が居ます。
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toyoさん (nishino)
2012-07-04 14:18:47
ブログで答え書かせてもらいました、興味のある方も多いと思いまして。
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大いなる勘違い (うっち~)
2012-07-04 00:01:49
>中国が好きでその二胡が本来の形であると
>思っておられる方も多い
これは、大きな勘違いです。
中国人は、伝統よりも合理性を優先します。楽器に関しても、良いと思えばどんどん改良を行います。二胡も数多くの改良、新型が発表されてます。
これが日本に入ったとたん、フリーズ。
伝統? 歴史の浅い二胡にはそんな物ありません。
平安、平城の時代に中国から入ってきた楽器は、その時点で発展は皆止まっています。(この時代に二胡は日本に入ってきていません)
一方で中国では合理的に改良が加えられている。
「中国が好きでその二胡が本来の形と思っている」人は、そのうち取り残されてしまうでしょうね。
西野二胡は、日本でグダグダ言う人かいるかもしれませんが、むしろ中国のほうが受け入れられるんじゃないかと、中国にいると、その皮膚感覚で思っています。
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低音の楽器について、質問あれこれ (toyo)
2012-07-03 10:34:32
私たちの手元にある、西野さんの、ブラジリアンローズの二胡と、ある工房の弟子作という条件で安く作ってもらった老紅木の八角二胡は、音の高さが、ぜんぜん違うようにきこえます。バイオリンと、ビオラぐらい違うかと思う。でも、チューナーでは同じ音。こんなに、感じが違うのに、ほんとに同じ音なんだろうかと、素人の私たちは、いつも不思議に思ってます。どっちも、それぞれ非常に良く鳴って、それぞれに個性を持ったいい音です。高音の良く出る二胡は、胴のサイズも、若干、小さめです。(師匠作は、大きい胴でプロ使用だそうです)

バイオリンの低音と、ビオラの高音と、ビオラの低音と、チェロの高音は、同じ音に聞こえるのでしょうか?
ビオラの上2弦と、二胡の弦は、同じ音域のはずなのですが、高音の二胡と比べても、まったく、聞いた感じは違います。
絶対音階など、持っているはずもない、音楽の素人の私たちには、楽器が違うと、これ何の音????になってしまいます。
同じビオラでも、ちびの私が持っている、39.5cmサイズのビオラと、プロが使う42cm以上のビオラでは、バイオリンと、チェロに分かれるぐらい、音が違います。たった、2.5cmで、どうやってもその音が出ないので、ものすごい、コンプレックスです。バイオリンぽいビオラと思えば、それはそれで、いい音なのですが。そんなに、違いが出るものなのでしょうか?

また、音が、半拍遅れて出るということですが、ビオラの先生に、「ビオラは、バイオリンと違って、弓を弾きはじめてからすぐには音が立ち上がってこないから大変。チェロでは、もっと遅くて、弾くのが大変」と弓を確実に当てるように注意されます。失敗すると、ぶおーんと、まのぬけた立ち上がりの音になります。
低音の楽器は、弦の振動させるのに、時間がかかるだけでなく、楽器全体を振動させて、低音をだすので、躯体が大きい分時間がかかるということなんでしょうか?
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