現在二胡の弓に使われている馬の尻尾の種類です。
左から、脱色したもの、無脱色の白毛、花色(茶色)黒毛となっています。
馬の体毛の色は、鹿毛、黒鹿毛、青鹿毛、青毛、栗毛、栃栗毛、芦毛、佐目毛、河原毛、月毛、白毛、粕毛、薄墨毛、駁毛などと日本では呼ばれています。
この中で、芦毛、佐目毛、河原毛、月毛、白毛、粕毛、薄墨毛などの馬の尻尾の色は比較的白く、
若い時には多少灰色であったのが年を経るごとに白くなっていく芦毛の馬もいますし、
光に当たると尻尾が金色に光る栃栗毛のようないろもあります。
それを特別尾花栗毛と呼ぶようですが、
基本的に、尻尾の色は茶色ないし黒の毛が多いです。
白っぽいものは珍しいので様々な名前を付けて珍重していたようです。
馬毛はその馬の死亡時に、皮と一緒にとられます。
そのおもな産地はモンゴルや内モンゴルまた南ロシアの馬毛などはヨーロッパの擦弦楽器に古くから使われてきています。
馬毛は均一なわけではなく、その産地の血統で質が変わるといわれています。
イタリア産の馬毛などはしなやかで強くかなり真っ直ぐなものが多く、
販売価格も他の馬毛の3、4倍するといわれます。
馬毛の主な製品というのはブラシや毛筆です。
尻尾の長さというのは長いものは1mを超えますが、相当少ないです。
一頭の馬からとれる尻尾の毛は350グラム前後と言われます。
その中で擦弦楽器に使えるくらいな80センチを超えるものは100グラムくらいです。
また二胡はさらに長く90センチを必要としていますので、その量は50グラムくらいでしょう。
昔の二胡の弓毛の色は黒がほとんどでした、
中には花色の物もありましたが、白い毛の弓というのはありませんでした。
二胡の弦がそれまでの絹弦から変わって、スチール弦に変わった時からでしょうか、
弓毛の色も白っぽいものが、使われるようになりました。
白っぽい馬毛のほうが黒毛に比べるとひっかりが弱いのです。
それがスチール弦に合っていたのではないかと思います。
本来見た目ではなくその音的な性能で白っぽいものに変わったはずなのですが。
白いものを珍重するあまり脱色が酷くなったともいわれます。
黒毛は強いのです、毛質そのものも強いのですが、弦を引いた時の引っ掛かりがとても強く、
敏感に振動するスチール弦だと、どうしても引っかかってしまう感じがあります。
だからでしょうか、コントラバスの様に太い弦を張った楽器は、いまだに黒毛を使っている方もとても多いです。
しかし、弓に張る本数を減らすと、それほど問題なく弾けるようです。
現在の白い毛はそのほとんどが、これらの茶色っぽい色の毛を、脱色した毛が使われています。
ヴァイオリンなどに使われる場合は比較的白っぽい馬毛を軽く脱色したものが多いようです。
脱色したおかげで抜けやすく切れやすくなってしまっています。
無脱色の馬毛はほとんど弾いていて切れるということはありあません。
(弾き込んで劣化してきたときには切れますが)
脱色した馬毛は二胡の弓に作っても、その寿命はプロが弾いて1年くらいと言われます。
(中には2ヶ月で交換する方もいます)
突然弾けなくなるのではなく、毛が徐々に傷んでいく為に、弓を交換してみないとその劣化の具合が感じられません。
おおよそ、弓毛の使用可能時間は、
現在の脱色されたものですと、1000時間から1500時間くらい弾くとかなり傷んできたと考えてよいと思います。
無脱色の物ですと、劣化の時間はさらに伸びて、3000時間から4000時間を超えるようですが、
以上の時間というのは弾き方にもよりますので、大体目安と考えてください、
これらの時間を過ぎたからと言って突然弾けなくなるわけではなく、中には数千時間弾いてしまう方もいるようです。
然し、毎日1、,2時間弾いて、毎日松脂を塗らないと前日の音が出てこないと感じるようでしたら、相当劣化していると考えてよいと思います。