先日、木原嘉音君が工房に来られました。
程濃化さんの御子息です。
二胡の楽器に関してとても熱心に考えておられて、二人で色々話し合いました。
弓先までしっかり音を出したい!
確かに現状の二胡の弓はなかなか弓先までしっかり音が出にくいです。
そこで楽器の方で何とかできないかと。
あれこれ、ふたりで、というより弾くのは彼だけですが、勿論!
流石に、中国音楽学院修士課程卒業というだけあって、私なんかとは音の出がレベルが違います。
その彼にしても、やはり手持ちの中国製の弓ではなかなか先端までは良い響きになりにくいのです。
そこで、楽器を改造するのは かなり大変だしすぐ結果は出ないでしょうと、では弓ではと、色々私なりに工夫してきた弓を試してもらいました。
結局これ!
黒いですね。
これは黒旋風の改造バージョン。
昔の二胡には、このような毛が使われていました。
黒毛と呼んでいましたが、茶色も白もいろいろ混ざっていましたね。これは馬毛そのものを何も脱色せずそのまま集めて使っていた感じですね。混ざっているからこそ、二胡の雑味が出ると思います。ただ一本一本、音色にばらつきが出るようです
そこで純粋に黒毛だけは無いのかと業者の方にお願いして集めてもらったのが
今までの黒旋風となずけた弓毛です。
これは本当に真黒に感じたものです。
コントラバスの弓毛に使っているようなものですね。
今回木原嘉音君に弾いてもらったのは、その中でも選びに選んだ黒毛です。
黒毛と言ってもそれこそ天然の物ですから太さも色も少しは違うのです。
その中から、割と細めの毛だけを集めて(ネオちゃんが)作ってみたのがこの改造バージョンの黒旋風です。
この弓は更に竹にまで加工を加え、私が出来る限り弓の先端まで鳴る工夫をしました。
勿論モデルはヴァイオリンの弓です。
手元の力が先端でさらに強くなるようにしてあります。
黒毛の特徴は強いことです。
音も強く出ます。そして音色が甘い、、、不思議なことに私などが弾いても音色が甘く感じるのです。
強く太い毛は音にした時繊細さに欠けるようです。
ですから、コントラバスなどにしても音色として気に入らずヴァイオリンの弓毛を使う方もおられるようです。
(太い弦を鳴らすのに普通なら無脱色やイタリア産あるいは黒毛など引っ掛かりの強い馬毛を使うのですが、多少比較的引っかかりの弱いヴァイオリンの弓毛でも光舜松脂1と25は十分にコントラバスを鳴らすと言われています)
以前ご紹介したイタリア産の馬毛も強い音の出る馬毛です。そして華やかな鳴りをします。鳴尾牧子さんが使っている弓がこのイタリア産です。
人工皮CDMにはとてもその華やかな鳴りが合うようでこれで弾いてもらっています。
同じように強い音の出る黒毛ですが、かなり太さにバラツキがありまして、それで繊細さに欠けるのかと、(太さが太いものは1,5ミリくらいあります)馬毛を整理してみたのです。
そして作ったのがこの弓です。
強くて繊細でなおかつ音色が甘い、これが黒毛の良さでしょう。
この弓は最近御来房のお客様にとても気に入られて、益々ネオちゃんの仕事が増えているところです。
いずれにせよ、試してみない事には分からないですね。
御来房の時にぜひ試してみてください。
弦でも音が変わり、弓毛でも更に音色が変わり、そして何よりみなさんの弾き方も変わってくるようです。何しろ力を入れずに、脱力しやすいですから。
二胡の音色は奥が深いですね。
この改造黒旋風を使った木原嘉音君の演奏が楽しみですね。
その前に作らなければですね。
工房光舜堂西野和宏&ほぉ・ネオ