二胡工房 光舜堂

二胡を愛する全ての人へ

全ての二胡に新ワックイを・20日21日 「あーるふぅ」さんでの調整会。

2023-05-23 11:10:11 | 二胡の救急箱に書かなかったこと
行ってきました、神戸元町、もしかしたら初めてかもしれないですね、以前ほぉさんと神戸に行ったときには、比較的山の手の方を見て歩きました。
それ以前に神戸に行ったのは、伊藤ハムさんのレストランの設計と製作です。
35年前お茶の水のトラットリアレモンを作った同じ年でした。
大変残念なことに、震災でビルそのものが崩壊して無くなってしまったのです。
これを作っている時は、寝るのが新幹線の中だけみたいな生活でした。
ホント若かったですね。
今回は年も考えて、二日に分けました。
木村ハルヨちゃんにも会え、生まれた時から知っている友人のSさんの子供たちにも会え、うれしかったですね。時々子供たちから手紙をもらって、絵も描いてもらい、今はPCの前に張ってあります。
字なんか私よりよっぽど上手です。二人とも可愛くなりました。
さて、調整会の話。
20日は4名様。21日は10名様
これらの楽器のすべてに共通していたのが、まったく木軸が動かない。
金属軸一台と私が張り替えたCDMを除いた12台。
本当に良くこの木軸で調弦していると、感心するくらいチョークが詰まって、それが固まって、動かなくなる、などという生易しいものではないもの多数。
かなり力が強い私でも苦労しました、特に黒檀。
黒檀はマイクロクラックと言われる目に見えないほどの細かい罅割れが入っています。それにチョークの粉が食い込んでとても動かなくなります。
ですからまず、入っているチョークをブラシで取り除き、それから、木軸を削り合わせて、新ワックイを施します。
これ12台すべてに行いました。
この動かない木軸のお陰で、みなさん微調整器を付けています。
微調整器だけで、調弦するのです。
その上動かないといっても、内部の一部でチョークが固まっているおかげで、ガタガタと上下左右に揺れるのです。
お陰でいくら調弦したとはいっても、音は安定しなくなります。
その上もう一つの問題は、棹が曲がっているものが2台。長い間弦が緩められておらず、棹に負荷が掛かっています。
普通は紫檀は割りと曲がることもあるのですが、中の一台はカリマンタンエボニー、黒檀系ですが比較的柔らかいのです。
皆さんのお持ちの黒檀の中の半分くらいはこれでしょう。
そして、弓魚。これも殆ど烏木と言われるカリマンタンエボニーです。
茶色っぽい木目が見えることが多いですが、年月が経つと全体は真っ黒になります。まあ、黒檀には違いはないのですが、高らかになる真黒黒檀よりは、少し沈んだ音色で、好む方も多いのです。

ワックイを施した時の皆さんの表情、良いですね、こちらも嬉しくなります。
中にお一人だけ以前の旧ワックイを施していた方。
旧ワックイはワックスを使っています。
このまま新ワックイを施すと、少し滑り気味になります。
以前書きましたように内部の漆喰とワックスをよく拭き取ってください。
棹の穴の中は拭き取りにくいですね、本当はシンナーなどで取り除く方がきれいになるのですが、なかなか皆さんシンナーなどお持ちではないですね。
ですので再度、旧ワックイを付けたかたは、棹の穴の中を布地で良くふき、そこにお持ちの漆喰を沢山塗り込み漆喰にワックスを吸収させます。それから再度漆喰を穴の中に入れるかあるいは木軸に漆喰を付けて、穴の中で回します。
穴の中に漆喰を残しておいて、新ワックイを施すと良とおもいます。
旧ワックイも、ワックスの量が多すぎてしばらくすると滑るおとお知らせくださった方もいらっしゃいましたが、漆喰を多めにしてもらって解決していました。このように旧ワックイは、施す方のワックスと漆喰の量のバランス、そして木軸からにじみ出る木自体の持っている油分とのバランスなど、ちょこちょことメールなどでお問い合わせもありました。
その中のお一人のMさんの提案があり研究もあり、現在の新ワックイにたどり着きました。

作る方から行きますと、私には旧ワックイの方が楽です。
ネオちゃんと延々4時間くらいも交代で粉練り、その上30度前後の熱で保温一週間。オイルが全体にきれいに馴染ませ、それから、再度練り直して、最後にそば粉を混ぜ合わせて微調整するのです。
まあ、こんな大変さはあるのですが、新ワックイを施して喜ぶ皆さんのお顔を拝見すると、これはやはりすべての二胡に施さなければと感じたのです。
新ワックイも、旧ワックイも効果は変わりません。
旧ワックイで少し滑るかなと感じたら、漆喰を再度施せばよいだけなのですが、多少ワックスと漆喰の量のバランスに手間どりはしますが。
さて21日は、鳴尾さんが長くお付き合いくださいました。
調整を終わると、鳴尾さんに弾いてもらい、皆さんご自身の二胡の音の良さに、大変ご満足。

鳴尾さんのご満足と言えば、「しまかぜ」丁度当選者の方も二胡の調整に来られるということで、会場でのお渡しという事になっていたのです。
鳴尾さんにも、弾いてもらい、その威力を確かめてもらいました。
「しまかぜ」は、強力な音の出るという点ではイタリア産の馬毛に匹敵しますね。
純度の高いイタリア産の音色は、かなりクリアーですが、「しまかぜ」は倍音の多い含みのある音色で、イタリア産と同じように音が前に飛んでいきます。
毛の量を増やせば低音二胡にもとても合います。中国曲を弾くなら「しまかぜ」でしょう。
これはネオちゃんの大ヒット。若い感覚は、思い込みの強い経験者に優るのかもしれません。
音色を引き出すのに時間のかかる二胡には、どちらも最適でしょう。そして演奏家にも。
ある意味二胡の弓毛の革命ともいえるのではないかと感じますが、こればかりはお試しいただかないと分かりにくいでしょうね。あるいは相当弾きこみに自信のある方なら。
また、どちらの弓も一般販売はしないことに決めました。ご来房の方、あるいは、直接工房に工房に注文された方のみとさせていただきます。

とにかく、あっという間の2日間でした。
「あーるふぅ」のオーナーの道上さんには大変お世話になりました。
道上さんも二胡の楽器としての作りに様々あることを興味を持っていただいたようですし、二胡の調整を勉強したいともおっしゃっています。
ただそれにはやはり大変不具合の多い、また変化もある二胡という楽器ですから、とにかく沢山二胡という楽器に触ってもらうしかないのです。
4000台を超えてみてきた私でも、いまだにこんなことがと思うようなことが楽器に施されていたり、あるいは変化を見つけたりすることも多いです。
そういう点では楽しくもあり、大変でもある二胡の調整です。
なるべく早い段階で、また関西に行った方が良いのかなと感じた、調整会でもありました。
今回で3回目の次代を担うかもしれないネオちゃんの為にも、もっと多くの二胡に触れる機会を作ってあげたいです。
二胡の調整でのお客様、西野二胡を弾いてみたいというご来店のお客様そして、二胡の調整を見てみたいというお客様、ご来店ありがとうございました。
次回はできたら年内にとも、感じております。
工房光舜堂西野和宏&ほぉ・ネオ






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