店主とワタクシ、29日の土曜日に弾丸で関西へ行ってまいりました。
目的は、琵琶と黒主。
修理をお受けしていたプロの中国琵琶奏者さんの楽器のお届けと、
六歌仙『黒主』を鳴尾牧子さんへお渡しする為です。
中国琵琶は、鳴尾先生のご紹介ということでお受けしましたが、
実は店主は琵琶修理は初仕事でした。
既に亡くなってしまった名人の作、ということでしたが、
持ち主さん曰く「死んでしまった楽器」。
まともな音も出ないし、調弦しても直ぐ狂ってしまうので
せめて外見だけでも綺麗に修復したい、ということでお受けした楽器でした。
『黒檀』と言われて買ったというその琵琶、
塗り斑が目立ち、傷も増えたことで塗装をはがして欲しい、
音程をきちんと合わせられないペグを作り直して欲しい、
玉(ぎょく)のフレッドが狂っているので直して欲しい、
とのご依頼。
「そんな大事な楽器の修理をどうして中国に出さないのですか?」
と尋ねると、
「大事な物だから、中国には出せない」 と!!(。。。苦笑)
「鳴尾ちゃんの持っている西野さんの楽器の美しさを見て、
絶対にこの人に直して欲しいと思ったんです!」
と熱烈に信頼していただき、お受けするに至りました。
さて、まずは、たっぷりぽってり塗装を全て剥がすと、、、
あれれ、「黒檀じゃないじゃん!!」
店主にも正確には判明出来なかった、おそらく棗系の材。
しかし、木目はとても美しく、そのままオイル仕上げで磨き上げると
塗装を剥がす前よりよほど高級感が増しました。
けれども中国は無垢の木肌の美しさより塗装仕上げを好む文化。。。
果たしてこの無垢仕上げがお気に召すか心配でした。
それから木軸の作り直し。
4本全てが狂ってしまっており、音が合わなくなっているそうで、
「作り変えるなら、是非、西野二胡と同じように糸を巻いて欲しい!」
という熱きご要望で、金銀の糸を装飾に巻きました。
問題は、玉(ぎょく)。
日本ではこのような玉は手に入りません。
どうしたものかと楽器を眺めながら思案していると、
音の問題は、どうやら玉部分ではなさそう。
そこで玉部分には手を付けず、別の部分を削って直しました。
そこまでは『修復』の範疇。
ご依頼は、あくまでも壊れているところを綺麗に修復してほしいとの事でした。
しかし、音の問題にかかわり始めたら、
店主の楽器職人魂に火が点きまして、きちんとした音が出ないと気が済まない。
本当の意味での修理と調整がそこから始まり、
「音色」と呼べるものが安定して出るように直しました。
かくして、琵琶修理は完了し、
鳴尾弦楽団の練習場所で待ち合わせをして楽器をお渡ししました。
心配した無垢の仕上げには持ち主さんも大喜びで、安堵。
木軸もご要望通りの出来だったようで一安心。
そしてなにより、音が美しく鳴ったことに
「この楽器、死んでいたのに!!」
と、持ち主さん大驚愕!
「西野さん、ここまで貴方作れるのだから、ここも、ここも直して欲しい!」
と、いきなり更なるご要望!
「材料が日本じゃ有りませんよー(汗)」と言うと、
「私、中国で用意します! あゝそれより、1台分全部材料用意するから、
貴方にまるまる全部作って欲しい! 是非、この技術で琵琶を作って下さい!
貴方の様な技術を持った楽器職人は中国にはもういません!」
と、大絶賛!
「本業も忙しいし、弓作りにも追われヴァイオリンも待たせてるし、
二胡作る時間を捻出するだけでも大変なんですよー」 と言うと、
「琵琶の方がずっと歴史があって、お金になりますよ」と
ヒソヒソ声で甘い誘惑(笑)
「二胡辞めて琵琶になさい♪」
急に声をひそめて密談っぽく話す店主と琵琶奏者さん。
傍で聞いていたワタクシと会員Mさんは、そのやりとりに大笑いでした。
なにはともあれ、初仕事にも大絶賛いただきほっとしました。
さて、ある意味今回の関西入りのメインは、
天然コウキ紫檀6把=『六歌仙』のうちの『黒主(くろぬし)』を
鳴尾先生にお試しいただく事でした。
材料が高価過ぎて商品にしない事を決めた光舜堂所有の6把分の天然コウキ紫檀。
長期無料貸与用として、店主が惚れ込んだ方々にお使いいただくべく製作しています。
6把なので、『六歌仙』。
それぞれ、喜撰、業平、黒主、小町、遍照、康秀の名前が付いています。
で、
誰も西野二胡を認めなかった初期から全幅の信頼を置き続けて下さる
木村ハルヨさんが『喜撰』、
店主が惚れ込んだ鳴りと演奏力とまだまだ可能性無限大の
峠岡慎太郎さんが『業平』を使用。
そして(まだ完成していませんが)、
これまた店主が惚れ込んだ音楽性と演奏力の北川浩子さんが『小町』、
とそれぞれの初代貸与奏者は決まっています。
そして、『黒主』。
名前からして鳴尾さんが弾くしかないでしょう(笑)と思いましたが、
六歌仙は、どの楽器もあくまでも製作中は店主の片想い。
本当の意味で演奏家さんが気に入って下さって初めて契約が成立するのです。
演奏家として、伝えたい音楽をその楽器が十分表現出来るかをとても大切にしていらっしゃる鳴尾さんですから、弾いてみないと、というところ。
近くに居る峠岡君たちのようにしょっちゅうは会えませんから、
その辺も賭けみたいなところがありました。
電話で音色だけを聴いていただいた時には驚愕されていましたが、
それでも実際に弾いてみて不合格であれば、また背負って帰る覚悟で持って行きました。
ケースから取り出してまずは外見に、「美しいー!」
他の楽団員さん達も「綺麗ー!」「カッコイイ!」と注目。
そして、鳴らすと、鳴尾先生は「音色はパーフェクト!」と!!
しかし、弾いている本人には音色が柔らかく聴こえるので
ボリュームが小さく感じるよう。
ところが、それはご本人だけの感想で、
実は50畳ほどの部屋の最前列で鳴尾先生が弾く『黒主』は遠鳴りに優れ、
部屋の隅っこに居た我々のところまで響いてきます。
8人ほどの選抜チームを指揮をしていた鳴尾先生が途中から加わると、
それまで聴こえていた他の二胡が全て消えたかのように
『黒主』の音色だけが抜けてきます。
我々と居た会員Mさんと琵琶演奏家さんも、
「西野さんの二胡だけが届いて来る!!」と驚愕。
ということで、晴れて長期無料貸与の契約成立。
今後、鳴尾牧子さんの演奏の場には『黒主』が登場することがあるでしょう。
それでも製作者西野は棹に少々不満があるようで、
「しばらく弾き込んだら棹は取り換えよう」と。
まずは、しばらく鳴尾先生に弾き込んでいただくことになりました。
(お渡ししてまだ2日、なのに弾きまくって音色が育ってきているそうです!)
言い忘れましたが、
「音色はパーフェクト!」と鳴尾先生に言わしめた『黒主』は、
蛇皮ではなく、人工皮のCDMです。
六歌仙は基本的に全て蛇皮で作る予定で、『喜撰』と『業平』は蛇皮ですが、
「ゼノカルテットという二胡界を突き抜ける活動をする鳴尾さんには、CDMでしょう」
と、特別に黒いCDMを作ったのです。
オーラに凄みさえあった天然コウキ紫檀の胴にマグロの棹、
という最強コンビに、墨染(これが高難度で。。。)のCDM、
そして弓は、福音弓『阿炳礼賛』!
ある意味、無敵の二胡です。
実は、この出張直前に、
北海道にいるゼノカル中胡パートの森さんの使っている
DODECAGON(=低音西野二胡)もCDMに変えていました。
となると、セカンド二胡の川野さんは現在シャム柿の西野二胡使用ですが、
ダブルCDMに挟まれると、きっと音が負けてしまうでしょう。
そこで、「川野君、シャムもCDMにしようよ!」と店主。
「良い音に育って来てるから惜しいなぁ。。。」と川野さんはおっしゃっていましたが、
FBで「もっと早く換えてもらえば良かった!」と大絶賛して下さっている森さん
の感想を見れば、決心つくことでしょう(笑)
ということで、ゼノカル東京公演はCDM揃い踏みとなりそうです。
目的は、琵琶と黒主。
修理をお受けしていたプロの中国琵琶奏者さんの楽器のお届けと、
六歌仙『黒主』を鳴尾牧子さんへお渡しする為です。
中国琵琶は、鳴尾先生のご紹介ということでお受けしましたが、
実は店主は琵琶修理は初仕事でした。
既に亡くなってしまった名人の作、ということでしたが、
持ち主さん曰く「死んでしまった楽器」。
まともな音も出ないし、調弦しても直ぐ狂ってしまうので
せめて外見だけでも綺麗に修復したい、ということでお受けした楽器でした。
『黒檀』と言われて買ったというその琵琶、
塗り斑が目立ち、傷も増えたことで塗装をはがして欲しい、
音程をきちんと合わせられないペグを作り直して欲しい、
玉(ぎょく)のフレッドが狂っているので直して欲しい、
とのご依頼。
「そんな大事な楽器の修理をどうして中国に出さないのですか?」
と尋ねると、
「大事な物だから、中国には出せない」 と!!(。。。苦笑)
「鳴尾ちゃんの持っている西野さんの楽器の美しさを見て、
絶対にこの人に直して欲しいと思ったんです!」
と熱烈に信頼していただき、お受けするに至りました。
さて、まずは、たっぷりぽってり塗装を全て剥がすと、、、
あれれ、「黒檀じゃないじゃん!!」
店主にも正確には判明出来なかった、おそらく棗系の材。
しかし、木目はとても美しく、そのままオイル仕上げで磨き上げると
塗装を剥がす前よりよほど高級感が増しました。
けれども中国は無垢の木肌の美しさより塗装仕上げを好む文化。。。
果たしてこの無垢仕上げがお気に召すか心配でした。
それから木軸の作り直し。
4本全てが狂ってしまっており、音が合わなくなっているそうで、
「作り変えるなら、是非、西野二胡と同じように糸を巻いて欲しい!」
という熱きご要望で、金銀の糸を装飾に巻きました。
問題は、玉(ぎょく)。
日本ではこのような玉は手に入りません。
どうしたものかと楽器を眺めながら思案していると、
音の問題は、どうやら玉部分ではなさそう。
そこで玉部分には手を付けず、別の部分を削って直しました。
そこまでは『修復』の範疇。
ご依頼は、あくまでも壊れているところを綺麗に修復してほしいとの事でした。
しかし、音の問題にかかわり始めたら、
店主の楽器職人魂に火が点きまして、きちんとした音が出ないと気が済まない。
本当の意味での修理と調整がそこから始まり、
「音色」と呼べるものが安定して出るように直しました。
かくして、琵琶修理は完了し、
鳴尾弦楽団の練習場所で待ち合わせをして楽器をお渡ししました。
心配した無垢の仕上げには持ち主さんも大喜びで、安堵。
木軸もご要望通りの出来だったようで一安心。
そしてなにより、音が美しく鳴ったことに
「この楽器、死んでいたのに!!」
と、持ち主さん大驚愕!
「西野さん、ここまで貴方作れるのだから、ここも、ここも直して欲しい!」
と、いきなり更なるご要望!
「材料が日本じゃ有りませんよー(汗)」と言うと、
「私、中国で用意します! あゝそれより、1台分全部材料用意するから、
貴方にまるまる全部作って欲しい! 是非、この技術で琵琶を作って下さい!
貴方の様な技術を持った楽器職人は中国にはもういません!」
と、大絶賛!
「本業も忙しいし、弓作りにも追われヴァイオリンも待たせてるし、
二胡作る時間を捻出するだけでも大変なんですよー」 と言うと、
「琵琶の方がずっと歴史があって、お金になりますよ」と
ヒソヒソ声で甘い誘惑(笑)
「二胡辞めて琵琶になさい♪」
急に声をひそめて密談っぽく話す店主と琵琶奏者さん。
傍で聞いていたワタクシと会員Mさんは、そのやりとりに大笑いでした。
なにはともあれ、初仕事にも大絶賛いただきほっとしました。
さて、ある意味今回の関西入りのメインは、
天然コウキ紫檀6把=『六歌仙』のうちの『黒主(くろぬし)』を
鳴尾先生にお試しいただく事でした。
材料が高価過ぎて商品にしない事を決めた光舜堂所有の6把分の天然コウキ紫檀。
長期無料貸与用として、店主が惚れ込んだ方々にお使いいただくべく製作しています。
6把なので、『六歌仙』。
それぞれ、喜撰、業平、黒主、小町、遍照、康秀の名前が付いています。
で、
誰も西野二胡を認めなかった初期から全幅の信頼を置き続けて下さる
木村ハルヨさんが『喜撰』、
店主が惚れ込んだ鳴りと演奏力とまだまだ可能性無限大の
峠岡慎太郎さんが『業平』を使用。
そして(まだ完成していませんが)、
これまた店主が惚れ込んだ音楽性と演奏力の北川浩子さんが『小町』、
とそれぞれの初代貸与奏者は決まっています。
そして、『黒主』。
名前からして鳴尾さんが弾くしかないでしょう(笑)と思いましたが、
六歌仙は、どの楽器もあくまでも製作中は店主の片想い。
本当の意味で演奏家さんが気に入って下さって初めて契約が成立するのです。
演奏家として、伝えたい音楽をその楽器が十分表現出来るかをとても大切にしていらっしゃる鳴尾さんですから、弾いてみないと、というところ。
近くに居る峠岡君たちのようにしょっちゅうは会えませんから、
その辺も賭けみたいなところがありました。
電話で音色だけを聴いていただいた時には驚愕されていましたが、
それでも実際に弾いてみて不合格であれば、また背負って帰る覚悟で持って行きました。
ケースから取り出してまずは外見に、「美しいー!」
他の楽団員さん達も「綺麗ー!」「カッコイイ!」と注目。
そして、鳴らすと、鳴尾先生は「音色はパーフェクト!」と!!
しかし、弾いている本人には音色が柔らかく聴こえるので
ボリュームが小さく感じるよう。
ところが、それはご本人だけの感想で、
実は50畳ほどの部屋の最前列で鳴尾先生が弾く『黒主』は遠鳴りに優れ、
部屋の隅っこに居た我々のところまで響いてきます。
8人ほどの選抜チームを指揮をしていた鳴尾先生が途中から加わると、
それまで聴こえていた他の二胡が全て消えたかのように
『黒主』の音色だけが抜けてきます。
我々と居た会員Mさんと琵琶演奏家さんも、
「西野さんの二胡だけが届いて来る!!」と驚愕。
ということで、晴れて長期無料貸与の契約成立。
今後、鳴尾牧子さんの演奏の場には『黒主』が登場することがあるでしょう。
それでも製作者西野は棹に少々不満があるようで、
「しばらく弾き込んだら棹は取り換えよう」と。
まずは、しばらく鳴尾先生に弾き込んでいただくことになりました。
(お渡ししてまだ2日、なのに弾きまくって音色が育ってきているそうです!)
言い忘れましたが、
「音色はパーフェクト!」と鳴尾先生に言わしめた『黒主』は、
蛇皮ではなく、人工皮のCDMです。
六歌仙は基本的に全て蛇皮で作る予定で、『喜撰』と『業平』は蛇皮ですが、
「ゼノカルテットという二胡界を突き抜ける活動をする鳴尾さんには、CDMでしょう」
と、特別に黒いCDMを作ったのです。
オーラに凄みさえあった天然コウキ紫檀の胴にマグロの棹、
という最強コンビに、墨染(これが高難度で。。。)のCDM、
そして弓は、福音弓『阿炳礼賛』!
ある意味、無敵の二胡です。
実は、この出張直前に、
北海道にいるゼノカル中胡パートの森さんの使っている
DODECAGON(=低音西野二胡)もCDMに変えていました。
となると、セカンド二胡の川野さんは現在シャム柿の西野二胡使用ですが、
ダブルCDMに挟まれると、きっと音が負けてしまうでしょう。
そこで、「川野君、シャムもCDMにしようよ!」と店主。
「良い音に育って来てるから惜しいなぁ。。。」と川野さんはおっしゃっていましたが、
FBで「もっと早く換えてもらえば良かった!」と大絶賛して下さっている森さん
の感想を見れば、決心つくことでしょう(笑)
ということで、ゼノカル東京公演はCDM揃い踏みとなりそうです。