二胡工房 光舜堂

二胡を愛する全ての人へ

木の乾燥について(下駄とシャム柿)

2011-09-02 08:12:50 | ■工房便り 総合 
先日、私の仕事場の若い人たちの友人が来ました。

靴の作家です。

今度神楽坂で靴の展示会をやるとのこと、その中に下駄を出したいとのこと、

「下駄!」

「そう下駄です」

下駄とその収納の箱が一体になった感じの物で、これ見て下さいと図面を取り出す。

最近どういうわけか若手作家の相談役やることが多くなってきた。

こんな物、あんな物作りたいが、手伝ってもらえないかとか、

作り方教えて下さい、とか。

まあ、これも爺の役割、というより爺になった。

というわけで下駄を作ることになった。

彼の希望は、一枚の木で掘り出すような感じ。

「出来たら、この厚みは70ミリで」

「いや、木は完全に乾かすなら、55ミリ以下だよ」

「出来ないのですか」

「出来なくはないけど、それには時間がかかるよ、」

「どのくらいですか」

「15年」

「えッツ!冗談でしょ」

「いやそのくらいはかかる、昔知り合いの、秋田の下駄屋さんが、火事にあって材料を全部燃やされてしまって、彼は55歳だったけど、もう仕事はあきらめたんだ、」

「何でですか」

「下駄の材料が、納得するまでに乾燥するのに、15年はかかるから、その頃には彼は70歳、もう仕事はできないと考えたんだそうだ」

木の乾燥は、自然に乾かすととんでもなく時間がかかります。

例えば、30ミリの板ならそのまま自然に乾かせば、含水率17%ぐらいになるのに、3年はかかります。

これは針葉樹の場合。

広葉樹、特に紫檀や、黒檀などは、15年ぐらいはかかります。安全を見るなら、20年でしょう。

自然に乾かした木は、

多分、もういくら湿気が有るところで使ったとしても、殆ど動かなくなるには、

製材してから、2,300年はかかるでしょう。

そこで、人工乾燥というのが出てきました。

これだけ世の中に、エアコンが発達してくると、自然環境とは決定的に乾燥度が違います。

もし密閉してある部屋なら、殆ど湿度10%位になってしまいます。

そうなると、自然に乾燥した木は、縮むだけ縮み、狂うだけ狂います。

良く無垢の木のテーブルが、そっくりかえっているのを昔は見たものです。

そのために人工乾燥で、含水率を、熱をかけて10%位に落とします。

そうすると木はそれ以上動きにくくなりますし、湿気を与えても、含水率15%以上には戻りにくくなります。

しかし、このように、ほんらいならば、2,30年の時間をかけるべき物を、人工乾燥は、1ヶ月くらいでやってしまいますので、木は傷みます。

無理やり熱で乾かしますから。

それと、人工乾燥では、55ミリ以上の木は、表面が硬化してしまって、内部に水分が残ってしまい、厚いいものには使えません。

その靴屋さんの希望で、なんとか厚い70ミリの板でやっては見ましたが、

案の定、失敗、クラックが入ってしまいました。

「ね、こうなるのですよ、」

「ホントですね、どうしようか」

「一枚のように見えるように木を接ぎこみますよ」

という事で今回は、納得してもらった。


木は、木長に付き合うしかない物ですね。

と言いつつ、やっと、3年前から、自分なりに乾かしていた(、ちょっと工夫して、

緩い人工乾燥を考え出して、)それで乾かしていたのが、使えるようになった。

シャム柿が乾いた。

これで、10月には、4台くらいはシャム柿の二胡出来上がる。

お待たせしました。

Comment    この記事についてブログを書く
« 8月28日(日)今月末は賑や... | TOP | 楽器を育てる。 »
最新の画像もっと見る

post a comment

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Recent Entries | ■工房便り 総合