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民衆会議/世界共同体論(連載第22回)

2017-12-16 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第5章 民衆会議代議員の地位

(3)代議員の諸権利及び義務
 議会制度下の議員、とりわけ国会議員には様々な「特権」が付与されているが、代表的なものとして、不逮捕特権、免責特権、歳費請求権がある。これらは議会政民主主義を擁護するために必要な権利であり、単純な優遇特権ではないと説明されている。
 しかし、実態として、不逮捕特権は汚職など犯罪行為を犯した議員の地位保全策として機能し、免責特権は議会内での品位、相互の敬意を欠いた暴言を正当化しているばかりで、むしろ民主主義の質を落とすことに手を貸している。
 民衆会議代議員の場合、こうした「特権」は付与されない。それは民衆会議が民主主義を軽視しているからではなく、むしろ「半直接的代議制」の理念に基づき、代議員と一般民衆の対等性という真の民主主義を確保するためである。
 ただし、いくつかの例外はある。代議員の不当な身柄拘束を防ぐため、拘束された代議員に対する民衆会議の釈放要求決議の権限は留保される。この決議に基づき、代議員を拘束した機関または団体、個人は直ちに釈放しなければならない。
 また民衆会議内で行なわれた公式の審議に際して名誉棄損等の不法行為を問責するには、他の代議員または被害者が当該代議員を民衆会議懲戒委員会に告発しなければならない。懲戒委員会は審査の結果、当該代議員の訓告または出席禁止の処分を科することができる。ただし、罷免相当と判断した場合は、民衆会議に対し、弾劾法廷の設置を請求しなければならない。
 なお、代議員には歳費請求権あるいはそれに代替する何らかの報酬請求権は全く存在しない。なぜなら、代議員は市民としての任務であるゆえ、完全無報酬だからである。この点は、貨幣経済が排される共産主義社会ならば、さほど奇異に受け取られないであろう。
 一方、代議員の義務として重要なのは政党やその他のいかなる利害団体・関係人からも独立して任務に当たるべき中立義務である。民衆会議は政党やその他の媒介者を通じた間接代表機関ではないことに由来する義務である。従って、いわゆる陳情やロビー活動を受けることも許されない。反面、正式の手続きを踏んだ請願に対してはすみやかに対応する義務が生じる。
 中立義務と密接な倫理規定として、代議員としての任務に関連し、または関連する可能性のある状況で他人から何らかの報酬や謝礼に相当する財物やサービスを享受することは、すべて汚職行為とみなされ、弾劾の可能性にさらされる。
 さらに、任務優先義務である。すなわち代議員は本来の職との兼職も可能であるところ、両者が両立しない状況では代議員任務を優先しなければならない。具体的には民衆会議への出席義務である。疾病等物理的に正当な理由のない欠席は懲戒、弾劾の事由となる。

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民衆会議/世界共同体論(連載第21回)

2017-12-15 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第5章 民衆会議代議員の地位

(2)代議員の抽選及び任期
 民衆会議代議員は選挙ではなく、抽選によって選出される。ただし完全な無作為抽選ではなく、前回述べたように、各領域圏が定めた年齢に達した代議員免許取得者の中から公募・抽選される。
 また、これも前回触れたように、当該領域圏内に一定期間以上居住していれば誰でも代議員免許は取得可能であるが、代議員の被選要件としての居住期間は領域圏ごとに別途定めることができる。
 犯罪行為その他の非違行為により公民権停止中であること、あるいは心神喪失状態にあることは不適格事由となる。また公募の時点で代議員免許の有効期間(20年)の残期間が後掲の代議員任期に満たない場合も同様である。
 なお、思想信条は一切不適格事由とならないが、抽選後に破壊活動団体その他の反社会的団体の構成員または利害関係者であることが発覚したときは、弾劾・罷免の可能性にさらされる。
 抽選に当たっては、選挙制度における選挙区のような区割りはなく、領域圏民衆会議であれば全土から抽選され、地方の各圏域民衆会議では当該の地方自治体全域から抽選されるという単純明快な抽選法による。民衆会議は政党を基盤とする議会制度とは異なり、政党単位での公募は認められず、常に個人単位で公募する。
 公募・抽選は各圏域民衆会議の事務局が定期的及び補欠的に行なう。抽選手続きは不正操作のしにくい非電子的なくじ引き方式による。抽選会は公開され、民衆会議が選定した公式監視人の立会いの下、一般傍聴やメディアの中継も可能なものとする。
 代議員は代議員が「職業」ならず、「任務」であることから、ローテーション制を本旨とし、その任期は4年または5年程度とし(各領域圏・地方各圏域により任意に選択可能)、同じ圏域への連続的な応募は認められない。 
 ただし、代議員免許の有効期間中である限り、一期以上おいて再応募・抽選されることや、別の圏域に横滑りで応募・抽選されることもローテーション制の本旨に反しないから、可能である。

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民衆会議/世界共同体論(連載第20回)

2017-12-14 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第5章 民衆会議代議員の地位

(1)代議員免許
 民衆会議の構成員―民衆会議代議員(以下、代議員と略す)―は、現行制度に比すれば国会/地方議会議員に類似するとはいえ、その地位は議員とは似て非なるものである。まず第一に、代議員は所定の免許取得者であることを必要条件とする。
 代議員免許は全土及び地方ともに共通の公的試験に合格することにより取得される。この代議員免許取得試は各領域圏ごとに実施される。受験資格は年齢不問で、当該領域圏内に一定期間以上居住していれば誰でも受験可能とする。ただし、代議員の被選年齢や居住要件は領域圏ごとの裁量に委ねられる。 
 ちなみに世界共同体における領域圏には「国籍」なる概念が一切存在しないため、海外領域圏の出身者であっても一定の居住年数を満たせば代議員免許が得られる仕組みである。ただし、領域圏ごとの実施であるため、試験は当該領域圏における公用語(複数可)で実施されることになる。
 試験の内容は、[Ⅰ]基礎科目として「政策立案」・「立法技術」・「政治倫理」、[Ⅱ]政策科目として(A群)必修科目の「政治・法律」・「環境・経済」、(B群)選択科目は「福祉・医療」と「教育・文化」のいずれか任意の一方を選択する。
 [Ⅰ]基礎科目は、代議員としての任務を遂行するに当たって必要な素養及び倫理に関する基礎的な理解を問うもの、[Ⅱ]政策科目中の必修科目は政策立案・立法者として理解されているべき「政治・法律」、「環境・経済」という二大支柱に関わる具体的な知識を問うものである。
 [Ⅱ]政策科目中の選択科目は、各論的な政策分野である「福祉・医療」または「教育・文化」のうち、各自がより関心を持つ一方を選択する。代議員は特定分野のスペシャリストである必要はないが、代議員にもある程度の専門分化性を持たせる趣旨である。
 試験の技術的な実施方法としては、暗記力に依存する参照不可型ではなく、免許試験を所管する民衆会議考試局が編纂する各科目の公式教科書の持込み・参照を許可する参照型とする。これは、代議員の任務が特殊専門技能ではなく、総合的・包括的認識力にかかることに由来するものである。
 こうした免許試験の趣旨目的に照らしても、試験は少数選抜型ではなく、資格付与型のもので、その合格率は80パーセント以上の高率なものでなければならない。結果、合格までに多年を要さず、志望者の大半が二回以内の受験で合格可能なものとなろう。
 ただし、代議員免許は取得後20年経過または取得後10年間一度も代議員に応募しないことによって失効し、再取得するためには改めて免許試験を受け直さなければならない。この更新試験では、上掲試験科目中〔Ⅰ〕基礎科目は免除され、〔Ⅱ〕政策科目のみが課せられる。

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民衆会議/世界共同体論(連載第19回)

2017-12-02 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第4章 民衆会議の組織各論②

(5)民衆会議と経済計画 
 民衆会議の総合的な施政機関としての特色を示すもう一つの柱として、経済計画の承認という任務がある。真の共産主義的経済計画は、計画対象企業体による自主的な共同計画として、民衆会議とは別立ての経済計画会議が審議・策定する(拙稿参照)。
 経済計画会議で最終的に議決された経済計画案は、その後、全土民衆会議に送られたうえ、審議・承認されて初めて発効する。 これによって、経済計画は法律そのものではないが、単なる政策要綱でもなく、法律に近い拘束力を持った準則となる。
 なお、以上は全土レベルの生産活動に係る生産計画の場合であるが、地方ごとの消費に係る消費計画に関しては、各地方圏(または準領域圏)ごとの消費事業組合が計画案を策定し地方圏(または準領域圏)の民衆会議が審議・承認する(拙稿参照)。
 こうした構制からして、別連載『新計画経済論序説』では「政経二院制」という構想を提唱したところであるが(拙稿参照)、政経二院制とは、旧ソ連のような行政指令型ではなく、企業体による自主的共同計画という構想から計画経済を主導する経済計画評議会と、政治を主導する民衆会議とを併せて「二院」と総称したものである。
 もっとも、この構制では、民衆会議と経済計画会議とは全く役割・性格を異にする機関であるから、「二院制」という諸外国の上下両院や日本の衆参両院を指す用語と混同されてはならない。

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民衆会議/世界共同体論(連載第18回)

2017-12-01 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第4章 民衆会議の組織各論②

(4)民衆会議の司法機能
 民衆会議が総合的施政機関であるということは、法に基づく個別的な紛争事案の解決に関わる司法機能も民衆会議が掌握することを意味する。言い換えれば、民衆会議とは別途司法機関が並立することはない。
 このことは、『共産論』においても既成の裁判制度に代わる「共産主義的司法制度」という観点から論じたところであるが(拙稿参照)、これを改めて整理し直すと、民衆会議の司法機能は、〈一〉紛争解決〈二〉護民〈三〉弾劾〈四〉法令解釈の四系統に大分類できる。
 ここでは、これら四系統の司法機能が全土及び地方の民衆会議ネットワークにいかに分配・帰属されるかという観点から簡単に見ておきたい。
 まず、司法における最も中核的な紛争解決機能は、地方の広域自治体、すなわち地方圏または準領域圏(連邦型の連合領域圏の場合)の民衆会議に属する。
 それ以外の各司法機能は、それぞれ全土と地方の各圏域民衆会議に帰属・分配されていく。その点、通常は国の最高裁判所が一手に握る法令解釈に関わる司法機能も、民衆会議制度では地方レベルの民衆会議がその権限内の事項については対等に憲章及び法律を制定できることに照応して、各地方レベルの民衆会議にも帰属する機能となる。
 よって、例えばA市の憲章または法律の解釈をめぐる争いは、A市民衆会議の憲章委員会または法理委員会が終審として決定を下すことができるのであって、全土民衆会議に対して上訴するということは、A市の憲章または法律が全土民衆会議憲章に違反していない限り、できない。
 結局、全土民衆会議の司法機能は最小限度のもので、それは基本的に法令解釈に関わる司法機能と護民及び弾劾に関わる司法機能の一部に限局される。

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民衆会議/世界共同体論(連載第17回)

2017-11-30 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第4章 民衆会議の組織各論②

(3)民衆会議の行政機能
 すでに強調してきたように、民衆会議は単なる立法機関ではなく、総合的施政機関である。従って、政府(内閣)機構を持たず、行政機関としての役割もそれ自身が兼ねる。このような民衆会議の行政機能の司令塔的な役割を果たすのが、政務理事会である。
 政務理事会とは、以前先取り的に説明したように、民衆会議の執行部であると同時に、それ自体が内閣のような機能を持つ意思決定機関でもある。しかし、内閣のように立法府から独立した行政機関ではなく、あくまでも民衆会議の内部組織である。
 政務理事会を主宰するのは民衆会議議長であり、別途首相や首長に相当するような主宰職は置かない。民衆会議体制は合議を重視するからである。政務理事会は正副議長のほか、常任委員会及び特別委員会の委員長で構成される。
 政務理事会は法律の委任を受けて政令を制定する権限を持つが、急を要する一定の場合には法律の委任なしに独立命令を制定する権限も持つ。政務理事会はあくまでも民衆会議の内部組織であるため、独立命令も民衆会議自身の政令として民主的な性質を担保されているからである。
 一方、民衆会議が行政機能を適切に果たすには、個別的・専門的な行政執行機関の存在が欠かせない。そこで、民衆会議の下部機関として、各種の行政執行機関が置かれる。それらの機関は、各々該当する常任委員会の監督を受けて活動する。
 なお、政府という機構が廃される民衆会議体制にあっては、行政官庁はすべて法令の適用を本務とする法執行機関であり、政策立案には関わらない。従って、本章(1)で言及した政策調査機関(シンクタンク)も行政官庁ではなく、あくまでも民衆会議の政策立案・立法を補佐する調査機関であるにとどまる。
 地方の民衆会議の場合には、現在の地方自治制度における政庁(役所)が廃される代わりに、住民サービス委員会のような常任委員会の管轄の下に、民衆会議直属の出先サービス機関が地区ごとに配置され、日常的なサービス業務に当たることになる。

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民衆会議/世界共同体論(連載第16回)

2017-11-17 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第4章 民衆会議の組織各論②

(2)民衆会議の立法機能
 民衆会議は総合的施政機関であるため、立法・行政・司法という権力の属性分類自体が本来妥当しないのであるが、それらに相応する「機能」とそれに応じた内部組織は存在する。中でも、立法機能は枢要なものである。委員会は民衆会議の立法機能においても中心を成す内部組織である。
 三権分立下の立法にあっては、議会が立法府と位置づけられながらも、実際には行政府提出法案が大半を占め、議員発案のいわゆる議員立法においてすら、該当行政官庁の手が入っているのが通例である。これに対し、民衆会議体制にあっては政府というものがそもそも存在しないので、当然すべての法案は民衆会議自身が発議することになる。
 具体的には代議員(複数)による発議となるが、委員会総体による発議も認められてよいだろう(なお、具体的な法案発議・審議のプロセスについては、拙稿参照)。民衆会議における法案審議は委員会を中心に行われ、前回言及した政策調査機関や民衆会議図書館は立法に当たっても、補佐の役割を果たす。
 一方、議会ではしばしば最終的な議決の儀式と化している本会議の機能も民衆会議では重視される。ただ、以前指摘したとおり、民衆会議の代議員定数は議会の議員定数よりはるかに多いため、実効的な本会議の開催はいっそう困難になる。
 それでも、総論的な審議の場としての本会議の重要性に鑑み、本会議に出席する代議員団を開催季ごとの輪番制にするなどの工夫も交え、実効的な本会議審議を確保することは可能であり、必要なことでもある。
 また、民衆会議は「半直接的代議制」という独特の理念に基づき、一般有権者が選挙を経ず直接に代議員に抽選されるという構造から、市民提案に対しても開かれている。従って、市民提案に基づく立法化(または政策ガイドライン化)というルートが別途保障される(詳しくは、上記拙稿参照)。

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民衆会議/世界共同体論(連載第15回)

2017-11-16 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第4章 民衆会議の組織各論②

(1)総合的施政機関
 前章でも述べたとおり、民衆会議は単なる立法機関を超えた総合的施政機関である。このことの意味は、古典的な三権分立制を採らないということである。それはしかし、全権独裁を意味するのではなく、特に立法と行政を一体的にとらえることを意味する。
 考えてみれば、立法と行政を分立させることで、官僚制を擁する行政府が少数の議員だけの立法府を凌駕する傾向を生じ、かえって非民主的な官僚支配をきたしているのが、諸国の国家体制の現状である。
 民衆会議体制はこうした官僚支配を打破する体制であるから、立法と行政を分けることをしないのである。その結果として、政策を立法化するということ自体に消極的となる。
 もちろん、法律なしの無法を来たすわけではなく、基幹的政策は立法化される。しかし、法律は必要最小限とし、多くの事柄は政策ガイドラインに委ねられる。政策ガイドラインとは、政策遂行上の指針を定めた一種の規範文書であるが、法律ほどの強い拘束力は持たず、柔軟に運用・改廃できるものである。
 そうした政策ガイドラインの制定が民衆会議の重要な任務となり、その中心を担うのが各常任委員会及び特別委員会である。政策ガイドラインは、民衆会議本会議での可決を必要とする法案とは異なり、委員会レベルでの審議・議決と政務理事会での承認だけで有効に成立する。
 この委員会制度は、議会制度の委員会制度と似ているが、民衆会議制度の委員会は本会議の便宜的な小口分割組織ではなく、政策立案の中核機関としての役割を担うため、いずれもその内部に細目的な問題別に設置される小委員会が設けられ、委員となる代議員は必ずいずれか一つ以上の小委員会に所属する。
 そうした委員会の政策立案・立法活動を補佐するために、常任委員会の下に政策調査機関(シンクタンク)が設置されるほか、民衆会議の活動全般を資料的に支えるため、民衆会議図書館も設置される。

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民衆会議/世界共同体論(連載第14回)

2017-11-03 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第3章 民衆会議の組織各論①

(5)地方民衆会議の組織構制
 民衆会議は地方自治体にも設置される。連合領域圏を構成する準領域圏に設置される民衆会議も広い意味では地方民衆会議の一種であるが、以下の論は、統合型の領域圏における地方民衆会議を前提とする。
 その場合、市町村‐地域圏‐地方圏の三層の地方自治を想定すると、三層それぞれに固有の民衆会議が設置され、それらは互いに対等関係に立つ。
 とはいえ、対等関係で結ばれる民衆会議体制にあって、地方民衆会議の基本的な構制は全土民衆会議の相似形であるので、前回述べたところがほぼ当てはまるが、いくつか地方特有の点がある。
 まず定数に関しては、当然ながら全土民衆会議よりは少ない。しかし、地方でも民衆会議が立法・行政機能を総合的に担うので、最も小さな市町村民衆会議であっても、代議員定数は現行市町村議会議員の定数より多くなることは間違いない。
 広域自治体である地方圏の民衆会議は地方民衆会議の中では最大規模となり、言わば地方における「全土」民衆会議のような位置づけとなるが、域内の市町村・地域圏民衆会議に対する指揮命令権は持たない。
 地方民衆会議も委員会制を採り、常任委員会と特別委員会とから成る。ただ、市町村と地域圏は身近な生活関連問題を扱うことから、委員会よりも全体会議での審議を重視する傾向が見られるであろう。
 なお、市町村民衆会議にあっては、委員会での審議に代議員以外の一般市民の討論参加を認めるなど、直接民主制的な要素を加味した工夫の余地がある。
 地方民衆会議の運営機関も正副議長及び各委員長で構成する政務理事会であり、地方民衆会議議長は自治体首長に相当するような地位に立つ。しかし、あくまでも合議機関の長であり、独任制機関ではない。

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民衆会議/世界共同体論(連載第13回)

2017-11-02 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第3章 民衆会議の組織各論①

(4)全土民衆会議の組織構成
 
すでに見たように、民衆会議は有機的なネットワークの形で機能する統治機関であったが、このうち「中央」に当たる領域圏に置かれるのは全土民衆会議である。連邦的な連合領域圏の場合は、特に連合民衆会議というが、これも広い意味では全土民衆会議に相当する。
 後者の連合民衆会議は、連邦国家における連邦議会のような位置づけを持つ。ただし、民衆会議は一院制機関であり、現存連邦国家において標準となっている二院制形態は採らない。民衆会議は間接的な諸利益媒介機関ではなく、民衆の半直接的な代表機関として、どの圏域においても単一であるべきだからである。
 結果として、連合領域圏を構成する準領域圏の自治権は連邦国家を構成する州邦のそれより強化されることになるだろう。ただし、各準領域圏から抽選される連合民衆会議代議員の定数を同数とするか、人口比例的とするかは連合領域圏の選択に委ねられる。
 通常の統合型全土民衆会議の場合は、日本における国会のような位置づけであるが、単なる立法機関にとどまらず、全権を統括する総合機関であることは、繰り返し述べたとおりである。以下は、さしあたり統合型を念頭に置いて記述するが、連合民衆会議にもほぼ妥当する。
 全土民衆会議は、所定の定数の代議員で構成されるが、その定数は国会よりもはるかに多いものとなる。なぜなら、政府を持たず、従って官僚制度も存在せず、民衆会議が全権を統括するからには、その構成員は多数でなければならないからである。
 具体的な定数の設定は政策的な問題であるが、例えば日本の現行人口規模およそ1億人をとりあえず基準とするなら、最低でも2000人は必要だろう。ちなみに代議員は職業ではなく、無報酬の公務であるので、財政を考慮した定数削減の必要性もない。
 このように大所帯の民衆会議は基本政策ごとに設置される常任委員会と個別の問題ごとに適宜設置される特別委員会を軸に運営される。各委員会の下には、さらに細目的な問題を扱う小委員会が置かれる。この小委員会のレベルでの審議が最も稠密なものとなる。
 民衆会議における委員会制度は、国会の委員会制度と類似する面もあるが、それぞれが所管する政策分野に関する立法・行政機能を併せ持ち、関連する行政機関・法執行機関を直接に監督する。 
 各代議員は最低一つの常任委員会及びその管轄小委員会に所属して活動する。民衆会議の運営に当たる執行部は、正副議長及び各委員会の委員長で構成する政務理事会であり、この機関が民衆会議の運営機関であると同時に、閣議に相当する政策決定機関ともなり、政令の制定権も有する。

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民衆会議/世界共同体論(連載第12回)

2017-10-19 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第3章 民衆会議の組織各論①

(3)民衆会議の基本構制
 民衆会議は全土と地方の各圏域に相似的なネットワークとして設置されることになるため、代議員の選出方法、任期や運営などに係る基本構制はすべての民衆会議で共通している。
 まずその構成員となる代議員は、抽選によって選出される。その際、単純な抽選ではなく、免許制とし、免許を取得した有権者の中から抽選する制限抽選制を採る。
 抽選の場合、選挙とは異なり、選挙区のような地域区分制はなく、全域一区である。従って、全土民衆会議であれば、例えば日本全域から抽選される。ただし、連合型の場合は、連合領域圏を構成する準領域圏ごとに同数または人口に比例した数の代議員が抽選される。
 全域一区を採る場合、選出された代議員の居住地は均一にならないが、民衆会議代議員は居住地の利益代表者ではなく、あくまでも民衆の代表者であるから、地域的な不均一は問題とならないのである。
 また、民衆会議は政党なき民主主義の制度であるから、政党ベースで代議員が選出されることもない。従って、政党の結成自体は禁止されないが、政党としてまとまって代議員を送り込むことは禁止される。
 代議員は任期制であるが、任期は長すぎても短かすぎても適切ではなく、ローテーション制により入れ替えを定期的に行なうことが民主主義に適うので、1期5年程度に固定することが望ましい。連続での再選は認めないが、期間をおいて再選されることはできる(ただし抽選制のため、当選確率は低い)。
 民衆会議の運営は、議長を中心に副議長並びに常任委員会及び特別委員会の委員長で構成する政務理事会が行なう。民衆会議は全権統括機関であるため、内閣や首長部局のような行政機関・部署は独立に設置されず、民衆会議の運営機関である政務理事会が行政機関的な機能も同時に果たす。
 議長及び副議長(複数)は、代議員の中から選出する。常任委員会及び特別委員会の委員長は各委員会で互選する。その際、議会のような会派の結成は事実上の党派政治の形成につながるため禁止され、代議員は個人単位かつ所属委員会ごとに活動する。所属委員会は三つ程度まで兼任してよいものとする。
 なお、民衆会議制は国家なき統治を前提とするため、国家元首はそもそも存在し得ないが、全土/連合民衆会議議長は象徴的に元首的な役割を果たす。同様に、地方自治体にも首長は存在しないが、地方民衆会議議長は象徴的に首長的な役割を果たす。

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民衆会議/世界共同体論(連載第11回)

2017-10-06 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第3章 民衆会議の組織各論①

(2)二つの類型:連合型と統合型
 前回、全土民衆会議と地方民衆会議の完全な対等性について論じたが、もう少し補足的に細かく見ると、両者の関係性にも二つの種別がある。一つは連合型であり、もう一つは統合型である。
 前者の連合型とは、現行の国家制度で言えば連邦制に相応するもので、これは複数の包摂領域圏―準領域圏―が連合して一つの領域圏を形成する型である。この場合、準領域圏は領域圏に準じた相当に広範な自主権を持つことになり、準領域圏民衆会議は地方民衆会議としては最も強力なものとなる。
 それに対して、後者の統合型は領域圏の統合性がより高く、準領域圏は存在せず、領域圏内の広域自治体は地方圏である。地方圏民衆会議も独自の憲章を持つことができるが、連合型における準領域圏ほどに広範な権限は持たず、全土民衆会議の権限が比較的強い。
 ちなみに、統合型を基本としつつも、ある特定の地方圏の民族的・文化的独自性を尊重するため、一般の地方圏よりも強い自治権を保障する特別地方圏のような制度を設けることもできる。
 とはいえ、民衆会議のシステムにおいて、全土民衆会議と地方民衆会議はあくまでも対等関係に立つから、連合型と統合型の相違は、現行国家制度における連邦国家と中央集権国家の相違ほどには大きくなく、その相違は相対的であって、「中央集権型」という類型は存在し得ない。
 また、各領域圏が連合型と統合型いずれの形態を選択するか、また上述した特別地方圏を設置するか否かは、各領域圏民衆会議の討議と議決に委ねられる。さらに、連合型における準領域圏にいかなる権限を与えるか、また連合型における準領域圏及び統合型における地方圏内部の地方自治体の権限関係如何についても、同様である。

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民衆会議/世界共同体論(連載第10回)

2017-10-05 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第3章 民衆会議の組織各論①

(1)全土民衆会議と地方民衆会議
 本章及び次章では、半直接的代議制の制度である民衆会議の具体的な組織構成を見ていく。まず民衆会議の全体的なシステムについて見ると、この制度は議会制度における国会(国民議会)と地方議会のように、全土と各地方に相似形的な会議体―全土民衆会議と地方民衆会議―が置かれる構成を採る。
 ここで留意すべきことは、民衆会議システムは国家という制度を前提とせず、国家に代えて領域圏―究極的には世界共同体に包摂される―と呼ばれる統合的または連合的な政治体を前提とするということである。従って、ここに「全土」とは各領域圏の全域を意味する。
 その点、国会と地方議会とは組織上全く別個の機関であって、相互に連絡関係もないのが通例であるのに対し、全土民衆会議と地方民衆会議とは有機的につながる一つの会議体システムの一環である。従って、両者には活動上の連絡関係がある。
 ただし、全土民衆会議と地方民衆会議の関係は国家を前提とした中央‐地方の上下関係ではなく、完全な対等関係である。従って、全土民衆会議は地方民衆会議に対して指令することはできず、地方民衆会議も全土民衆会議に対して拘束力のある要求をすることはできない。
 地方民衆会議は地方議会と同様に、地方自治体ごとに設置される。地方自治のあり方は民衆会議の組織構成とは別個の問題であるが、筆者はかねてより三層自治を提唱している。すなわち、基礎自治体としての市町村に加えて、中間自治体としての地域圏、広域自治体としての地方圏の三層である(拙稿参照)。
 三層自治で組み立てるとすれば、地方民衆会議も市町村‐地域圏‐地方圏のそれぞれの圏域に設置されることになるが、この三層の民衆会議もまた上下関係ではなく、対等関係で結ばれたネットワークを構成する。
 このようにして、民衆会議は全土と三層の各地方にそれぞれ隈なく設置され、その全体が一つの民衆会議のネットワークとして機能する有機的な統治システムであると言える。
 そして、この民衆会議システム全体の運営規範の位置づけを持つ民衆会議憲章が、実質上憲法に相当する共通規範となるが、地方民衆会議もそれぞれこの共通憲章の範囲内で、自主的に独自の憲章を制定することができる(例えば、X市民衆会議憲章、Y地域圏民衆会議憲章、Z地方圏民衆会議憲章)。

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民衆会議/世界共同体論(連載第9回)

2017-09-22 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第2章 民衆会議の理念

(4)民衆会議とソヴィエトの異同
 前回は民衆会議と議会制を対比して、民衆会議の特質を明らかにしたが、今度は旧ソ連の国名にも冠されていたソヴィエト制との対比という視点からも、民衆会議の特質を示してみたい。
 民衆会議は民衆代表機関たる会議制という点では、ソヴィエト制により近い性格を持っている。ソヴィエト制に関しては、かつて『旧ソ連憲法評注』においても、憲法を通して詳しく見たところであるが、それは本来、議会制を超えた民主的な制度として構想されたものであった。
 ソヴィエトも単なる立法機関ではなく、国家の全権を統括する総合的な統治機関であったところ、ソ連では、周知の通り共産党が指導政党として全権を掌握していたため、本来の機能を果たせば議会より民主的たり得たはずのソヴィエトが共産党の追認機関と化してしまった。
 このような歪みを正すには、一党制であろうと、多党制であろうと、民衆と権力の間に政党が介在する政党政治を排さなければならない。民衆会議はいかなる形態であれ、政党政治と無縁であることを本質とする。前に半直接代的議制と規定したことには、そうした意味も込められている。
 さらに、ソヴィエト制の場合、議会制を超えるといいながら、そのメンバーの代議員は選挙によって選出される形態に落ち着いた。仮に非政党ベースで選挙するにせよ、有権者が意中の人に集団投票する選挙という手法には必ず党派的な要素を帯びてくるので、選挙制を採用すれば、それは議会と類似のものとなるだろう。
 そこで、民衆会議は選挙制でなく、抽選制による。つまり、代議員の選出に偶然性の要素を取り込むことで、党派性の混入を防ぐのである。ただし、代議員の適格性の担保は免許制のような能力証明を通じて行われる。
 また、ソヴィエトは総合的統治機関でありながら、行政府や司法府も別個に組織され、事実上は三権分立制に近い仕組みとなっていたが、民衆会議は行政や司法の機能も民衆会議が統合的に直接担当することを徹底する。
 より究極的には、ソヴィエトがなお国家の制度を前提に国家の最高権力機関と位置づけられていたのに対し、民衆会議は国家を前提としない民衆によるより直接的な統治の機関であることは、決定的な相違点となる。

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民衆会議/世界共同体論(連載第8回)

2017-09-21 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第2章 民衆会議の理念

(3)民衆会議と議会の異同
 民衆会議と議会には共通項も多いが、相違点はそれ以上に多い。そこで、まだ理解が浸透しているとは言い難い民衆会議の実像をより明確にするために、議会制度との異同をまとめておきたい。
 まず、周知のとおり、議会は直接選挙で選ばれたメンバーで構成される代議機関であるが、民衆会議は免許等により適格性を認証された人の中から選ばれたメンバーで構成される代議機関である。
 さらに、議会は法律の制定に関わる立法機関と位置づけられるのが通常である。これはいわゆる三権分立論によって、議会を立法権を担当する府と認識する考えによっている。この点、民衆会議もその中心的な機能が立法にあることは共通である。
 しかし、民衆会議は単なる立法機関ではなく、立法を含む全権を統括する機関である。すなわち、三権分立論にはよっていない。この点で、「独裁」というイメージを持たれる恐れがあるが、全権統括機関であることは直ちに独裁機関であることを意味せず、むしろ民衆代表機関が立法から行政・司法に至る全公権力を司る民主主義の究極的な現れなのである。
 三権分立論は特に行政に全権が集中する君主制を民主化するうえでは意義あるものと言えるが、その結果として、代表機関が立法機関に限定されることは行政・司法の民主的基盤を希薄にしている。それに対し、民衆会議は立法に限らず、行政・司法も掌握することで権力全般の民主化を実現できるのである。
 ちなみに、スイスでは議会制度の下で、議会が行政も掌握する議会統治制と呼ばれる独特の制度を採用している。つまり、スイスの行政府は議会によって選出される参事会という形で組織されるのであるが、司法については別立てとなっている。その点、民衆会議は司法をも掌握する点で、より踏み込んでいる。
 この限りでは、近年の司法改革により最高裁判所の制度が創設される以前の英国で、最高司法権が議会の上院(貴族院)に属していたことと類似するが、身分制時代の遺制である貴族院が非民主的であることと比較し、民衆会議の下に司法が置かれることは、より民主的である。
 以上をまとめれば、民衆会議は立法権を有する限りで議会とも共通するが、三権分立制によらず、全権を統括する点では単なる立法機関を超えた総合的代表機関であるということになる。

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