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続・持続可能的計画経済論(連載第32回)

2022-05-22 | 〆続・持続可能的計画経済論

第3部 持続可能的計画経済への移行過程

第6章 経済移行計画

(3)「経過制」か「特区制」か
 経済体制の移行に際しては、しばしば特定の地域に限り特別な法的地位を与え、他地域とは異なる経済体制を敷く経済特区が設置されることがある。その多くは統制的な経済体制を自由市場経済体制に転換する過程で見られる。これを最も大々的に活用してきたのは中国である。
 このような手法は、一挙に経済体制を移行する場合に陥りがちな経済混乱を緩和するとともに、まずは特区内で地域限定的に試行することで、新経済体制に社会経済を適応させていく意義もある。
 こうした経済特区制は、自由市場経済から持続可能的計画経済に移行するに際しても適用することは理論上可能である。例えば、都市部及び農漁村部の一定地域を「計画経済特区」に指定し、各地域限定的に持続可能的計画経済を先行的に試行するような方策である。
 しかし、特区制はどのような方向性のものであれ、政策的に指定された一定の地域の住民や登録法人に限り特別な経済特権を付与することになる点で、法の前の平等に反する結果となる。
 中でも、持続可能的計画経済は貨幣制度の廃止を本旨とすることからも、特区内に限り貨幣制度を廃止することの不公平さ、さらにはそれに伴う経済混乱も少なからず予想されることからして、特区制によることは適切と思えない。
 持続可能的計画経済への移行に際しては、特区制ではなく、全域一律的なシステム移行を想定するべきであろう。このような手法は「特区制」に対して「経過制」と呼ぶことができる。経過制は、前回も見たような段階を経過して、計画的に経済体制の移行を進めていく手法である。
 ちなみに、「経過制」と対照されるもう一つの手法として「即行制」がある。これは段階を設けることなく、新経済体制に一挙移行するもので、言わばショック療法的な手法である。これも、ソヴィエト連邦解体後のロシアなどで資本主義市場経済体制に移行する際に適用された実例があるが、市民生活を犠牲に供する経済混乱を生んだ。
 その点、貨幣経済の廃止を即行で実施することに伴い予想される混乱は、急激な市場経済化の比では済まないから、このような手法は論外である。結局、綿密な経済移行計画を伴う経過制こそが、持続可能的計画経済への移行を最も円滑に保証することになると考えられる。

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続・持続可能的計画経済論(連載第31回)

2022-05-15 | 〆続・持続可能的計画経済論

第3部 持続可能的計画経済への移行過程

第6章 経済移行計画

(2)経済移行計画の期間
 一般に、経済システムの全般的な移行には一定以上の期間を要する。従って、経済移行計画は数年という年単位の経済計画とは異なり、ある程度長期的な展望に立った工程的計画となることを免れない。
 まして、貨幣経済の究極である資本主義市場経済システムから、人類史的な変革となる貨幣経済の全廃を最終的な到達点とする持続可能的計画経済システムへ移行するには、一時代を要することは間違いない。
 実際にどれほどの期間を要するかを数字的に示すことは困難であるが、一般的に言って、資本主義市場経済の進展度の高さに比例して、経済移行計画には長期間を要することになる。
 従って、資本主義経済発展が遅滞しており、現在の基準では「途上国」に分類される諸国ほど、経済移行の期間は短期で済む。反対に、「先進国」(=資本主義先進国)ほど、持続可能的計画経済との関係では移行に時間を要する「途上国」となる。
 そのように長短差はあれ、経済移行計画のプロセスは、持続可能的計画経済が完全に定着した段階を到達点として、経過期間→初動期間→完成期の三段階に大きく分けることができる。
 最初の経過期間はまさにシステム移行の只中にあり、経済移行計画の中心的な期間である。この時期を性急に進めると経済破綻を来しかねないので、要注意である。特に現代の「文明人」がほぼ無意識のレベルで身体構造化している貨幣制度の廃止を性急に進めることは禁忌である。
 後で改めて検討するように、この段階でいわゆる経済特区制のような地域的試行制度を導入すべきかどうかは一つの問題である。いずれにせよ、この経過期間は経済移行の成否の鍵を握る最重要段階である。
 続く初動期間は、経過期間を経て第一次の経済3か年計画が施行され、持続可能的計画経済が動き出す期間である。この期間はおそらく世界的にはなお持続可能的計画経済への移行が限定的で、資本主義市場経済を維持している諸国も残されている段階であるので、完全にはまだ移行し切れていない。
 一方で、この期間は初動とはいえ、すでに持続可能的計画経済が始動している限りにおいては経済移行計画の期間を過ぎているとも言えるが、如上の事情から、まだ経済移行計画は終了しておらず、計画の延長期間とも言える。
 この初動期間を過ぎて、世界的にも持続可能的計画経済が動き出した時点で完成期に入る。この段階でようやく世界的にもほぼ貨幣経済が廃され、経済移行計画は完全に終了することになる。

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続・持続可能的計画経済論(連載第30回)

2022-04-24 | 〆続・持続可能的計画経済論

第3部 持続可能的計画経済への移行過程

第6章 経済移行計画

(1)総説
 これまで貨幣経済によらない持続可能的な計画経済の詳細を見てきたが、実のところ、最大の難関はそうした計画経済の運営それ自体よりも、貨幣経済を廃して持続可能的計画経済システムに移行する過程にある。
 貨幣経済システムは、従来、資本主義か社会主義かを問わず、当然の前提とされてきたため、人類は貨幣経済そのものを廃止するという経験をまだ持ったことがない。そのため、いかに円滑に貨幣経済を廃止するかということは、まさに人類未踏の課題となる。
 もっとも、貨幣経済の枠組み内で、一つの経済システムを別の経済システムに変更するということであれば、社会主義革命後の社会主義計画経済化の過程、逆に脱社会主義革命後の市場経済化の過程において、いずれも20世紀に少なからぬ諸国が経験している。
 これらのシステム変更はいずれも貨幣経済の枠組み内でのものにすぎないにもかかわらず、その過程では相当な社会経済的混乱と大衆の経済的な困窮をもたらしたことが記憶されている。まして、当然の前提となってきた貨幣経済そのものを廃止するとなれば、どれだけの混乱を生じるかが懸念されても不思議はない。
 古代における貨幣制度の創始から起算するなら、おそらく数千年にわたって連綿と続けられてきた経済システムの変革に踏み込むのであるから、これがまさに人類史的な大変革となることはたしかである。
 そのため、貨幣経済の廃止を理念的に肯定しても、それへの移行プロセスの困難さを考慮すれば反対せざるを得ないという考えもあり得るところである。実際、社会主義革命後のロシアでも、最も急進的な理論家は貨幣経済の廃止を構想したが、それは革命政権の経済政策とはならず、計画経済システムがひとまず完成した後も貨幣経済は存置されたのである。
 そこで、理念にとどまらない現実の経済政策として、貨幣経済を廃止に伴う混乱を可能な限り最小限に抑制しつつ、持続可能的な計画経済システムへ移行するためには、そうした移行過程をそのものを計画化する必要がある。これを「経済移行計画」と呼ぶことにする。言わば、経済移行の工程表である。
 この経済移行計画は経済計画そのものではないが、経済移行の年次的なプロセスを明示的に示すことによって、移行過程にありがちな社会経済の混乱を最小限に抑制することを目的とする一種の規範的な綱領である。

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続・持続可能的計画経済論(連載第29回)

2022-04-03 | 〆続・持続可能的計画経済論

第2部 持続可能的経済計画の過程

第5章 経済計画の細目

(6)製薬計画の特殊な構成及び細目
 薬剤は広義の食品に含まれるが、その特殊な用途から独立の品目として、広域圏の消費計画には含まず、固有の製薬計画に基づき、製造・分配される。薬剤は多くの場合、全世界で普遍的な共通需要を持つため、製薬計画の大元は世界共同体計画である。
 その際、普遍的需要がある基本薬剤と、少数の難病患者向けの特殊薬剤、さらに特定地域に固有の風土病に対応する風土薬剤が区別される。
 基本薬剤と特殊薬剤は世界共同体の薬剤規制機関により有効性と安全性が確証されることを条件に、世界共同体製薬計画に基づき、世界共同体傘下の世界製薬事業機構が製造し、全世界に公平に供給される。
 それに対し、風土薬剤は、その需要がある汎域圏(例えば、汎アフリカ‐南大西洋圏)の供給計画に基づき、世界共同体製薬計画に登載され、製造・供給される。
 また、感染症に対応するワクチンについては、パンデミックやエンデミック等の流行事象が発生したつど、その流行形態に応じた世界共同体の緊急ワクチン計画に基づき、製造・供給される。
 これら世界共同体の認証にかかる薬剤に対し、各領域圏の薬剤規制機関が独自に認証した薬剤については、各領域圏の製薬計画に基づいて、各領域圏の製薬事業機構が製造・供給される。
 その限りで、製薬計画は世界共同体計画と領域圏計画とに二元化される。ただし、領域圏計画に基づいて製造・供給されていた薬剤の有効性と安全性が世界共同体でも認証され、新たに世界共同体製薬計画上の品目に登載される可能性は常にある。
 この領域圏計画としての製薬計画の対象は全薬剤ではなく、医師の処方薬に限定されるとともに、その中でも特に基幹的な薬剤(上掲区分の基本薬剤に相当)に絞られる。その余の薬剤は公的承認審査に基づく製薬企業体による自由生産と供給に委ねられる。

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続・持続可能的計画経済論(連載第28回)

2022-03-13 | 〆続・持続可能的計画経済論

第2部 持続可能的経済計画の過程

第5章 経済計画の細目

(5)広域圏経済計画の構成及び細目
 広域圏経済計画は、領域圏経済計画と連動しながら、主として消費に関わる経済計画である。その意味では、世界経済計画を頂点とする経済計画全体系の中で最も末端の需要に関わる特殊な経済計画である。そのような消費計画の中心を成すのは、日常消費財の供給計画である。
 その点、持続可能的経済計画の消費計画においては、既定された廃棄物の量及び質から逆算的に計測された想定上の需要に対応させて、環境的な持続可能性に適合する量及び質の消費財が計画的に供給されることになる。
 そうした廃棄物の量的質的な制御は全世界的な規準をベースに各領域圏において策定する必要があるため、廃棄物規制規準は、世界経済計画及び領域圏経済計画の中で示され、その規準をベースに広域圏経済計画が策定される。その限りでは、広域圏経済計画は持続可能的経済計画全体系上の三次的な計画を構成する部分である。
 その細目としては、基軸となる基本的な日常食糧品を中心に、現代的生活に欠かせない電化製品、調度品、衛生用品といった基幹的消費財の項目ごとに供給計画が提示される。食糧品の中でも、農水産物は領域圏経済計画中の計画Bと連動しているため、領域圏経済計画によって制約されることになる。
 また、電化製品や調度品の中でも大型で粗大廃棄物となりやすい製品については、リユースによる貸与制によって供給される。貸与品と譲渡品の比率は、廃棄物規準によって算出される。
 さらに、広域圏経済計画には、主として災害非常時を想定した余剰生産に基づく備蓄消費財の供給計画も盛り込まれる。備蓄消費財の供給には廃棄物の量的規定規準が適用されない反面で(質的規準は適用)、平常時にはその放出が禁じられることは当然である。

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続・持続可能的計画経済論(連載第27回)

2022-02-06 | 〆続・持続可能的計画経済論

第2部 持続可能的経済計画の過程

第5章 経済計画の細目

(4)領域圏経済計画の構成及び細目
 領域圏経済計画は世界経済計画を大枠として策定される各領域圏単位での二次的な経済計画であり、持続可能的計画経済全体における核心を成す計画である。
 古典的な経済計画で言えば、各国ごとの中央経済計画に相当するものであるが、世界経済計画に枠づけされている点、策定単位の領域圏は排他的な主権国家ではない点で、古典的な計画経済とは大きく異なることが改めて留意される。
 後者に関連して、領域圏の中でも、複数の領域圏が協働して経済計画を策定することを主要な目的として緩やかに結合する合同領域圏にあっては、経済計画も合同の構成領域圏ごとではなく、合同領域圏単位で策定することになる。
 こうした合同経済計画をも含めた領域圏経済計画の細目は世界経済計画と相似形を成すので、基本的には世界経済計画のそれに沿ったものとなり、エネルギー計画に始まって、生産計画の細目が提示される(計画A)。その細目が地球環境の主要素である大気・土壌・水資源・生物資源のいずれに負荷のかかる業種かにより分類される点も同様である。
 もっとも、エネルギー計画に関しては、自領域圏内で産出できないエネルギー源は世界天然資源機関を通して包括供給を受けることになること、同様に、自領域圏内で生産できない製品に関しては、他領域圏からの輸入供給を受けることになる点で、領域圏経済計画の細目は各領域圏ごとに多様化される。
 また、領域圏経済計画の細目として、農林水産分野の経済計画(計画B)が別枠で策定されることも重要な点である。世界経済計画は地域的な生態系や食習慣の相違により偏差の大きい農林水産分野の計画を含まないため、この分野に関しては、領域圏経済計画が一次的な経済計画となり、農業・林業・漁業の各分野ごとの細目が提示される。
 さらに、経済計画の全体概要の根拠となる環境上の指針を別表として明示することは、世界経済計画の場合と同様である。その指針は基本的に世界経済計画に示された指針の縮約版であるが、世界経済計画上の指針より厳しい指針を設定する場合は詳細に記述する必要がある。
 なお、領域圏経済計画の三本目の柱となる製薬計画(計画C)は薬剤という製品の性質上特殊な構造を持つため、本章の最終節で改めて記述する。

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続・持続可能的計画経済論(連載第26回)

2021-12-26 | 〆続・持続可能的計画経済論

第2部 持続可能的経済計画の過程

第5章 経済計画の細目

(3)世界経済計画の構成及び細目
 持続可能的計画経済の中軸を成す世界経済3か年計画は、世界全体のグローバルな計画として、世界共同体を構成する各領域圏における経済計画の規準となるものである。そのため、それは各領域圏における計画のひな型でもある。
 ただし、世界経済計画は、生産目標というよりも、各領域圏における生産活動の上限を示すキャップのような意義を持つから、その記述は大綱的なものとなる点で、各領域圏経済計画の序論に当たるような計画と考えてよい。
 その構成として、まず冒頭で3か年計画の全体像を示す総論が提示される。これは計画の各細目への導入部であると同時に、3か年計画の要約ともなる部分である。
 続いて、エネルギー計画が提示される。これは、持続可能的計画経済が地球環境の持続可能性を担保するために実施されることを反映して、環境破壊の主因でもあるエネルギーの持続可能な計画供給を実現するための土台となる部分である。世界経済計画においては主要部分と言ってよい項目である。
 その中心点は再生可能エネルギーの供給計画であるが、注意すべきは化石燃料の供給も排除されないことである。化石燃料は供給をおよそ排除するのではなく、再生可能エネルギーの補充として、計画的かつ縮減的に供給されていくことになる。その点で、資本主義経済におけるエネルギー構成とは逆転的である。
 続いて、生産計画の細目である。ここでは、業種別の産業分類によるのではなく、前回も見たように、地球環境の主要素のいずれに負荷のかかる業種かによって分類されることが、持続可能的計画経済の要諦である。
 すなわち、大気負荷産業・土壌負荷産業・水資源負荷産業・生物資源負荷産業といった分類基準となる。複数要素にまたがる包括的な負荷産業は、重複的に分類される。
 この生産計画の細目は世界計画経済の各論に当たる部分である。その策定に当たっては、世界共同体における五つの汎域圏ごとの地域な計画量が考慮されるが、汎域圏同士の分捕り合戦とならないよう、生産計画を汎域圏ごとに分割することはしない。
 なお、世界経済計画の別表として、世界共同体の直轄自治圏(及び信託代行統治域圏)の経済計画が付属する。直轄自治圏(及び信託代行統治域域)は一般の領域圏とは異なり、世界共同体が直轄するため、その経済計画も世界共同体が直接に策定するのである。その内容は、領域圏経済計画に準ずる。
 また、各次世界経済計画にはその全体概要の根拠となる環境上の指針を直接に盛り込むわけではないが、別表として明示することで、根拠を明確にするとともに、事後的な評価及び中途での修正にも対応できるようにする。

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続・持続可能的計画経済論(連載第25回)

2021-05-09 | 〆続・持続可能的計画経済論

第2部 持続可能的経済計画の過程

第5章 経済計画の細目

(2)産業分類と生産目標
 経済計画の策定に当たっては、産業分類とその項目ごとの計画期間における生産目標を数値的に明示することが求められることから、計画の細分化された枠組みとなる産業分類が重要である。
 産業分類と言えば、英国の経済学者コリン・クラークによる第一次から第三次までの産業分類が著名であるが、これは農林水産業を軸とする第一次産業から、工業を軸とする第二次産業を経て、無形的なサービスを軸とする第三次産業への経済発展を説明する道具概念として提唱された。
 クラーク産業分類自体はごく粗い分類であり、計画経済の枠組みとはならないが、持続可能的計画経済にあっては、第一次産業に係る経済計画(生産計画A)は、それ以外の経済計画とは区別されて策定されることになる。
 ちなみに、日本ではクラーク産業分類をベースに、より業種を細分類した標準産業分類が政府により公式に採用されている。これは三次の粗いクラーク分類を廃して、大分類・中分類・小分類・細分類の四段階で下位区分しており、生産活動に関わる全業種を総覧するには有効である。
 しかし、標準産業分類も経済統計上の分類であり、その中には文化関連事業や医療福祉関連事業その他持続可能的経済計画では計画外の自由生産となる業種も含んでいるため、計画経済における枠組みとして直接に使用することはできないが、自由生産領域を含めた経済統計分析においては有効性を持つ。
 これらの産業分類は、まさに分類することそれ自体を目的とした分類であるが、計画経済における産業分類は、より動的に計画生産の具体的目標を明示するうえでの基準となる分類枠組みである。
 その点、ワシリー・レオンチェフによる産業連関表は元来、マルクスが資本の再生産及び流通が円滑に進行していく過程を分析するために考案した再生産表式にヒントを得て新たに考案したものであるが、その使用目的は、現実の生産・流通活動におけるインプット/アウトプットの分析である。
 このようなインプット/アウトプットの予測計算は、各計画期間における生産目標を立てるうえで不可欠のプロセスであるから、産業連関表は持続可能的計画経済においても、大いに活用されることになる。
 もっとも、マルクス再生産表式に由来する生産財製造部門Ⅰと消費財製造部門Ⅱという大分類は、ソ連の経済計画において大きな二部門を分ける際に応用され、部門Ⅰを偏重する工業化が強力に推進されたのであった。
 しかし、われわれの持続可能的計画経済では、生産財部門Ⅰと消費財部門Ⅱのいずれに重点を置くかという発想ではなく、一般消費財に係る経済計画は全土的な一般経済計画からは区別され、地方ごとの消費計画として策定されるのであった。
 また、生産活動全般の動力源となるエネルギーに関しては、エネルギー計画として別途前提的な計画が策定されることになる。
 一般経済計画の策定に際しての細分枠組みとなる産業分類としては、特に環境的な持続可能性に最大の比重を置くことを反映して、大気・土壌・水資源・生物資源のいずれに主たる負荷を加える業種かという観点から分類することが考えられる。
 そうすると、単純に生産物の種類に応じた機械工業、金属工業、化学工業・・・といった分類ではなく、大気負荷産業、土壌負荷産業、水資源負荷産業、生物資源負荷産業といった大分類のもとに整理されることになるだろう。
 その点、目下最大の焦点となる温室効果ガスを生産過程で、またはその生産物が多く排出する業種は大気負荷産業に分類されることになり、これに分類される業種が最も多いであろう。*こうした環境負荷基準に基づく具体的な産業分類を的確に行うには、各業種の生産活動に対する環境科学的な詳細分析を必要とするが、ここではさしあたり立ち入らない。

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続・持続可能的計画経済論(連載第24回)

2021-01-24 | 〆続・持続可能的計画経済論

第2部 持続可能的経済計画の過程

第5章 経済計画の細目

(1)生態学的持続可能性ノルマ
 持続可能的計画経済の出発点は、地球全域での経済計画の策定である。その際、世界経済計画の前提部を成すのは、生態学的持続可能性目標である。この点で、旧ソ連型の経済開発を最優先とする開発計画経済においては、経済計画の前提部に生産ノルマとなる目標値が提示されていたこととは対照的である。
 こうした生態学的持続可能性目標は、単なる環境保護政策の目標ではなく、具体的な各次経済計画の前提的な規準を成すという意味で、各次経済計画全体を規定する規範的な性質を持ったノルマである。従って、生態学的持続可能性は規範的な数値として各次経済計画の冒頭で明示される。
 その具体的な項目構成としては、さしあたり、以下のものが考えられるが、環境科学の研究の進展に応じて、さらに新たな項目が追加されたり、各項目ごとの指標が細分化または精密化されるといった改良的変更が加わる可能性を排除しない。

①気候変動:温室効果ガス排出指標
②オゾン層破壊:オゾン層破壊物質消費指数
③富栄養化:水圏及び土壌への窒素・リン排出量
④酸性化:酸性化物質排出指標
⑤有害物質状態:重金属・有機化合物排出量
⑥都市域大気状態:都市域の硫黄酸化物・窒素酸化物・揮発性有機化合物排出量
⑦水資源:水資源利用強度(採取量/利用可能資源量)
⑧水産資源:漁獲量
⑨森林資源:森林資源利用強度(実伐採量/生産能力)
⑩土壌劣化(浸食/砂漠化):農業への潜在的及び現実的な土地の利用量
⑪各種廃棄物:一般廃棄物、産業廃棄物、有害廃棄物、核廃棄物の各排出量
⑫生物多様性:多様性保護区面積、絶滅危惧種等の生息回復目標個体数

 実際の世界経済計画では、これらの各項目指標の3か年ごとの規範的目標数値が提示されることになる。従って、例えば、気候変動項目に関しても、現行の国際的な目標数値のように、遠大な長期目標として示されるのでなく、向こう3か年ごとの温室効果ガス排出規制目標が規範的に示されることになる。

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続・持続可能的計画経済論(連載第23回)

2021-01-03 | 〆続・持続可能的計画経済論

第2部 持続可能的経済計画の過程

第4章 計画化の時間的・空間的枠組み

(4)領域圏経済計画のスケジューリング
 領域圏における経済計画は計画経済の最前線を成すものであるが、それはかつての旧ソ連における「一国社会主義」における一国単位での経済計画とは異なり、グローバルな世界経済計画を大枠とする支分的な経済計画であるから、その策定スケジュールについても、世界経済計画が優先する。
 そのため、計画期間のサイクルはともに3か年であるが、世界経済3か年計画と領域圏経済3か年計画とでは、3か年の起算点がずれ、領域圏経済計画が後行することになる。
 その場合、領域圏経済計画の策定プロセスは、世界経済3か年計画が世界共同体総会で可決・成立し、発効した時点から始まる。そこから、およそ3乃至4か月程度の期間をかけて、領域圏経済計画を策定し、各領域圏民衆会議で可決・成立のうえ、第1計画年度が開始される。
 そうした一連のスケジュールの具体例として、例えば世界経済計画の発効をわかりやすく1月に設定すると、領域圏経済計画の策定プロセスは同月から始まり、同年4月乃至5月までには可決・成立のうえ、領域圏経済計画の第1計画年度がスタートするといったスケジュールとなる。
 ところで、領域圏経済計画は、一般生産計画(計画A)と農林水産計画(計画B)、製薬計画(計画C)、さらには地方ごとの消費計画をも包含する形で重層的に編成されるわけであるが、全計画の基盤として、エネルギー計画がある。
 エネルギー計画を前提に計画Aが策定され、さらにその余の計画Bや計画C、消費計画は計画Aを基準にして編成される。そのため、実務的な策定作業においては、まずエネルギー計画及び計画Aが優先し、それらに照応して、その余の計画の策定作業が後続する関係にある。
 さらに、地方ごとに編成される消費計画は、領域圏全体に係る計画A及びB、とりわけ消費計画の中で中核を占める食料品の供給との関わりで計画Bと不可分の関係にある。そのため、消費計画は計画Bとほぼ並行的に策定されていくことになろう。
 なお、前回述べたように、連邦型の連合領域圏において、各準領域圏(州)が独自に経済計画を策定する構制を採用した場合は、各準領域圏の経済計画が領域圏(連合)の経済計画のサイクル内に納まらなければならないから、領域圏経済計画と各準領域圏経済計画の策定作業が同時並行で行われる複雑な仕組みとならざるを得ない。

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続・持続可能的経済計画論(連載第22回)

2020-12-27 | 〆続・持続可能的計画経済論

第2部 持続可能的経済計画の過程

第4章 計画化の時間的・空間的枠組み

(3)領域圏経済計画の地理的適用範囲
 全地球的に及ぶ世界経済計画の大枠に基づき、各領域圏ベースで策定される経済計画(領域圏経済計画)は、基本的に領域圏の施政権が及ぶ地理的範囲に適用されることになるが、この場合、領域圏の政治的な構制として、単独の領域圏と複数領域圏の合同から成る合同領域圏とでは、領域圏経済計画の地理的適用範囲が異なる。
 単独の領域圏の場合、領域圏経済計画は当該領域圏の施政権が及ぶ地理的範囲と一致する。ただし、領域圏の構制として、連邦的な連合型と、より集権的な統合型の二類型があり、連合型の場合、連合領域圏を構成する準領域圏(州)ごとに独自の経済計画を策定するかどうかは、各連合領域圏の自主的な判断に委ねられる。
 準領域圏が独自の経済計画を策定する場合、領域圏の計画経済は地方分権化されることになる。このような地理的な分権化の問題点として、各準領域圏ごとの利益配分競争が生じかねないことがある。これは、かつて連邦国家だった旧ソ連の計画経済システムにおいて地方分権化改革が実施された際にも生じた問題である。
 利益配分競争が激化すれば、汚職等の構造要因となるほか、領域圏経済計画の策定スケジュールにも遅れが生じる恐れがある。こうした弊害を回避するには、連合型領域圏でも、経済計画に関しては集権を貫くことが望ましいが、たとえ準領域圏が独自の経済計画を策定するとしても、それは連合全体の経済計画の枠内でのことであるから、準領域圏経済計画は領域圏経済計画の一部を組成することに変わりはない。
 以上に対し、合同領域圏は単独で経済計画を策定するには産業的な基盤が不十分な中小の領域圏が合同し、各領域圏の経済的な特性を生かしつつ、分業の形で合同共通の経済計画を策定することが、その制度的な主旨の一つである。従って、この場合の共通経済計画は、合同を構成する各領域圏のすべてに共通的に適用されることになる。
 ちなみに、より広い大陸的なまとまりから成る汎域圏は経済計画の策定主体とはならず、単に域内での経済協力その他の相互協力の地理的な構成体である。従って、汎域圏内の経済協力自体は域内協定であって経済計画ではないが、領域圏経済計画を補充するものとして、言わば各領域圏経済計画の外延部分を成す。

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続・持続可能的計画経済論(連載第21回)

2020-10-04 | 〆続・持続可能的計画経済論

第2部 持続可能的経済計画の過程

第4章 計画化の時間的・空間的枠組み

(2)計画の全般スケジューリング
 およそ計画経済においては、策定スケジュールの設定とその厳格な履行が健全な経済運営の鍵となる。その点、そうした計画のスケジューリングにおける時間的な枠組みとなるのが、計画のサイクル期間である。持続可能的計画経済であれば、比較的短い3か年であった。
 そして、原初の経済計画となる3か年計画に始まり、後続3か年計画の各サイクルが三年ごとに積み重ねられていくわけであるが、これらの各サイクルは第一次経済計画に始まり、第二次、第三次・・・・というように、序数をもって累積される。
 各次3か年の内部は、第1計画年度・第2計画年度・第3計画年度と区分けされるが、これらは形式的な区分けにすぎず、各計画年度ごとに計画の実施内容が異なるというわけではなく、全体として3年を1サイクルとする計画が組まれるのみである。
 この3か年という1サイクルは、各次計画の実施期間であるので、各次計画の策定は当然、3か年の起点である計画第1年度の開始月より前に着手されていなければならない。その点、世界共同体‐領域圏‐領域圏内広域圏という三層の空間にまたがる持続可能的経済計画においては、これら三層それぞれのスケジューリングが有機的な連関をもって組まれなければ機能しない。
 その際、すべての計画の出発点となる世界経済3か年計画の策定は、その多岐にわたる計量的な作業の負担を考えると、現行計画が終了する1年前(第1次計画の場合は、それが開始する1年前。以下、同じ)には開始する必要がある。
 そして、それをベースとする領域圏経済計画の策定過程のスケジュール的余裕を考慮すれば、このプロセスは遅くとも6か月以内に世界共同体総会の議決をもって完了させる必要がある。
 ここで、世界経済3か年計画の開始月をわかりやすく1月に設定すると、現行計画の第2計画年度が開始する1月に次期計画の策定を開始し、同年度の7月には、次期世界経済計画が完成していることになる。
 ここで完成した世界経済計画をベースとして、各領域圏における経済計画の策定プロセスが開始されていく。このプロセスは、領域圏経済計画(基幹生産計画)と領域内広域圏経済計画(消費計画)の二層から成るが、これを現行計画最終年度の後半6か月の間に完了することになる。

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続・持続可能的計画経済論(連載第20回)

2020-09-13 | 〆続・持続可能的計画経済論

第2部 持続可能的経済計画の過程

第4章 計画化の時間的・空間的枠組み

(1)総説
 計画経済全般について言えることであるが、計画経済の過程には、時間と空間二つの次元がある。時間的次元とは、具体的な計画の及ぶ時間的範囲である。その点、旧ソ連型の経済計画では5か年を標準としていたが、持続可能的計画経済では3か年を標準とする。
 このような計画化の時間的枠組を何年と定めるかについて絶対的な定式はないが、持続可能的計画経済の時間的枠組みを3か年と比較的短期に設定するのは、地球環境の状態という可変的な自然現象の予測を前提とするため、3年を越える中長期的な計画化よりも、比較的短期的な計画化のほうが適していると考えられるからである。
 この計画化の時間的枠組みは、一度決定されれば、原則的に以後も踏襲され、各次計画ごとに変えられるものではない。仮に3か年の時間的枠組みをより長期に変更するのであれば、それは相応の合理的な根拠に基づき、実行されなければならない。(逆に、3か年未満の短期に変更すると、計画化の時間的枠組みとしては窮屈になり、事実上計画としての意義を失う恐れがある。)
 なお、計画期間の経過中に、地球環境予測の修正や予期していなかった災害の発生等により、各次計画の内容を一部変更することは、計画化の時間的枠組みの修正とは異なり、適宜認められる。
 以上に対して、計画化の空間的枠組みとは、どの圏域で経済計画が策定されるかという問題である。計画化の地理的範囲と言い換えることもできる。その点、旧ソ連型経済計画は一つの主権国家を空間的枠組みとしていたが、持続可能的経済計画は世界共同体‐領域圏‐領域圏内広域圏という三つの空間に重層的に及ぶ。
 この三つの空間的枠組みは完全に対等ではなく、世界共同体における世界経済計画が地球全域をカバーする上限枠(=キャップ)としての役割を持ち、その範囲内での割り当て枠(=クウォータ)として領域圏経済計画が機能する。
 領域圏内広域圏の経済計画は専ら消費に関わる計画であり、領域圏経済計画の消費部門としての意義を持つ。これは旧ソ連における計画経済の改革策として試行された「計画の地方分権化」とは異なり、そもそもの計画化の構造として組み込まれた機能的分化である。

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続・持続可能的計画経済論(連載第19回)

2020-08-01 | 〆続・持続可能的計画経済論

第1部 持続可能的計画経済の諸原理

第3章 計画組織論

(5)地方経済計画の関連組織
 ここで言う地方とは、統合型領域圏と連合型領域圏とでは、意味するところが異なる。前者の場合は広域の地方圏を指すが、後者では連合を構成する準領域圏を指すことになる。
 このうち、準領域圏はその名称のごとく、領域圏に準じた自己完結性を持つ公共団体であるから、まさに領域圏に準じて独自の経済計画(生産計画)を策定する権限を持つことが許されるのではないかという議論があり得る。
 これについて、現時点で定見を提出することはできないが、連合領域圏の場合は、領域圏全体の経済計画の策定に関わる経済計画会議に各準領域圏の経済代表者の参加を認めることは、最低限必要とされるであろう。
 一方、統合型にせよ、連合型にせよ、地方における経済計画の中心は消費計画である。消費計画は、地産地消を目標として策定される消費に限定された経済計画であり、その策定組織は地方ごとに設立される消費事業組合である。
 消費事業組合は、それ自身が日常必需品の供給組織であると同時に、消費計画策定機関でもある。また、地方における末端消費も領域圏全体の経済計画と無関係ではあり得ない以上、消費事業組合は領域圏経済計画会議に代表部を置き、領域圏経済計画の策定にもオブザーバー関与することが認められる。
 消費事業組合は多数の物品生産企業体を提携組織として擁するが、これらの企業体の多くは基本的に計画経済の適用外となる自主管理企業(生産協同組合)である。これらの企業体は消費計画の策定に直接関与することはないが、消費計画の範囲内で独自の企業内生産計画を立てて生産する。
 ちなみに、消費事業組合が供給する物品の相当部分を食品が占めるので、食品の素材となる農産品や水産品の生産に関わる農業生産機構や水産機構も、消費計画に関しては、重要な当事者となる。具体的には、それら機構の地方事業所が消費事業組合の法人組合員を兼ねることにより、消費計画に関与する。
 つまり、農業生産機構や水産機構は、その機構全体として領域圏経済計画に関わると同時に、地方事業所のレベルでは地方の消費計画に関わるという形で、二重に経済計画に関わることになる。
 さらに、消費計画は地方の民衆会議(統合型では地方圏民衆会議、連合型では準領域圏民衆会議)に提出され、審議・議決を経て発効する点では、領域圏経済計画の場合と同様の構制となる。
 その点、消費事業組合は管轄地方の住民全員を自動的組合員としつつ、代議制によって運営される会議体であり(拙稿)、それ自体が地方における下院的な意義を持つと言える。

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続・持続可能的計画経済論(連載第18回)

2020-07-31 | 〆続・持続可能的計画経済論

第1部 持続可能的計画経済の諸原理

第3章 計画組織論

(4)領域圏計画経済の関連組織
 持続可能的計画経済の最前線となるのは、世界共同体の構成主体である領域圏である。各領域圏は通常、単立し、それぞれが世界経済計画の枠内で独自に経済計画を策定・運用していく経済計画主体ともなる。
 ただし、小規模な領域圏の場合は、単独で計画経済を運営するだけの経済基盤を持たないことが多い。そこで、こうした小規模領域圏は近隣の同規模領域圏またはより大きな領域圏と合同を結成し、合同領域圏という単位で計画経済を運用する。合同領域圏の主たる役割は、こうした共通経済計画の運用という点にある。
  これら領域圏経済計画は世界経済計画における汎域圏の地域計画をベースとして汎域圏内での経済協調を考慮しつつ策定されるところ、そうした汎域圏内経済協調の実務を担うのが五つの汎域圏の経済協調会議である。同会議は汎域圏内で経済協調の対象分野を担う生産企業体の代表者で構成され、汎域圏内の経済協調協定を締結したうえ、汎域圏民衆会議の承認・議決を得る。
 汎域圏経済協調協定に続いて、各領域圏経済計画の策定に進むが、単立、合同いずれの形態であれ、領域圏経済計画の策定機関となるのが、経済計画会議である。これは、旧ソ連の計画経済における中枢機関であった国家計画委員会のような行政機関ではなく、計画経済の適用対象となる生産企業体の共同運営による合議機関である。
 その構制は各生産企業体の計画担当役員を議員とする会議体であり、これに会議を実務的に支える事務局が付属する。会議は、一般、農林水産、製薬の三種類の計画に沿って一般産業部会と農林水産部会、製薬部会が分岐する三部会制であるが、これに消費計画の策定単位となる地方圏(または準領域圏)の消費事業組合の代表部もオブザーバー部会として設置される。
 三部会のうち一般産業部会の内部は、経済計画の基礎となる産業連関表の産業分類におおむね沿った専門部会に分かれ、それぞれ討議のうえで部会ごとの計画案を策定する。農林水産部会も同様に専門部会に分かれるが、製薬部会はそれ自体が専門部会を兼ねる。
 なお、経済計画の前提部分を成すエネルギー計画に関しては、経済計画会議の下部機関として、製油や電力等のエネルギー関連事業体で構成するエネルギー計画協議会が設置され、同協議会が発議するエネルギー計画案について、経済計画会議で審議・議決を行う。
 一方、領域圏の施政に関わる民衆会議も経済計画の策定にノータッチではないが、民衆会議が主導することはない。民衆会議の役割は、経済計画会議が議決した計画を改めて審議し、承認することである。その点、民衆会議と経済計画会議の関係性は、ある種の上院(≒民衆会議)と下院(≒経済計画会議)の関係に相当すると言える。ただし、民衆会議は計画を全面的に否決することはできず、できるのは一部不承認、差戻しのみである。
 なお、合同領域圏単位での経済計画の場合は、合同領域圏に民衆会議が設置されない代わりに、合同の政策協議会が計画の承認権を有することになる。この限りで、政策協議会が単立領域圏における民衆会議に相当する役割を果たす

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