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ザ・コミュニスト

連載論文&時評ブログ 

世界共同体憲章試案(連載第12回)

2019-10-26 | 〆世界共同体憲章試案

〈計画の発効及び実施〉

【第33条】

1.総会は、世界経済計画を可決した後、直ちにこれを汎域圏全権代表者会議に送付しなければならない。送付を受けた全権代表者会議は、三日以内に発効のための署名をしなければならない。

2.汎域圏代表会議が署名した世界経済計画は、署名した日の翌日に発効する。

[注釈]  
 世界経済計画は、総会による可決後、世界共同体執行機関の位置にある全権代表者会議の署名を得て、初めて正式に発効する。全権代表者会議は、この段階で署名を拒否することはできないため、署名は形式的な認証手続きである。

【第34条】

1.各汎域圏常任全権代表は、当該汎域圏に包摂される全領域圏に対し、発効した世界経済計画を実施する指令を発する。

2.世界共同体構成領域圏は、世界経済計画を準則的な指針として、各々の経済計画を策定しなければならない。

[注釈]  
 正式に発効した世界経済計画は、条約そのものではないが、単なる目標でもなく、全権代表者会議を構成する五人の常任全権代表の指令に基づく規範性を持った準則的な指針として構成領域圏を拘束する。よって、各構成領域圏は、世界経済計画に沿って各自の経済計画を策定しなければならない。

【第35条】

1.世界共同体構成領域圏は経済計画の策定に際し、世界経済計画機関の専門家委員会に対し、見解を求めることができる。

2.前項の規定に基づく専門家委員会の見解の提示は、公式文書をもって行なわなければならない。

[注釈]  
 世界経済計画機関は各領域圏の経済計画の策定に直接的に関与・干渉することはないが、見解の照会に対し公式文書をもって回答することを通じて、間接的に関与する。この見解は、言わば施行中の経済計画に関する世界経済機関による公式の解釈を示すものである。

【第36条】

1.世界経済計画機関は、三か年計画の二年次が終了した後、計画の実施状況を監査し、六か月以内にその結果を持続可能性理事会に報告しなければならない。

2.世界経済計画機関は、前項の目的を達成するため、監査委員会を設置する。

3.監査委員会は、監査を実施するのに必要と認める場合、各世界共同体構成領域圏の経済計画の実施状況を調査することができる。各構成領域圏は、この調査に協力しなければならない。

[注釈]  
 本条は、三か年計画の二年次終了時点における中間監査に関する規定である。これは過去二年間の計画実施状況を監査し、次期計画の策定にこれを生かす趣旨である。

【第37条】

1.世界経済計画機関は、三か年計画が終了した後、計画の実施状況を監査し、一年以内にその結果を持続可能性理事会に報告し、かつ公開しなければならない。

2.前条第2項及び第3項の規定は、前項の監査についても、これを準用する。

[注釈]  
 本条は、三か年計画の終了後の監査に関する規定である。公開の必要のない前条の中間監査に対し、終了した前次計画の実施状況の事後監査を通じた結果の正確な情報公開に意義がある。

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世界共同体憲章試案(連載第11回)

2019-10-25 | 〆世界共同体憲章試案

第8章 世界経済計画

〈世界経済計画機関〉

【第29条】

1.世界共同体は、生態学的な持続可能性を保障する地球規模での経済計画を策定するため、世界経済計画機関を設置する。

2.世界経済計画機関は、基幹的な各産業部門の世界組織の代表者及び汎域圏経済協調会議事務局長並びにその他所定の評議員で構成される上級評議会によって運営される。

3.上級評議会による機関運営を専門的に補助する内部組織として、専門家委員会を設置する。

[注釈]  
 世界共同体は、生態学的な持続可能性の保障を最大任務とする民際機構として、地球規模の経済計画を策定・運用する。その中核的機関となるのが、世界経済計画機関である。この機関は、官僚制行政機関ではなく、基幹産業部門の世界組織を主体とする合議制機関である。第2項の条約とは、本憲章とは別途定められる世界経済計画機関設置規程を指す。

【第30条】

1.世界経済計画機関は、世界経済計画の枠内で直轄自治圏の経済計画を立案するため、下部機関として、各直轄自治圏の代表者によって構成される直轄自治圏経済計画委員会を設置する。

2.直轄自治圏経済計画委員会は、直轄自治圏の経済計画の策定に当たり、専門家委員会に準じた地位及び権限を有する。

3.前二条の規定は、信託代行統治域圏の経済計画に準用する。

[注釈]  
 直轄自治圏はいずれも小規模な領域であり、各自個別に経済計画を立案することが困難であることから、世界経済計画機関が、直轄自治圏経済計画委員会を通じて直接に経済計画を立案する。なお、信託代行統治域圏も、信託統治が継続する間、世界強度体の直轄下に置かれるから、経済計画の立案も直轄自治圏に準ずる。

〈計画の策定及び議決〉

【第31条】

1.世界経済計画機関は、三年に一度、世界経済計画を策定する。この策定作業は、現行計画が終了する一年前に着手する。

2.世界経済計画は、世界的な環境予測を基本としながら、世界における需要と供給の見通しを考慮した世界的な生産の量的計画と生態学的な持続可能性を維持するに有益な生産方法の規制から成る全体計画と、各汎域圏ごとの環境状況及び人口を参酌した需要と供給の見通しを考慮した生産計画を定める地域計画の二部で構成される。

3.世界経済計画機関上級評議会は、専門家委員会が作成した計画草案を討議したうえ、正式の計画案を議決する。

4.上級評議会の議決は、出席した評議員の過半数の賛成による。

5.上級評議会が草案を否決する場合は、意見を付して専門家委員会に差し戻さなければならない。差し戻しを受けた専門家委員会は、直ちに修正案を作成し、上級評議会に提出しなければならない。

[注釈]  
 世界経済計画の策定に関する規定である。世界経済計画案は、三か年計画を基本とし、世界経済全体の計画案である全体計画と、全体計画の範囲内で五つの汎域圏ごとの個別的な計画案である地域計画の二部構成とする。直接的には、地域計画が各領域圏の経済計画の指針となる。

【第32条】

1.世界経済計画機関は、策定した計画案を七日以内に汎域圏全権代表者会議に提出し、その承認を受けなければならない。

2.全権代表者会議は、計画案を承認した後、三日以内に持続可能性理事会に送付しなければならない。

3.全権代表者会議は、計画案を承認しない場合、理由を付して世界経済計画機関に差し戻さなければならない。差し戻しを受けた世界経済計画機関は、直ちに計画の修正案を提出しなければならない。その手続きは、前二条の定めるところによる。

4.持続可能性理事会は、送付された計画案について、他の案件に先立って審議し、決定しなければならない。持続可能性理事会は、決定に際し、その職権により、計画案を修正することができる。

5.持続可能性理事会は、前項の規定によって決定した計画案を直ちに総会に提出し、議決を求めなければならない。

6.総会は計画案の修正を求めることができる。この場合、世界経済計画機関は、迅速に修正案を策定しなければならない。その後の手続きは、前五条の規定による。

[注釈]  
 世界経済計画機関が策定した計画案の民主的な議決手続きを定める規定である。図式的にまとめれば、全権代表者会議の承認→持続可能性理事会の決定→総会の可決という順になる。持続可能性理事会が可決した計画案の迅速な成立を保証するため、総会は計画案を全面的に否決することはできないが、修正を求めることはできる。

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世界共同体憲章試案(連載第10回)

2019-10-12 | 〆世界共同体憲章試案

〈表決〉

【第24条】

1.持続可能性理事会の各理事領域圏は、一個の投票権を有する。

2.理事会の決定は、出席しかつ投票する理事領域圏の過半数によって行われる。可否同数の場合は、汎域圏全権代表者会議の決定に委任する。

3.理事会は、決定の前に、オブザーバー領域圏からの意見を徴さなければならない。

[注釈]  
 表決の方法に関する基本規定である。理事領域圏は、第20条の規定により偶数の50であるから、可否同数の場合があり得るところ、最終決定は世界共同体執行部である全権代表者会議に委ねる。

〈手続〉

【第25条】

1.持続可能性理事会は、継続して任務を行うことができるように組織する。

2.持続可能性理事会は、定期会議を開く。この会議においては、各理事領域圏は、希望する場合、専門技術的知見を有する特別に指名された代表者を出席させることができる。

3.理事会は、定期会議を開くほか、規則に従い、必要な場合に会合することができる。この規則は、理事領域圏の過半数の要請または汎域圏全権代表者会議の要請による会議の招集の規定を含まなければならない。

[注釈]
持続可能性理事会は世界共同体理事会中でも中核を成すことに鑑み、理事会の活動の続性性とともに、理事領域圏が総会代議員に加え、専門技術的な知見を擁する他の特別代表者を定期会議に出席させる権利を認める規定である。

【第26条】

1.持続可能性理事会の議長は、理事領域圏の中から、一年の任期で、抽選によって選出する。

2.理事会は議事に関する手続規則を採択する。

[注釈]
 持続可能性理事会の議長選出や議事に関する自律権に関する規定である。理事会の重要性に鑑み、定期会合制を採る。

【第27条】

持続可能性理事会は、自己の任務の遂行に必要な補助機関または下部組織を設けることができる。

[注釈]
 理事会から一定独立した専門機関に対し、理事会に直属する補助機関または下部組織に関する規定である。

【第28条】

1.持続可能性理事会は、その権限内にある事項に関係のある民間団体と協議するために、適正な取極を行うことができる。この取極は、民際団体との間に、また、必要な場合には、関係のある世界共同体構成領域圏と協議した後に当該領域圏内の民間団体との間に行うことができる。

2.前項の取極に当たっては、当該団体の目的や組織運営が世界共同体の目的及び活動と相容れることを条件とする。

3.理事会は、取極を交わした民間団体が違法または不当な活動に関与したと認識したときは、当該団体に弁明の機会を与えたうえで、取極を解消することができる。

[注釈]
 持続可能性理事会は、民間の環境団体や経済援助団体、人道団体等の協力を必要とする場合が少なくないため、信頼のおける団体と提携することがある。そうした提携民間団体に関する規定である。

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世界共同体憲章試案(連載第9回)

2019-10-11 | 〆世界共同体憲章試案

第7章 持続可能性理事会

〈構成〉

【第20条】

1.持続可能性理事会は、総会で抽選された30の世界共同体構成領域圏及び直轄自治圏で構成する。

2.理事会の理事領域圏は、三年の任期で抽選される。退任する理事領域圏は、引き続いて抽選される資格はない。

3.理事会の各理事領域圏は、総会代議員をもってその代表者とする。総会代議員に支障があるときは、その代理者をもって代表させることができる。

4.直轄自治圏は、直轄自治圏特別代表またはその代理者をもって理事会の代表者とする。この場合、第2項の規定は適用しない。

5.理事でない世界共同体構成領域圏は、理事会に各一名のオブザーバーを送ることができる。

[注釈]
 持続可能性理事会は、生態学的な持続可能性の保障を最大任務とする世界共同体にあって、地球規模での環境保全及び経済計画を統括的に監督する主要機関として、世界共同体機関中でも最重要のものである。この点、第二次大戦の事後処理機構である国際連合が軍事的な安全保障理事会を最重要機関として擁するのとは、大きく異なる。
 理事会の理事任期は、経済三か年計画に合わせて、三年任期とする。連続再任は禁止し、抽選によるローテーションを徹底する。直轄自治圏は、直轄の性質上、常任理事となる。

〈任務及び権限〉

【第21条】

1.持続可能性理事会は、世界経済計画機関が策定し、汎域圏全権代表者会議が発議した世界経済計画案を審議し、議決する。

2.理事会は、その権限に属する事項について、総会に提出するための条約案を提出することができる。

3.理事会は、世界共同体が定める規則に従って、その権限に属する事項について、専門家会議を招集することができる。

[注釈]
 持続可能性理事会の最大任務は、世界経済計画案の審議と議決であるが、それ以外にも、環境及び経済に関わる条約案の策定、専門家会議の招集など広範な権限を有する。

【第22条】

1.持続可能性理事会は、世界経済計画機関、食糧農業機関及び天然資源機関並びに世界環境計画その他の管轄専門機関の活動を監督し、定期報告を受ける。

2.理事会は、専門機関から定期報告を受けるために、適当な措置をとることができる。理事会は、理事会の勧告と理事会の権限に属する事項に関する総会の勧告とを実施するためにとられた措置について報告を受けるため、世界共同体構成領域圏及び専門機関と取極を行うことができる。

3.理事会は、前記の報告に関するその意見を総会に通報することができる。

[注釈]
 持続可能性理事会は、世界経済計画のほか、経済計画とも密接に関連する食糧農業や天然資源の民際管理、さらには経済計画の基礎ともなる環境保全に関しても、各専門機関の監督を通じて関与する。

【第23条】

1.持続可能性理事会は、他の理事会に情報を提供することができる。また、他の理事会から要請があったときは、これを援助しなければならない。

2.理事会は、総会の勧告の履行に関して、自己の権限に属する任務を遂行しなければならない。

3.理事会は、世界共同体構成領域圏の要請があったとき、または専門機関の要請があったときは、総会の承認を得て役務を提供することができる。

4.理事会は、この憲章の他の箇所に定められ、または総会によって自己に与えられるその他の任務を遂行しなければならない。

[注釈]
 主として持続可能性理事会の他の主要機関等との関係性を定めた条項である。

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世界共同体憲章試案(連載第8回)

2019-09-29 | 〆世界共同体憲章試案

第6章 汎域圏全権代表者会議

〈構成〉

【第17条】

汎域圏全権代表者会議(以下、全権代表者会議という)は、世界共同体を構成する五つの汎域圏における民衆会議が選出した常任全権代表によって構成する。

[注釈]  
 汎域圏は世界共同体の構成主体の一つではあるが、総会には直接参加することなく、全権代表者会議を通じて世共の執行部を構成する。

〈任務及び権限〉

【第18条】

1.全権代表者会議は、総会の付託を受け、その決議事項を迅速に遂行する権限及び義務を有する。

2.全権代表者会議は、その権限に属するすべての事項について、総会に対して発議することができる。

3.前二項のほか、全権代表者会議の権限及び義務は、この憲章でこれを定める。

[注釈]  
 全権代表者会議は、総会決議事項をそれぞれが代表する汎域圏内の全領域圏に指令することを通じて執行機関としての任務を果たす。そうした消極的な任務に加え、総会に対する発議権を通じて積極的な政策提案をする任務も有する。

〈会合及び決定〉

【第19条】

1.全権代表者会議は、総会の会期中は、毎週一回定期的に会合する。

2.全権代表者会議は、総会の会期中か会期外かを問わず、必要に応じて臨時に会合することができる。臨時の会合は、全権代表者会議の構成員のいずれか一人または総会構成領域圏の過半数の要請によって招集される。

3.全権代表者会議の決定は、五人全員が出席し、かつ少なくとも四人以上の多数決をもってこれを行なう。ただし、三人の賛成があった案件は、改めて三か月の期間をおいて採決にかけるものとする。

[注釈]  
 全権代表者会議は合議体であるから、すべての案件を合議して決定する。しかし、決定法は総会と異なり、単純多数決ではなく、四人以上の賛成という厳格な特別多数決によることを原則とする。ただし、三対二の僅差の場合は、同一の案件を半年後に再度採決に付して最終決定とする。

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世界共同体憲章試案(連載第7回)

2019-09-28 | 〆世界共同体憲章試案

〈表決〉

【第13条】

1.各構成領域圏は、総会において、各々一個の投票権を有する。

2.総会における投票は各構成領域圏が独立した判断に基づいて行ない、汎域圏その他の地域的なブロックごとに行なってはならない。そのために、総会議場における各構成領域圏代議員の着席順は、会期ごとに抽選により決するものとする。

3.総会の決定は、出席し、かつ投票した領域圏の過半数によって行なわれる。ただし、構成領域圏の権利及び特権の停止並びにこの憲章の改正の決定については、三分の二の多数によって行なわれる。

4.可否同数の場合は、全権代表者会議の決定に付託するものとする。

[注釈]
 総会の表決は、構成領域圏の平等な一票によって決せられる。その際、投票は各領域圏が独自に行ない、地域ブロックごとに意志統一して行なうことは禁じられ、それを保証するために、代議員の着席も会期ごとの抽選制とする。平等な一票制を堅持する趣旨からである。
 総会決議の成立要件は原則として単純多数決によるが、例外として構成領域圏の資格停止と憲章の改正については、三分の二の特別多数決による。

〈手続〉

【第14条】

総会は、年に二回の通常会期として、また、必要がある場合に、特別会期として会合する。特別会期は、各理事会の要請または世界共同体構成領域圏の三分の一以上の要請があったとき、全権代表者会議がこれを招集する。

[注釈]
 世界共同体総会は、原則として毎年二回通常会期を開催する。この点は、年末に一回だけの国際連合総会との相違である。

【第15条】

1.総会は、その手続規則を採択する。総会議長及び副議長は、各構成領域圏の代議員の中から、会期ごとに抽選によって選出する。総会議長を擁する構成領域圏は、副議長の抽選に参加することはできない。

2.総会議長及び副議長は、総会における投票権を有しない。この場合、総会議長または副議長を擁する構成領域圏は、代理の代議員を通じて投票する。

[注釈]
 総会の正副議長は、抽選で選出する。世界共同体総会は、それ自身も民衆会議として抽選制度を取り入れる。

【第16条】

総会は、その任務の遂行に必要と認める補助機関を設けることができる。

[注釈]
 最も重要な補助機関は常設の事務局であるが、それ以外にも、総会は必要に応じて常設または臨時の補助機関を設けることができる。

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世界共同体憲章試案(連載第6回)

2019-09-27 | 〆世界共同体憲章試案

第5章 総会

〈構成〉

【第9条】

1.世界共同体の総会は、世界民衆会議がこれを兼ねる。

2.総会は、世界共同体を構成するすべての領域圏及び直轄自治圏でこれを構成する。

[注釈]
 世界共同体総会は、単なる外交機関ではなく、それ自体が民衆会議ネットワークに組み込まれた民衆代表機関である。

【第10条】

1.各領域圏は、総会において、領域圏民衆会議によって選出された一人の代議員を有するものとする。

2.合同領域圏は、合同全体で会期ごとの輪番制による一人の代議員を有するものとする。ただし、加盟領域圏の数が8以上の合同領域圏は、各々異なる領域圏から選出された二人の代議員を有するものとする。

3.合同領域圏の加盟領域圏のうち、代議員を有しない合同構成領域圏は、各一人の副代議員を有するものとする。副代議員は、総会において議決権を有しないが、討議に参加し、意見を述べることができる。

4.直轄自治圏は、総会がすべての直轄自治圏民衆会議の同意を得て選任する一人の直轄自治圏特別代表を通じて総会に参加するものとする。この場合、各直轄自治圏は総会に各一人のオブザーバーを派遣することができる。

[注釈]
 世界共同体において、各領域圏は各一人の代議員によって代表されることが原則である。ただし、合同領域圏では合同全体で一人の代議員が代表するが、8以上の領域圏から成る大合同の場合はこの限りでない。また、直轄自治圏はすべての直轄自治圏を束ねる直轄自治圏特別代表を通じて参加するが、オブザーバーを通じて特別代表を牽制することができる。

〈任務及び権限〉

【第11条】

1.総会は、この憲章の範囲内にある問題若しくは事項またはこの憲章に規定する機関の権限及び任務に関する問題若しくは事項を討議し、構成領域圏及び直轄圏に対して拘束力のある議決を行なう最高機関である。

2.総会は、世界共同体のすべての機関から年次報告及び特別報告を受け、必要に応じて、これを審議する。

[注釈]
 総会は、世界共同体における最高議決機関であり、その議決は全構成主体を拘束する。この点は、主権国家の連合にすぎず、加盟国の主権に対し常に譲歩を迫られる国際連合とは大きな相違点となる。

【第12条】

総会は、汎域圏全権代表者会議から発議された案件については、優先的にこれを審議しなければならない。

[注釈]
 汎域圏全権代表者会議は世界共同体の執行機関として総会の決議を遂行する義務を有するとともに、総会に対して政策的な発議をすることができるが、この発議案件は、その重要性に鑑み、他の案件に先立って優先審議する義務を生じる。

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世界共同体憲章試案(連載第5回)

2019-09-14 | 〆世界共同体憲章試案

第4章 機関

【第7条】

1.世界共同体の中核機関として、総会を設ける。

2.世界共同体の主要機関として、汎域圏全権代表者会議、持続可能性理事会、平和理事会、司法理事会、社会文化理事会、人権査察院、憲章理事会を設ける。

3.事務局その他必要と認められる常設または臨時の補助機関は、この憲章に従い、総会の決議に基づいて設けることができる。

[注釈]  
 世界共同体は中核機関としての総会のほか、第2項掲記の七つの主要機関を軸に構成される。現行国際連合と類似した構成だが、大きく異なる点は―
 五つの汎域圏の常任全権代表で構成される汎域圏全権代表者会議が世界共同体の執行部たる主要機関として位置づけられること、事務局が主要機関から補助機関に格下げされること(第2項)、基本的人権の擁護に当たる司法機関としての人権査察院が独立した主要機関として格上げされること、憲章の有権解釈権を持つ憲章理事会が設置されることである。  
 また、第二次世界大戦の事後処理から生まれた旧連合国主導の国連において主要機関中でも格別の中心的位置を占めている安全保障理事会は、恒久平和を理念とする世共では平和理事会に置き換わる。

【第8条】

世界共同体は、そのすべての機関に、人々が性別または性的指向もしくは障碍の有無を問わず、いかなる地位にも平等の条件で参加する資格があることについて、いかなる制限も設けてはならず、かつ、そのような制限を結果する慣習については、これを除去しなければならない。

[注釈]
 世界共同体の諸機関への参加条件として、性別や性的指向、障碍による制度上慣習上の障壁を撤廃する規定である。これにより、世界共同体諸機関を異性愛男性健常者が独占するメンバー構成とならないことを抑止することが目的である。

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世界共同体憲章試案(連載第4回)

2019-09-14 | 〆世界共同体憲章試案

第3章 原則及び構成領域圏等の地位

【第3条】

1.この機構及びその構成領域圏は、第1条の目的を達成するに当たっては、次の原則に従って行動しなければならない。

① この機構は、その構成領域圏間の地位の平等原則に基礎をおいている。
② すべての構成領域圏は、領域圏の地位から生ずる権利及び利益を構成領域圏のすべてに保障するために、この憲章に従って負っている義務を誠実に履行しなければならない。
③ すべての構成領域圏は、世界共同体がこの憲章に従ってとるいかなる行動についても世界共同体にあらゆる援助を与え、かつ、世界共同体の防止行動または強制行動の対象となっているいかなる領域圏に対しても援助の供与を慎まなければならない。
④ 各構成領域圏は、この憲章に反しない限り、その内政管轄事項に関しては、自主決定権を有する。

2.第1項各号の規定は、第4号を除き、汎域圏についても、これを準用する。

3.汎域圏は、地域ブロックとして、相互に競争的な関係に立ってはならない。

4.第1項各号の規定は、直轄自治圏についても、これを準用する。

[注釈]  
 本条は世界共同体とその構成領域圏及び汎域圏、直轄自治圏に適用される行動原則を列記したものである。これらの原則を遵守することにより、各圏域が対等な地位に立ちつつ、総体として世界共同体を運営していくことができる。

【第4条】

1.世界共同体における構成領域圏の地位は、この憲章に掲げる義務を受託し、かつ、この機構により所定の義務を履行する能力及び意思があると認められるすべての領域統治体に開放されている。

2.前項の領域統治体が世界共同体構成領域圏となることの承認は、汎域圏全権代表者会議(以下、「全権代表者会議」という)の勧告に基づいて、世界民衆会議‐世界共同体総会(以下、「総会」という)の決議によって行なわれる。

3.前二項の規定は、直轄自治圏についても、これを準用する。

[注釈]  
 世界共同体の構成領域圏または直轄自治圏の設定は、一定の領域を実効統治する領域統治体の申請に基づいて、世共による事前審査、全権代表者会議の勧告、総会の承認決議というプロセスを通じて行なわれる。

【第5条】

1.世界共同体各機関による防止行動または強制行動の対象となった構成領域圏または直轄自治圏に対しては、総会が、全権代表者会議の勧告に基づいて、構成領域圏または直轄自治圏としての権利及び特権の行使を停止することができる。これらの停止された権利及び特権は、総会がこれを回復することができる。

2.世界共同体各機関による防止行動または強制行動の対象となった汎域圏に対しては、全権代表者会議の決定により、当該汎域圏の全権代表者の資格を停止することができる。この停止された資格は、全権代表者会議がこれを回復することができる。

[注釈]  
 何らかの問題行動により、世共による防止行動または強制行動の対象となった圏域への制裁規定である。汎域圏の場合は、それ自体が世共の構成主体ではないため、全権代表者の資格停止が制裁となる。  なお、国連憲章では「憲章に掲げる原則に執拗に違反した国際連合加盟国」に対する除名するという最も厳しい制裁規定を設けているが、世共には除名という制裁はない。世共は、世界民衆の統合を重視するため、完全に排除する制裁は科さないのである。

【第6条】

世界共同体の構成領域圏は、この憲章に掲げる義務を履行する能力または意思を失ったときは、総会の承認決議に基づいて、世界共同体を脱退することができる。

[注釈]  
 世界共同体は、一度参加したら脱退することができないという拘束的な機構ではないが、正当な理由のない一方的な脱退を認めることは、機構の崩壊につながるため、総会による承認審査と決議とを必要とする。

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世界共同体憲章試案(連載第3回)

2019-09-13 | 〆世界共同体憲章試案

第1章 目的

【第1条】

世界共同体の目的は、次のとおりである。

1.地球環境の生態学的な持続可能性を維持すること。そのために、地球環境に対する脅威の防止及び除去と地球環境の破壊の阻止のため有効な集団的措置をとること並びに地球環境の生態学的な持続可能性を確保するために有効な計画経済を地球的規模で実施すること。

2.全民族の同権に基礎を置く全民族間の協調関係を確立すること及び恒久平和を実現するために常備軍の廃止その他のあらゆる適切な施策を追求すること。

3.経済的、社会的、文化的または人道的性質を有する諸問題を解決することについて、並びにいかなる差別もなくすべての人のために人権及び基本的自由を尊重することについて、強制力を伴う民際協調を達成すること。

4.これらの共通の目的の達成に当たって、主権国家を廃し、全民族の行動を統合するための核心となること。

[注釈]
 本条は、前文の総括を受けて、世界共同体の設立目的を簡潔に箇条化したものである。  
 国際連合との大きな相違点は、地球環境の保全とそれに資する計画経済の実施が一等最初に掲げられていることである。国連が第二次大戦の後始末機関であったのに対し、世共はそうした戦争の後始末の段階を超え、危機にある地球環境を保全するべく、全民族のグローバルな統合を目指すことに力点があるからである。  
 また国連のような軍備の管理を通じた「安全保障」ではなく、そもそも軍備を持たない「恒久平和」が追求される点も異なる。そのために、地球規模での軍備の廃絶が目指される。人権と基本権に関しても、宣言的なものにとどまらず、強制力を伴う実効的な民際協調体制を確立することが目指される。  
 そうした共通目的の達成に当たって、世共は旧来の主権国家体制を廃し、全民族の行動を統合するために新たな民際体制として創設されるということである。

第2章 世界共同体の構制

【第2条】

1.世界共同体の全機構は、世界民衆が有する主権に基づいて構制される。

2.世界共同体は、主権を有する民衆が自治的に統治する領域圏及び汎域圏並びに直轄圏及び信託代行統治域圏によって構成される。

3.領域圏は、世界民衆会議‐世界共同体総会に代議員を送ることのできる最小の単位である。

4.近隣の領域圏は、12を超えない限度で、協約に基づいて、世界民衆会議‐世界共同体総会に原則として一名の代議員を送ることのできる合同領域圏を構成することができる。

5.汎域圏は、大陸または連関する島嶼を基準として諸領域圏を包摂する次の五つの大地域である。

汎アフリカ‐南大西洋域圏
汎アメリカ‐カリブ域圏
汎東方アジア‐オセアニア域圏
汎西方アジア‐インド洋域圏
汎ヨーロッパ‐シベリア域圏

6.汎域圏は、域内の経済的、社会的、文化的または人道的諸問題を協調して解決することを目的とする広域的な単位である。

7.直轄圏のうち、1000人以上の住民が永住しているものは、これを直轄自治圏とする。直轄自治圏は、前項の汎域圏のいずれにも属しないことを除けば、領域圏に準じた地位が与えられる。ただし、世界民衆会議‐世界共同体総会に固有の代議員を送ることはできない。

[注釈]  
 世界共同体は、主権国家ベースではなく、内政自主権を有する領域圏を基本単位として構成される国際機構ならぬ民際機構である。  
 領域圏は協約に基づいて任意に合同領域圏を形成することができるが、汎域圏の形成は義務的である。汎域圏は、世界共同体の執行機関に当たる全権代表者会議を選出する母体となる。直轄自治圏は、地理的または地政学的な理由から領域圏を形成できない小規模な地域に適用される。

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世界共同体憲章試案(連載第2回)

2019-09-07 | 〆世界共同体憲章試案

前文

われら人類は、
地球環境を危機にさらしている既存の経済活動がもらしてきた弊害から現在及び将来の世代を救い、
健全な地球環境及び地球上の生態系の持続可能性を保障し、
改善された環境の中で社会的及び経済的な平等と生活の質の向上を促進すること、
加えて、
言語に絶する悲哀を人類に与えてきた戦争の惨害から現在及び将来の世代を救い、
永きにわたり国際紛争の要因となってきた主権国家間の分裂と対立を克服し、恒久平和の条件を確立すること、
並びに、これらのために、
生態学的に持続可能な経済活動を全人類が計画的に協働してこれを行ない、
国家及び一切の国家的常備軍事力を廃するべく、
既存の国際連合に代えて、全人類を包摂する共同体機構を創出することを決意して、
これらの目的を達成するために、われらの革命的な努力を結集することを決定した。
よって、世界各地の進歩的な民衆が結集した世界民衆会議は、集団的な討議の結果、この世界共同体憲章に合意したので、ここに世界共同体という民際機構を設立する。

[注釈]
 国際連合を否定するのでなく、それを克服すべく、主権国家体制に基づかない世界共同体を設立するという趣旨を完結に表現することが、前文の役割である。そうした趣旨を明らかにすべく、国連憲章の前文と似た形式で構成されるが、内容はかなり異なっている。  
 特に、国連は第二次世界大戦に勝利した連合国主導で設立された経緯からも、前文の冒頭が「われら連合国の人民」で始まっていたことは、国連という制度の決定的な限界であった。国連とは、言わば第二次世界大戦の後始末の体制であり、設立から70年以上を経過し、加盟国が200か国近くに達した現時点でも、そうした旧連合国主導の運営体制は変わっていない。  
 また20世紀半ばという時代状況を反映して、地球環境保全という共通目的も国連憲章前文には見当たらない。当時は、資本主義か社会主義か、その体制イデオロギーを問わず、青天井の経済開発を至上目標としていたからである。  
 世共憲章の起草は、世共設立後に総会の役割を果たす世界民衆会議で行なわれるが、設立時点では世界連続革命が一巡完結していなくても、その時点における世界の独立国の過半数の民衆会議が参加した段階で、合意成立とする。

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