フランス大統領選挙とギリシャ議会選挙でともに「緊縮財政」が拒否された。言わば、地中海の乱である。
ゆったりした時間を生きる楽天的な地中海人たちにとって、資本主義の延命のために暮らしを犠牲に供するなど真っ平ごめんというわけであろう。
ただ、いずれの選挙でもはっきりした勝者はおらず、敗者だけがいる。フランスでは現職サルコジが敗れ、ギリシャでは二大政党政治そのものが敗れたのだ。
フランスではさしあたり二大政党の片割れ・社会党に政権が17年ぶりに戻ったわけだが、フランス社会党はすでに新自由主義の洗礼を受けた社会‐新自由主義の党である。その意味では、敗北したサルコジ保守党とは濃淡の差があるにすぎない。
ギリシャでは社会党に相当する与党―債務危機の戦犯ともされた―が保守系野党と大連立を組んで緊縮財政に取り組んだために惨敗し、代わって左右の諸派政党が乱立する結果となった。
選挙結果にさっそく反発した市場を擁護する日本の大手メディアはこうした結果を「懲罰選挙」だと断じ、非難しているが、選挙には悪政を罰する審判機能があることを忘れた論難である。
とはいえ、この結果はまさに懲罰であって、革命ではない。この先どうするかが明確に示されたわけでもない。地中海人たちも資本主義をきっぱりやめる決断には至っていない。
それでも、民衆が暮らしを犠牲にしてまで資本主義の延命に手を貸す意思のないことを示した―特にギリシャ―点では、大きな意義がある。