教科書的には、米国の政治システムは「二大政党制」と呼ばれている。しかし、正確ではない。米国では連邦、州、自治体を問わず、事実上民主・共和両党しか政権を担うことができない仕組みが徹底しており、その実態は両党で全米を山分けする「二党支配制」である。
米国は法的には多党制であり、両党以外の政党の結成も自由だが、小党候補者が選挙で当選に必要な得票をすることができない仕組みが作られている。「集金力=集票力」という選挙の鉄則が米国では徹底しているからである。
そうした金権選挙システムの頂点にあるのが、合衆国大統領選挙である。結果として、人材の党派的偏りと富裕なエスタブリッシュメントに属しない候補者の大統領就任は不可能な状況が作り出されてきた。
民主党で「社会主義者」サンダースが「主流派」のクリントン候補を相手に「善戦」し、共和党でも「主流派」が脱落し、極右系候補の争いとなっているのも、永年の二党支配制に対する米国民の苛立ちと不満を表現しているように思える。
サンダースは従来、無所属の上院議員として二党支配制の枠外で議席を維持していた数少ない政治家だったが、大統領選に当たっては集票しやすい民主党から立候補している。彼は「変革」を訴えているが、真の変革対象はまさに彼自身もそれに依拠しようとしている二党支配制のはずだ。
であれば、無所属のまま立候補するか、その政治信条に沿った第三政党として「社会党」を結党して立候補するか、いずれかが筋ではなかったか。この問題を素通りするなら、「サンダース社会主義」は「トランプ福祉」と同じくらい疑わしいものとなるだろう。