ザ・コミュニスト

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カリブ海の雪解け

2016-03-21 | 時評

暖かなカリブ海を何十年も政治的に凍らせてきた米国とキューバの対立緊張関係がほぐれ始めている。米国‐キューバ関係は、南北朝鮮分断と並び、世界的にはすでに終焉した旧冷戦構造の残雪の一つであった。

無益な体制間対立が終わるのは必然的なことではあるが、ここへ来て、54年ぶりの国交回復、88年ぶりの米大統領のキューバ公式訪問と急速に両国関係が改善に向かっているのは、両国体制の弱体化の表れでもある。

米国のオバマ政権はあたかも旧ソ連最後のゴルバチョフ政権のように、覇権国家の終末期を象徴する「改革」政権であり、片やキューバの現カストロ政権は歴史的な後ろ盾ソ連を失い、苦境に陥る中、高齢の革命指導者フェデル・カストロが引退した後を受けた実弟ラウルの「改革」政権である。

17年に退陣するオバマ政権は極右からは「社会主義」に見えるほど、米国戦後史上最も「左傾化」した政権であり―実際は中道寄り―、一方、18年退陣予定のラウル政権は社会主義の枠内で市場経済化を進める「右傾化」した政権であり、ちょうど両者間である種の収斂化現象が起きて、緊張緩和に向かっている。

両体制は、目と鼻の先でかつてのような激しい政治対決を続けるだけの覇気をもはや持っていない。相互に貿易や観光での関係を強化し、市場経済協力をせざるを得ない状況である。

それによってキューバが革命前の対米従属経済に逆戻りする可能性もあるが、それは標榜上の「社会主義」によって抑止されるのかどうか、これはキューバがカストロ兄弟の手を離れる次期政権の手腕にかかっている。

他方、米国保守派の中には「人権問題」などを口実に対キューバ融和に反対する勢力もあるが、中米カリブ地域をかつてのように戦略的な「米国の庭」に戻そうとするのは、はかない夢にすぎない。

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