一 汎西方アジア‐インド洋域圏
(15)トルコ
(ア)成立経緯
主権国家トルコを基本的に継承する領域圏。ただし、ギリシャとの協定に基づきキプロス島北部を占めるトルコ系北キプロスが準領域圏として編入されるとともに、世界共同体の飛び地禁止原則によりトルコに接するアゼルバイジャンの飛び地であるナヒチェヴァンも準領域圏として編入されるため、複合領域圏となる。一方で、南東部のクルド人居住地域は多民族クルディスタン領域圏の一部として分立する。
(イ)社会経済状況
工業分野では、汎西方アジア‐インド洋圏の主軸となる。東部に残存していた半封建的な大地主制度は革命後の土地の無主物化によって解体され、環境的持続可能性に配慮された計画農業が発展する。南東部のクルド独立運動が長年社会経済の発展をも阻害する未解決課題であったが、世界共同体の創設を機に、隣接するイラクやイランをまたぐ形での多民族クルディスタン領域圏の創設という形で解決され、社会を分断する民族紛争に終止符が打たれる。
(ウ)政治制度
新規に編入される北キプロスとナヒチェヴァンは高度な自治権を有する準領域圏となる。トルコ領域圏としては、欧州大陸部にも領域がまたがっていることから、汎ヨーロッパ‐シベリア域圏の招聘領域圏としてオブザーバーを送る。
(エ)特記
旧版ではアジア大陸とヨーロッパ大陸にまたがるトルコの地政学的位置関係や、トルコが長く欧州連合加盟を希望していたことなどから、汎ヨーロッパ‐シベリア域圏に含めたが、その後、トルコはイスラーム圏への帰属意識を強めていることにかんがみ、汎西方アジア‐インド洋圏に組み替えることとした。
☆別の可能性
特記にも記したように、未来の情勢によっては、トルコが汎ヨーロッパ‐シベリア域圏に包摂される可能性もある。また、可能性は高くないが、南北キプロスが統合され、汎ヨーロッパ‐シベリア域圏に包摂される可能性もなくはない。
(16)アゼルバイジャン
(ア)成立経緯
主権国家アゼルバイジャンを継承する統合領域圏。ただし、飛び地の自治共和国ナヒチェヴァンはトルコ領域圏に編入される。
(イ)社会経済状況
旧ソ連からの独立後は石油が経済基盤であったが、世界共同体のもとでは石油その他の天然資源は世界共同体の共同管理下に移行する。工業分野は軍需重視からの脱却が目指される。旧ソ連時代以来の相互関係から、中央アジア合同領域圏及び南コーカサス合同領域圏(後述)と経済協力協定を締結し、共通経済圏を形成する。
(ウ)政治制度
統合領域圏であるが、2023年にアルメニア系分離国家を武力で排除し編入したナゴルノ‐カラバフは特別州として民衆会議にアルメニア系住民の代表枠が設けられる。
(エ)特記
旧版ではアゼルバイジャンを近隣のアルメニア及びジョージアとともに汎ヨーロッパ‐シベリア域圏に包摂される南コーカサス合同領域圏に含めたが、その後、上述ナゴルノ‐カラバフをめぐるアルメニアとの対立やキリスト教が優勢なアルメニア、ジョージアとは対照的に、イスラーム教が優勢な宗教事情にかんがみ、汎西方アジア‐インド洋圏に組み替えることとした。
☆別の可能性
アゼルバイジャンとアルメニアの和解が進展すれば、汎ヨーロッパ‐シベリア域圏に所属替えしたうえ、南コーカサス合同領域圏に参加する可能性もなくはない。
(17)中央アジア合同
(ア)成立経緯
旧ソ連から独立した旧5か国を継承する5つの領域圏に、中国領新疆ウイグル自治区から独立するウイグリスタンが加わって成立する合同領域圏。
(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の6圏である。いずれも統合領域圏である。
○トルクメニスタン
主権国家トルクメニスタンを継承する領域圏。
○カザフスタン
主権国家カザフスタンを継承する領域圏。ロシアの租借地だったバイコヌール宇宙基地は租借を解消したうえ、カザフスタンとロシア、世界共同体の三者共同運営に移行する。
○ウズベキスタン
主権国家ウズベキスタンを継承する領域圏。
○タジキスタン
主権国家タジキスタンを継承する領域圏。
○キルギスタン
主権国家キルギスを継承する領域圏。
○ウイグリスタン
旧新疆ウイグル自治区が分立する領域圏。公用語はウイグル語と中国語を併用。
(ウ)社会経済状況
新規のウイグリスタンを除けば、旧ソ連時代からの結束性を生かし、合同共通の社会経済計画を策定し、緊密な連携のもとに持続可能的な計画経済を実行する。とりわけ、この地域の環境破壊の主因であった灌漑農業の持続可能的計画化は環境回復を促進する。
(エ)政治制度
合同領域圏は各領域圏民衆会議から選出された同数の協議員から成る政策協議会を常設し、圏内重要課題を討議し、共通政策を協調して遂行する。政策協議会は、カザフスタンのアルマトイに置かれる。合同公用語はエスペラント語を第一言語とするが、旧ソ連圏で通用するロシア語も併用。
(オ)特記
中国領時代は独立運動が厳しく抑圧されていたウイグリスタンは、旧新疆ウイグル自治区は世界共同体の創設に伴い、平和的に分立が実現する。
☆別の可能性
新疆ウイグル自治区での民族同化が高度に進展すれば、中国(チャイナ領域圏)に残留する可能性もある。