Ⅴ 日本―折衷的集権型警察国家
2‐1:都道府県警察の半分権構制
日本の都道府県警察は、すでに見たように、中央省庁としての警察庁を司令塔としながら、各都道府県に警察本部を配するというスフィンクスのような半分権構制を採用するため、その限りで、地方自治体としての都道府県も警察を擁していることになる。
そのうち、東京都の警察本部に相当する警視庁は、その長官である警視総監が内閣総理大臣の承認を得て国家公安委員会により任免されるため、国家警察に近い特殊な地位にある。
また、警視庁を含む各警察本部は都道府県知事の所轄下にあるものの、知事は警察に対する直接の指揮命令権を有しておらず、自治という点では、都道府県警察は形骸的なものにすぎない。結局のところ、第一線の警察官を地方公務員の身分とすることで、その俸給を含む警察費を都道府県に負担させることが半分権制の仕掛けである。
2‐1‐x:政令市警察部
一般の市より広範な自治権を持つ政令指定都市には、市警察部が設置されているが、これは現行警察制度が施行される以前の自治体警察時代のかすかな名残と言えるものである。しかし、現行の市警察部は政令市独自の警察ではなく、政令市が属する道府県の警察本部の出先部門にすぎない。
そのため、多くは独自の実働部署も庁舎も有しない連絡所にすぎないことが多いとはいえ、道府県警が出先を通じて政令市にも睨みを利かす制度とも言える。ただし、現時点では唯一の例外として、福岡県警北九州市警察部は実働部隊として機動警察隊を擁している。
これは同市内で暴力団関連事件が多発していることに対応するものとされるが、あらゆる事件・事故に即応するという観点から創設された機動警察隊の全国先駆けでもあり、今後、他の政令市に拡大される可能性もある。政令市警察部の実働化は、都市部での警察活動の強化につながるだろう。
2‐2:都道府県固有の特別警察
都道府県には、警察本部以外に、都道府県固有の特別警察の機能を果たす部署が置かれているが、ごく例外的であり、その人員もわずかである。
その例として、麻薬取締員、漁業監督吏員、鳥獣の保護又は狩猟の適正化に関する取締りの事務を担当する職員を擁する担当部署、さらに北海道独自の制度として、公有林野の事務を担当する吏員を擁する部署がある。