注意!!これはいわゆるボーイズラブというジャンルの女性向け小説であり、同性間の恋愛を扱っており、性的表現を含みます。このジャンルに興味のない方、そのような内容を苦手とする方はお読みにならないよう願います。
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翌日は朝食が済むなりエドは屋敷を出て、興味津々のこどもたちに村を案内してもらったり遊んだり、畑仕事にいそしむ村人に頼み込んで手伝わせてもらったりして、一日中テスと顔を合わせるのを避けていた。夜も、テスの物言いたげな視線に気づかぬ振りをして、ベッドに入って狸寝入りを決め込んだ。
その次の日は、ビュイスたちが帰っていく日だった。エドとテスは、村人たちとともに崖下の登り口まで彼らを見送った。三々五々散っていく村人に交じって戻ろうとすると、族長が近寄ってきて耳打ちした。
「今から聖地へご案内します。ついていらしてください」
村を抜け、川上の崖に近づくと、まだ風化していない崩れ落ちた岩がごろごろと転がっていた。そこを乗り越えて川が流れ出てくる大きな浸食穴にたどり着くと、若者が1人待っていた。
「ご苦労だった」
「お気をつけて行ってください」
族長は青年が用意していたランプを1つずつ彼らに渡した。
「……わたしも、行ってよいのか?聖域だと言っていたが…」
明るい陽光の下では点いているのかいないのかわからないランプに目を落とし、テスが呟いた。族長は笑った。
「一族以外にはその存在を口外しない掟はありますが、一族の者が入ることを禁じているわけではありません。ただ、近づきにくい場所ですので、村人がわざわざ訪れることがないだけです。行ってみたところで、地下水を見ることができるだけで何の変哲もない場所ですし」
「そうか……」
テスはあまり気が進まない様子だった。正直言えば、エドも気が重かった。行きたくないとすら思った。
水量が多いときはおそらく穴の幅いっぱいに川が流れ、水位も上がるのだろう、砂利だらけの穴の端を、転ばないように族長の背中を頼りに歩いていく。穴の中は水の音が反響し、風が吹きつけてくる。剥き出しのろうそくなどではすぐ消されてしまうだろう。
ところどころ洞窟の端を水が洗い、足首まで水に浸かって歩かねばならなかった。奥へ行くにつれ入口からの光は届かなくなり、轟々という音や闇に取り囲まれ、閉所恐怖症ではないエドも、ここを1人で歩くのはとても耐えられないだろうと思った。村人が近づかないのも当然だ。行く手にランプ以外の光が見えたときは、心底ほっとした。
光は、上から川面を照らしていた。彼らは岸に上がった。そこは見上げるとぽっかり丸い穴が開いていたが、内部の空間は逆すり鉢状になっていて、ちょっとした広間のようになっていた。周囲の赤みを帯びた黄色の砂岩の壁は、上部は崩れた痕がごつごつと残っていたが、膝辺りから下は水の浸食を受けてなめらかで、地面にはさらさらとした砂が溜まっていた。
「雨季にはここまで水が上がってきます。その水の一部は、この奥の穴から下の水流に流れ込むのでしょう」
洞窟の奥の壁に、割れ目が黒々と口を開けていた。ちょうど人が1人通れるほどのそれを見たとき、エドは既視感に襲われた。
「……入ってみますか?」
「え、ええ」
促されるまま、エドは穴に近づいていく。青褪めたテスが彼を凝視しているのにも気づかずに。
「足元をよく照らして、気をつけてください」
穴の外から族長が声をかける。
中は真っ暗で、ランプの光がなければ伸ばした手の先も見えないほどだった。
「……水音は、聞こえますか」
はるか後ろから聞こえてきた声に、ぼうっとしながら答える。
「はい……ああ、でも川の音が耳についてよくわかりません……」
そう答えた途端、どうどうと流れる水音が不意に大きくなった。
足元で、何かが光った。ランプを差し出し、目を凝らす。光ったのは、足元に開いた穴から見える、すさまじい激流の水しぶきだった。
「……すごい……」
呟いた自分の声も、その音にかき消される。暗いせいですぐ下を流れているように見えるが、実際には水面まで5、6メートルはありそうだ。穴は大人でも跳び越せないほど大きく、これ以上奥へ行くのは無理だ。すると、水音が止むというのはこの穴のことに違いない。しかし、この圧倒的な流れが止まることなどあり得るだろうか?
彼はよく見ようと、足を進めかけた。
「……エド!」
急に後ろへ引っぱられ、驚く。振り返ると、テスが立っていた。彼の必死な表情を、不思議に思う。エドを引き戻したのは、彼のシャツの裾を?んだテスの手だった。
「……あ、危ないと思って……わたしは……」
エドは理解した。テスが彼を、「行くな」と止めたことを。
「テス、待ってくれ!」
テスはもう踵を返して入口に向かっていた。外へ出ると、明るさに目がくらんだ。ランプを置いて手をかざし、テスの姿を探す。彼は背を向け、広間の中央に立っていた。
「エドワード殿?」
族長がふたりの様子に不審げに声をかけるが、耳に入らない。
エドは、拳を握りしめた。
「俺は、ここにいたら君に迷惑をかけてしまうから、帰らなくちゃいけないと思っていた。そうするのがいちばんいいんだと思っていた。だけど…だめだ、俺は……ここに残る。愛してるんだ、テス!君がほしい!」
「………!」
ゆっくりと、テスは振り向いた。体ごと。その目から静かに涙が流れ落ちた。くいしばった口元以外には感情を出さずに。
「……エドワード……」
天井から降り注ぐ光が、テスの髪と頬と瞳を金色に染めていた。足元にはくっきりと影が落ちて、エドの目には彼しか映らなかった。彼が、「それ」だと思った。
───と出会え。
そんなものはないと思っていた。そんなものに人間は縛られてなんかいないと思って生きてきた。それに、「彼」はそんな陳腐な言葉で言っていいような存在じゃない。たった一人の、ただひとりの───。なのに、そうとしか言えなかった。
───お前の運命と出会え。
テスが、彼を見つめている。
「お前が……そう言ってくれるのを、ずっと待っていた気がする……」
彼は哀しい微笑を浮かべた。切なくて、はかなくて、抱きしめずにはいられないような。
テスの両手が上がるのと同時に駆け出していた。テスが、彼の胸に飛び込んできた。求める腕がエドの首に巻きつき、自ら引き寄せる。
「エド、愛して…んっ……あ…してる……っ、エド……」
何度も、言葉を綴ろうとする唇をふさぎ、向きを変え、舌を絡め、喘ぎしか洩らせなくなった口を奥まで蹂躙する。
激しい口づけに夢中のふたりを残して、族長はそっと川へ戻っていった。
砂の上に膝をつき、互いの背をまさぐり、髪をかき乱す。押しつけあった互いの体の変化を感じる。
「……テス…、触ってもいい……?」
テスは荒い息をつきながらうなずいた。エドは彼の下穿きを膝まで引き下ろし、露わになった幼い、けれど硬く突き出したそれに指をからめた。テスは真っ赤な顔をうつむけて、両手でエドの肩につかまっていたが、震える肢では支えきれず、次第に腰を落とし座り込んでしまった。
「エ…エド、もう放してくれ……」
エドは手を引いたが、それは彼の背を支えて横たわらせるためだった。そうして片脚ずつ下穿きを脱がせてしまい、開かせた脚の間に膝をつく。
「……!よせ、エド…っ」
股間に顔を寄せた彼は、その先端を軽く口に含んで、すぐ離した。
「こうするのは、君たちの禁忌に触れる?」
「……そんなことは……ないと思うが、でも……」
「いや?…俺はしたいけど」
エドは、安心させようと笑ってみせ、そっと、下の果実を手ですくった。テスが息を詰める。
「俺……同性とは初めてだし、同性趣味もないと思うけど……今まで、どの女性に対しても、その人をかわいいとか愛しいとは思っても、ここそのものにそう感じたことはなかった。それは単なる……快感を得るための場所だとしか思わなかった。なのに……君のこれは、とても可愛らしくて、愛しくて、だからキスしたいし、かわいがりたくてたまらない。だめかな?」
「……おれはこどもだからな。どこもかしこも」
拗ねた目で睨まれ、彼は苦笑した。
「25の君でも、同じようにできると誓えるよ。たぶん、今の君の体に対してみたいに、こんなことしていいんだろうかとか、ためらわない分、遠慮なしにね」
エドは痛々しいようなそれをすっぽりと口に含み、舌で愛撫した。とっさに口をふさいだ手の下から、テスがこらえきれない声を洩らす。両脚が硬直する様子に胸が痛まないわけではなかったが、それよりもテスのそこを慈しみ尽くしたい欲望の方が勝った。青い茎に舌を這わせ、まだ熟す前の実を揉みしだき、吸い上げ、甘噛みする。
「んっ──……、ああ……」
腰が浮くほどテスの背が反り返った。エドの口の中にあったそれからは何も出はしなかったが、それでもテスが彼の愛撫で達したことはわかった。
手で顔を覆ってしまっているテスの髪を撫で、シャツの裾から手を入れて、激しく上下する白い腹から胸をそっとさすった。
「テス……?」
「……」
テスは、汗と涙で濡れた顔をのぞかせた。
「……こんな恥ずかしいことをされたのは初めてだぞ……」
「ごめん。でも、もっと恥ずかしいことをするかも……」
絶句して、テスは小さくため息をついた。
「……お前が、おとなしげに見えても実は自分の意思を押し通す頑固者だってことは、よく知っている……」
彼は体を起こし、膝立ちでエドにキスをした。
「……テス?」
きついので前をくつろげていたエドの下腹に、テスが触れてきた。彼はもちろん、テスの息も再び速くなっていく。
「エド……どうしたい……?」
耳まで赤く染めて、テスがかすれ声で言った。
自分がどうしたいのかは、エドにはわかっていた。ただ今のテスの体にそんな行為はとても無理に思われた。
「もう一度…そこに寝て」
少し不安な瞳をしたテスの上に体を重ね、片腕で背を抱いて口づけた。緩く開いた脚を自分の脚ではさみ、閉じさせる。
熱く脈打つものを太腿に感じたテスは、意図を察して自ら膝に力を入れた。
最初はゆっくりとそれを、テスの閉じた脚の抵抗を受けながら後ろまで貫き、引き抜いてはまた押し込む。その動きを繰り返し、次第に速め、円を描くような動きを加える。
エドの反り返ったそれは不意にテスの双丘の間を擦り上げ、入口をかすめ、その手前の皮膚の薄い部分を突く。そのたびにもどかしい快感を与えられたテスは、くいしばった歯の間から声を洩らす。
荒い息を喉で堰き止め、エドは自分の中で生まれた激しい流れを迸らせた。熱いしぶきがテスの脚を濡らした。
テスを潰さないよう、かろうじて両肘で上体を支えたエドは、弾む息の下から「ごめん」と呟いた。
「……いちいち謝るな」
テスは、彼の頬を両手ではさんで引き寄せた。
「忘れるな……お前にされることはなんでも、わたしにとって喜びだということを……」
「テス……」
ふたりは唇を重ね、快楽の余韻に身を浸した。だが、エドが半ば立ち上がったテスのものに触れようとすると、テスは彼の胸を押しのけた。
「いいかげんに戻らないと。族長にも置いていかれたし。……さぞかし呆れられたことだろう」
「でもテス、そのままじゃ…」
「ばか。お互いきりがないだろう」
彼はエドの下から抜け出し、起き上がった。
「髪も服の中も砂だらけだ」
彼は体をはたき、砂で汚れをこすり落とした。それが自分のせいだと思ってエドは赤くなりながら、服を直した。
「行くぞ」
身支度を整えたテスは、ランプを拾ってもと来た洞窟の中に入って行った。続いてエドが暗い影の中に足を踏み入れるとそこに、テスが待っていた。片手を差し出して。照れ隠しに、怒ったような顔をして。
エドはその手を握った。先に立って、意地になったように振り返らずにテスはどんどん歩いていく。行きはあれほど不安で恐ろしい感じがした暗闇も轟音も、足を濡らす速い流れも、少しも気にならなかった。長かったはずの道のりも、あっという間に出口にたどり着いてしまった。
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