ブラックべりーの実
季語の中には客観的に言表せないものがあり、そして地域によって若干の
肌感覚がちがうものもある。
雪深い山間の寒さと日本海の海辺リの雪混じりの風の寒さ
沖縄など島の日差し暑さ、京都などの盆地特有の空気の暑さ、そして
東京など都会のアスファルトの反射熱、クーラー、自動車の排気温、人いきれ。
音であらわすなら「しんしん」「きんきん」「ちくちく」「じりじり」「むんむん」
私の感覚ではこうなる。
天文、気象を俳句になす時この音にかえることが作句の近道となり、同感を得やすい。
この音を詠みこめば手っ取り早いが、それでは面白くない。
今度はその音から連想できるものを取り合せの種として用いる。
例えば「しんしん」からは闇、静寂、心、降りそそぐもの等である。
死者は深雪に生者は檻に安らがむ 齋藤玄
バイブルに鞣し香のある深雪かな 石原八束
雪櫟夜の奈落に妻子ねて 森澄雄
母の鏡蒼しと思ふ夜は雪 長谷川秋子
例えば「じりじり」からは観念、不安、光、せまりくるもの等。
とらわれの蟹炎天を掻きむしり 小宅容義
炎天の犬捕り低く唄ひ出す 西東三鬼
炎天や別れてすぐに人恋ふる 稲田 眸子
つよき火を焚きて炎昼の道なほす 桂 信子
炎昼や海の太陽茄であがる 吉原文音
こんな風に捉え鑑賞を進めてゆくと辿りつくものが有ると思う。