( 青田 )
日の落ちしあとのあかるき青田かな 久保田万太郎
みちのくや青田に降りる山の雲 岸田稚魚
日本海青田千枚の裾あらふ 能村登四郎
端っこながら都会に生まれ育った私に「青田」を実感したことが有るだろうか
自問自答に「否」である
父が稼業の佃煮製造業をやめたのは私が高校2年の時、東京の両国から
埼玉県に引越した。新興の住宅地でありながら回りはまだ田圃、牛蛙の
大きさと声に驚き、眠れないこともあった。秋には蝗とりの人達にも
驚いたが母は田芹摘み、私は近くの江戸川の土手でバイクを走らせて
楽しんだ。
俳句をするようになって一室が「消炭庵」として俳句教室となった
師匠の田中先生が拙い弟子のためによく通って下さったと今更ながら
頭が下がる
その頃の師匠のいでたちは作務衣に巾着袋、下駄履きだった
居間の窓からバス停が見え、小柄ながら大股に師匠がやってくる。
まさに青田の中をまっすぐに
一通りの勉強・句会を終えるとまた師匠は大股に帰られた。
私にとって眼に焼きついた青田の景色はこの一景である
送る師はすでに青田の青の中 (20代の拙句)
( 朝顔 )
朝顔の紺のかなたの月日かな 石田波郷
朝顔の双葉のどこか濡れゐたる 高野素十
朝顔や濁り初めたる市の空 杉田久女
これほど身近な花を詠むのは難しい、身近な上に類想が多い題材
今日の3句、波郷のかなた、素十のどこか、一見曖昧な表現にも感じる
そして久女の句 全てに共通することは「朝顔」一点を凝視したうえで
その裏側に浮かび上がった景色、時間なのだろうと思っています
現実に久女の頭上に濁り初めたる空があり、それを詠ったならば
これほど久女の代表作の一つになるはずがないと感じます
二句一章の単なる取り合わせでは無いことに気づいたのは久女の句に
興味を持ち句集など読み始めてからのことでした
( 金平糖 )
七夕や送られて来し金平糖 安藤和子
良夜かな金平糖を十粒ほど 木下野生
♪ 「いろはにこんぺいとう」
いろはにこんぺいとう こんぺいとうは甘い
甘いはお砂糖 お砂糖は白い
白いは兎 兎は跳ねる
跳ねるは蚤 蚤は赤い
赤いはほおずき ほおずきは鳴る
鳴るはおなら おならは臭い
臭いはうんこ うんこは黄色い
黄色いはバナナ バナナは高い
高いは十二階 十二階は恐い
恐いはおばけ おばけは消える
消えるは電気 電気は光る
光るは親父のはげあたま ♪
童歌の「いろはにこんぺいとう」バナナは高い・・・そんな時代でした
高いは十二階、浅草の十二階は関東大震災で無くなってますし
いまでは十二階ぐらいなら高層とは呼ばれない。進歩と引き換えにした
何かがありますね
(竹煮草・竹似草)
たけに草を俳句の検索にかけると竹煮草の句だけ、また植物図鑑に
かけると竹似草になっている。
秋に枯れるとその茎が竹に似ていることから名づけられたという
先日大惨劇があった秋葉原、ころころが生まれた両国からJR総武線で
二つ目の駅、ゲルマニウムラヂオから真空管、トランジスタへの変換の少年期には
よく行きました。当時地元の子供たちも「アキバ」といっていましたが
それはアキバハラを略したものでアキハバラでは無かったように思います
年寄りもアキバハラと言っていたように記憶しています
ちなみに上野は「ノガミ」浅草は「エンコ」と呼んでいました
それは、きっと下町訛りのようなものなんでしょうか・・・
下町言葉は全国標準語とは違うと大人になって気づきました
竹煮草たたきて山雨はじまりぬ 鷲谷七菜子
吹く風の葉裏へばかり竹煮草 井沢正江
竹煮草立ち往生の末に咲く 大石雄鬼
( 雷除け・浅草寺札所 )
浅草寺ほおずき市に雷除けのお守りを受けてきました
「江戸時代にはアヅキ色をした「赤とうもろこし」が雷除けのまじないになると人気を集め、7月9日、10日の2日間だけ浅草観音の境内で売られてきました。ところが明治の初め不作の年があって、一軒もとうもろこし屋が出なかった為、参拝者の要望に応じ、浅草寺から竹串にはさんだ三角形の「雷除守護」のお札が出されましたが、これが次第に有り難がられるようになって、とうもろこし屋の方は影がうすくなり、昭和9年頃には全く姿を消してしまいました。」
ちなみに何故赤とうもろこしか?と言うと赤とうもろこしを軒先に干した
納屋だけが雷の被害を受けなかったということに起源しているようです
考えれば電車の窓大破の被害を受けなかったのはお守りのお陰かもと
今更思うころころです
雷落ちて火伏の神を焼きにけり 浅見まき子
昇降機しづかに雷の夜を昇る 西東三鬼
(ちょっとした パプニング)
昨日浅草寺の四万六千日・鬼灯市へ行ってきました
帰りの山の手線で西日暮里を過ぎたあたりで車内に大音響
京浜東北線とのすれ違いざま大きなまどが大破!
車内は騒然としました怪我人もでず何よりでしたが
田端の駅で30分の停車の後全員が降車させられ後続の車両は
超満員・・・浅草寺より混んでいました
ドアを入って左に座ったころころ、もし右なら私の頭上でした
炎立つ四万六千日の大香炉 水原秋桜子