( 初蝶 )
初蝶やわが三十の袖袂 石田波郷
初蝶に影が先翔ぶ軽さあり 清田圭二
初蝶の角を曲がつて行ったきり 石井嗣子
初蝶や子をよぎる時あざやかに 野見山ひふみ
( レタス )
月光の蒼く滴るレタス畑 久松久子
巻き固きレタスほぐして夕長し 岡本眸
レタス沢山洗い遅日の手がきれい 池田澄子
独り言
屠蘇散や夫は他人なので好き 池田澄子
この句の屠蘇散は元旦に飲む長寿の漢方薬。ころころは昭和25年生まれ
団塊とは少し遅れてこの世に吐き出されましたが、大括りに言えば戦後っ子
そろそろ、親の事、子供の結婚、出産、孫の事、連れ合いの事,仕事の事。
色々な事から開放されてもいい年代なのに、反って繁忙となる。
心の中では誠にうっとうしいと思っても、それが出せないのは、身内と思って
いるから。血縁で言えばそうなるが、池田澄子曰く。自分以外は他人。
そう思えば,その存在も有り難く嬉しい。
なるほど他人には不思議と優しくできるのです。
腐りつつ桃のかたちをしていたり 池田澄子
こんな句のような自分でいたい。
( 土筆・つくしんぼ・つくづくし )
友人の掲示板に触発されて今日は土筆。
まゝ事の飯もおさいも土筆かな 星野立子
わが机妻が占めをり土筆むく 富安風生
つくづくし筆一本の遅筆の父 中村草田男
土筆野や子取ろの唄はすたれしか 菅原鬨也
独り言
昨夜は,蓼さんの掲示板で連作のことを少し書いたら、参加者の連作が始まってしまった。
その数100余句,見事に土筆が並んだ。また余計なことをしてしまったか。
ウィキペディアによれば、「一人の作者が特定の題材に基づいて複数の作品を作り、全体としてもある程度まとまった作品とすること」 となっている。
参加された方々の頭や心には,幼い頃に遊んだ原っぱや土筆を摘んでいる母やふるさとの景色
を思い出されたことに違いない。ここに作者の原風景があり体に染み付いた写生があるはず。
初学に田中先生に手ほどきをうけた、上達の教えの一つを伝えられて良かった。
参加された方々、お疲れさまでした。 蓼さん貴重な掲示板の時間をありがとうございました。
因みに、ころころの掲載句は3句。 全部で15句詠んだけれど、方々の投稿集中で載せられ
ませんでした。
土筆摘夢の中までつづきをり ころころ
( 馬酔木 )
馬酔木は有毒植物の一種で牛馬が食べると痺れて酔ったようになるのでこの名前に
なったということです。写真は自生のもので園芸品種ではピンクのものもあります。
来しかたや馬酔木咲く野の日のひかり 水原秋桜子
中尊寺道白珠の馬酔木咲く 秋元不死男
百済観音背高におはし花あしび 鈴鹿野風呂
つくばへる石より低く花馬酔木 富安風生
( 土佐みずき )
野の川の向う明るき土佐水木 東條未英
着け睫つけたるごとし土佐水木 永川絢子
土佐水木良寛堂を燭しけり 松崎鉄之介
鐘一つ撞いて札所の土佐水木 宮川貴子
独り言
角川俳句3月号「作句の現場」 宇田喜代子の言葉
「私たちの世代なら当たり前のように読んでいた句集や評論が今や手に入らない。子規、虚子、秋桜子な主要俳人の全句集を読むことは,必ず自分の俳句の肥やしになる。現物を手にした時の量感や紙の手触り、匂いなども、若い人
たちに知ってもらいたい。」
インターネットで俳句をしたり、自分の句を残したりとても便利に簡単になって
来たけれども、それと平行して学ぶこともあるのでしょう。
( 雛祭り )
厨房に貝が歩くよ雛祭 秋元不死男
婚近き子の雛祭り終りけり 伊阪美祢子
部屋中が匙に映りぬ雛祭 正木ゆう子
独り言
ころころの家での最後の雛祭りを迎える娘がいます。今月嫁ぎます。
初節句から今日までコマ送りのように、その時々の雛祭りが浮かぶ。
現在は安堵と寂しさが同時進行中、ウエディングドレスの衣装合わせ
の時に胸が一杯になった。 その後姿を見ていてやっと真実を認める。
娘を前にすると、だらしない男親だ。
呉れてやる娘の笑顔鬼は外 はこの時の句
バージンロードを一緒に歩くまでは泣かないようにするつもり・・・・
戦争を見て来し土の雛かな ころころ
(昭和20年2月生まれの姉のお雛様は今でも母が飾ります)
一つづつ声かけ解く雛の箱
雛の夜の燭落したるしじまかな ころころ
( 牡丹の芽 )
ほむらとも我心とも牡丹の芽 高浜虚子
早起きの妻のけはひや牡丹の芽 沢木欣一
ゆつくりと光が通る牡丹の芽 能村登四郎
ビニールの姐様かむり牡丹の芽 阿波野青畝
( 桃の花 )
いよいよ三月・弥生ですね。一日一日が早く感じられます。
桃の花 と言えば今日の一句。ころころが大好きな一句です。
ふだん着でふだんの心桃の花 細見 綾子
拝殿の弥生の扉開かるゝ 茂上 かの女
きさらぎをぬけて弥生へものの影 桂 信子
独り言
結社に出せない句を久々に現俳IT 句会に投句。最近は即物具象を心がけて
いるので、手探り状態だった。 たまにはそんな句も詠まないと・・・・
現俳では喜多川水車。 名前なんてどうでもいいのだ。作品が読者の心に
届けばいい。
春宵の母にまだある糸切り歯
呉れてやるむすめの笑顔鬼は外 水車(ころころ)