11月 21日

2020-11-20 13:14:03 | Weblog
                       水鳥・浮寝鳥・鴨・水禽


     地を歩くときの楽しさ鴨の顔        沢木欣一


     鴨射ちの下げたる鴨の目は見ざり      細見綾子


     尻向けて水鳥のみな無防備に        栗田やすし


     水鳥が宙で捕へしパンの耳         河原地英武


     夕鴨の水脈を連ねて遠ざかる        小長哲郎


     行く雲の影と流るゝ浮寝鳥         梅田 葵


     いつときの鴨の騒ぎや夕川面        武藤光晴


     賀茂川の夕日かきまぜ鴨遊ぶ        武田稜子


     浮寝鳥コンビナートの灯と揺るる      橋本 淳


     嶺映す水面乱せり鴨の陣          藤田岳人


     荒波にしやくられづめの浮寝鳥       矢野孝子


     鴨睦む玉のしぶきを日に散らし       上村龍子


     はばたいて浮寝鳥とはまだなれず      鈴木みや子



          



     大琵琶の八十の浦なる浮寝鳥        鈴鹿野風呂


     ミサの鐘ひびき水鳥驚かず         山本歩禅


     一番乗りの鴨の着水鳰が見て        鈴木真砂女


     いくつかは貼絵の遠さ浮寝鳥        鷹羽狩行


     三つといふ数複雑につがひ鴨        能村登四郎


     水鳥に西吹く風となりにけり        水原秋桜子


     心愉しまぬ日や鳰を見て鴨を見て      安住 敦




          
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11月 20日

2020-11-19 15:37:28 | Weblog
                        冬菜・冬菜畑・かぶ菜・野沢菜・小松菜・漬菜


     水郷や葦辺に青き冬菜畑           栗田やすし


     海を負ふ暮らし漬菜の石探す         細見綾子


     ネット越し椋が啄む冬菜畑          藤田岳人


     磴千段来て堂守の冬菜畑           矢野孝子


     冬菜洗ふ姑娘そつと笑ひけり         武藤光晴


     遠山のけふよく見えて冬菜畑         吉田明美


     裸灯や京の市場の冬野菜           安藤虎杖


     軒先に冬菜を売れり洋品店          市原美幸


     刑場の跡青々と冬菜生ふ           井上 梟


     浜風や畝の崩れし冬菜畑           辻江けい


     鉄橋の下真青なる冬菜畑           中山ユキ


     山畑の婆鈴つけて冬菜つむ          大倉カツ江


     冬菜畑水かけて土匂ひけり          鈴木華子



          



     火の山の高曇りゐし冬菜かな         吉田鴻司


     冬菜漬け終り全身きしきしす         菖蒲あや


     一つかかへて二つをこぼす冬菜婆       今瀬剛一


     曳売りの婆の冬菜の目分量          猪爪登美子


     茹で上げし冬菜の湯気が顔を撫で       西村和子


     笛つくることの遊びや冬菜屑         古館曹人


     湖を見下ろしにして冬菜畑          石田郷子



          
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11月 19日

2020-11-18 12:50:56 | Weblog
                       落葉・落葉焚・落葉山・椎落葉・朴落葉


     朴落葉少しの風に遠く飛ぶ         細見綾子


     頬杖の卓屋根滑る夜の落葉         沢木欣一


     音立てて踏む子規庵の柿落葉        栗田やすし


     トンネルの奥の奥まで椎落葉        丹羽康碩


     城跡へ踏むたび匂ふぬれ落葉        岸本典子


     平家谷くるぶしまでの朴落葉        佐藤とみお


     朴落葉はりつく雨後の石畳         伊藤範子


     堆き銀杏落葉の明るさよ          武藤光晴


     桂落葉甘き香ほのと関所跡         桜井節子


     柿落葉散り込む耶蘇の隠し井戸       廣島幸子


     落葉してすずかけの実の揺れどほし     服部鏡子


     幇間の碑の辺落葉の吹き溜まり       ころころ



          

          


     手が見えて父が落葉の山歩く        飯田龍太
     

     むさしのの空真青なる落葉かな       水原秋櫻子


     わがための珈琲濃くす夜の落葉       福永耕二


     からからと落葉追ひ来て追ひ越しぬ     星野立子


     ニコライの鐘の愉しき落葉かな       石田波郷


     夫見舞ふけふを限りの落葉道        石田あき子


     くすぶりてゐしが一気に火の落葉      檜 紀代



          


     
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11月 18日

2020-11-17 13:58:09 | Weblog
                        サフラン  < 季=晩秋 >


          サフランは、秋咲きのクロッカスの一種で、もともとは染料、香料、薬用として多く
          栽培されていましたが、今は観賞用としても利用されています。パエリアやサフランライスの黄色は、
          サフランの3裂した赤色の雌しべから得たものです。(ネットの文章をお借りしました)



     狼煙燈台へ冬のサフラン畑上る       細見綾子


     灯台のさふらん畠珠洲岬          沢木欣一


     サフランの花に声上ぐ誕生日        梅田 葵


     退院や先ずサフランの花に寄る       金田義子




     サフランや印度の神は恋多き        正木ゆう子


     孤児にはや異人のにほひ花サフラン     鍵和田釉子


     サフランや映画はきのう人を殺め      宇多喜代子


     花サフラン久女読むとき情濃ゆく      高岡すみ子


     サフランの花や岬の療養所         松原文子


     サフランの花をぐるりと雨しぶき      鷹羽狩行


     サフランや読書少女の行追ふ目       石田波郷



          
          
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11月 17日

2020-11-16 13:47:03 | Weblog
                        八手の花・花八手 


     炭を切る筵明るし花八ッ手           沢木欣一


     空広く声たまにくる花八ツ手          細見綾子


     暗きより牛が貌出す花八手           下里美恵子


     出格子の残る商家や花八ツ手          山 たけし   


     花八手活く煤色の野焼壺            玉井美智子


     花八ツ手庫裡立て替への杭を打つ        神尾朴水


     猫出入り自在の地窓花八手           伊藤範子


     花八つ手明神下に平次の碑           日野圭子


     あと幾度訪ふ故郷や花八ツ手          小長哲郎


     白極む室生の里の花やつで           鈴木英子


     白壁の剥げし味噌蔵花八ツ手          関根近子 


     上げ舟の櫂の細さや花八ツ手          加藤ノブ子


     爪立ちて玻璃拭く巫女や花やつで        小田二三枝




          



     どの路地のどこ曲つても花八ッ手        菖蒲あや


     君発たせ来し駅裏の花八ツ手          寺井谷子


     花八ッ手生涯母は紅ささず           中嶋秀子


     出家には遺書などいらぬ花八手         無着成恭


     老いはかく音もなく来る花八つ手        林 翔


     庭先に江の電軋む花八つ手           水原春郎


     花八つ手水を貰ひに研師来る          森藤千鶴




          
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11月 16日

2020-11-15 13:56:26 | Weblog
                        柊の花・ひひらぎの花・花柊


     柊の花を見し目や眼帯す           細見綾子


     ひひらぎの香れる朝子は母に         若山智子


     花柊ポンプに注ぐ誘ひ水           武藤光晴


     赤子見に花柊の路地ぬくる          武田稜子


     風凪ぎて柊の香の漂へり           加藤雅子


     柊の花こぼれ継ぐ窯場径           幸村志保美


     柊の花一枝挿し第九聴く           谷口千賀子


     花柊匂ふ如安庵の躙り口           角田勝代


     花柊術後の息をそつと吸ふ          金原峰子



          



     父とありし日の短かさよ花柊          野澤節子


     柊の花も蕾も銀の粒              橋爪巨籟


     車椅子寄せてつみ折る柊の花          野村喜舟


     花柊だれもが風の強さいふ           鍵和田釉子


     花柊散る静かさの水屋窓            石川桂郎


     柊散る障子越しなる尼の声           吉野義子


     母棲んで柊咲ける木戸ひとつ          草間時彦




          
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11月 15日

2020-11-14 13:47:39 | Weblog
                        七五三・七五三(しめ)祝・帯解・千歳飴・袴著



     飴袋黒土擦つて七五三           沢木欣一


     神域に太鼓響けり七五三          加藤けい子


     児の足袋の爪先余る七五三         中山ユキ


     唇に綿菓子つけて七五三          奥山ひろ子


     袴著の男の子つまづく神の庭        矢野愛乃


     祝着の子と祓はるる七五三         松永敏枝


     七五三小さき嫁後となりにけり       伊坂壽子


     祝詞聞く子らの真顔よ七五三        神尾知代


     口紅のはみ出してをり七五三        生川靖子


     小さき手の小さき拍手七五三        ころころ



          



     かくも小さき白足袋ありし七五三       林 翔


     袴着も戎の宮の顔なじみ           平畑静塔


     七五三の母子に名古屋城晴れて        村山故郷


     帯解や雨の中打つ宮太鼓           石橋秀野


     髪置の子のあくびして撮られをり       谷口和子


     畳店青き香に満ち七五三           中村草田男


     草の戸にはなやかなるは千歳飴        山口青邨



          
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11月 14日

2020-11-13 13:46:25 | Weblog
                        大根・大根畑・大根売・大根引く


     一畝の大根を引き息切らす         栗田やすし


     うつし世をかなしみゐたる大根煮て     細見綾子


     泥大根提げて観音参りかな         上田博子


     目が合ひて狸逸れゆく大根畑        清水弓月


     二畝の大根育て硯彫る           栗田せつ子


     農学生泥大根を持ち帰る          太田滋子


     山窪の婆が畑や痩大根           武藤光晴


     だぶだぶの長靴をはき大根引く       川口敏子


     道問ふて婆より貰ふ丸大根         小栁津民子


     幼子の掛け声ばかり大根引く        市川克代


     弁柄に置屋の名残大根売る         森 靖子


     泥大根ひらがな多き母の文         ころころ



          



     伊勢大根斎宮趾に肥えにけり        阿波野青畝


     根の湯気をゆたかに煮て喪中        鷹羽狩行


     大根の青首のぞく安宅関          伊丹三樹彦


     大根売る八百屋ありけり中華街       深見けん二


     大根おろし御飯にかけて山暮し       金子兜太


     野の池や大根あらへる今日の波       水原秋櫻子




          

             聖護院大根
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11月 13日

2020-11-12 13:01:57 | Weblog
                        藪巻・菰巻・菰巻く 


          菰巻きはマツカレハなどの害虫から守るために、
          松の幹に藁でできた菰を巻きつける。啓蟄にこの菰を越冬した虫とともにはずすのが
          恒例になっているようです 写真の菰巻きには結び目に縄で飾りがしてありました
          また藪巻きとも呼ばれ躑躅や桜の若木をぐるぐる巻きにされている物もあります
          菰巻き・藪巻きは冬の、菰はずしは春の季語になっています



     菰巻かれ三河黒松獣めく             下里美恵子


     木賊にも藪巻したる陸奥の寺           近藤文子


     藪巻や飾り結びの一と並び            平松公代


     菰巻くや亀甲荒き松の幹             小田二三枝


     菰巻の結ひしばかりの縄匂ふ           内田陽子


     腰高に菰巻く松や皇居前             内藤雅子


     菰を巻く仕上げの縄の花むすび          ころころ



          



     菰巻の蘇鉄筋肉隆々と              山口誓子


     藪巻やののさまと日を指差して          茨木和生


     藪巻を覗きたる鼻濡れにけり           大石悦子


     藪巻のふところがくれ栗鼠あそぶ         掛札常山


     菰巻かず大王崎の大蘇鉄             奥谷郁代


     松は菰巻かれはべりぬ浮見堂           片山由美子


     藪巻や美童攫はれたるはなし           能村登四郎



          
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11月 12日

2020-11-11 14:34:28 | Weblog
                        葱・葱畑・根深汁・根深引く・根深・ひともじ


     二人居の一人が出でて葱を買ふ       細見綾子


     教え子が来てどかと置く葱と蕪       栗田やすし


     妻の留守温め直せる根深汁         丹羽康碩


     漉き土間に朝採りの葱泥まみれ       栗田せつ子


     神輿蔵前ひと畝の葱の青          伊藤範子


     ボーナスに縁なきくらし根深汁       国枝隆生


     葱一本駅舎に落ちし市の朝         武田明子


     合掌家あふるる水に葱洗ふ         江本晴子


     白ねぎを薄暮に抜けば匂ひ立つ       鈴木英子


     根深汁静かに老いて味深し         丹羽一橋


     葱を引く媼に余呉の夕日濃し        山本光江


     門灯をつけて葱抜く屋敷畑         市原美幸



          



     深谷葱着きぬ鍋もの何々ぞ         水原秋櫻子


     下仁田の土をこぼして葱届く        鈴木真砂女


     洗ひ葱白きあたりが雫せり         能村登四郎


     みがかれて峡の痩葱痩牛蒡         石田あき子


     葱味噌を嘗め疑はず酔ひにけり       草間時彦


     ことごとく折れて真昼の葱畑        鷹羽狩行


     友訪わむさかさに提げて葱青し       寺山修司



          


          
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