11月 11日

2020-11-10 13:28:40 | Weblog
                        冬菫・冬すみれ・寒菫


     教会の庭に屈めば冬すみれ           栗田やすし


     言葉少き日の縁下の冬すみれ          細見綾子


     冬すみれ八雲ゆかりの猟師町          矢野愛乃


     冬すみれ咲く王陵の珊瑚垣           倉田信子


     城郭の日当たるところ冬すみれ         武藤光晴


     鷹匠の墓に一輪冬すみれ            奥山ひろみ


     戒名の無き母の墓冬すみれ           渡辺慢房


     赤土の崖すそ冬のすみれ咲く          金田義子


     冬すみれ潮騒の音吹き上ぐる          服部鏡子


     アスファルト割つて一列冬すみれ        千葉ゆう


     病院へ長きスロープ冬菫            小原米子


     椅子ひとつほどの日溜り冬すみれ        ころころ



          



     冬すみれ汝も平家の裔として          津田清子


     勝ち牛も負け牛も踏む冬すみれ         石 寒太


     しやがむとき女やさしき冬菫          上田五千石


     ふるきよきころのいろして冬すみれ       飯田龍太


     犬より荒き少年の息冬すみれ          鍵和田釉子


     子を生まぬこと冬菫愛さぬこと         夏井いつき


     冬すみれ雲白き日は雲を恋ひ          大串 章



          


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11月 10日

2020-11-09 13:30:25 | Weblog
                        実南天・南天の実


     南天の実に惨たりし日を憶ふ          沢木欣一


     船倉の壁に影濃き実南天            栗田やすし


     ふるさとに南天の実と石路の花         細見綾子


     実南天蔵に出入りの藁草履           栗田せつ子


     表札の墨褪せてをり実南天           山 たけし


     酢の倉の庭に鳥居や実南天           幸村志保美


     四間道の低き軒端に実南天           伊藤登美江


     灯籠に触れて色濃き実南天           大津千恵子


     実南天町家に残る屋敷神            日野圭子


     実南天綾子生家に蔵二つ            熊谷タマ


     艶やかや馬籠峠の実南天            角田勝代


     実南天朝日に紅を深めたり           関根近子



          

            白南天



     とやかくの家相を払ふ実南天          能村登四郎


     存命の父母を軽んず実南天           正木ゆう子


     実南天阿国のくにの巫女美しき         平井あい子


     一株は白南天や石道寺             星野麥丘人


     お座敷の中も寒くて実南天           岸本尚毅


     参道も門も小ぶりに実南天           鷹羽狩行


     長命寺の尾長鳥けふ来ず実南天         石田波郷




          
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11月 9日

2020-11-08 17:18:26 | Weblog
                        枯蟷螂・蟷螂枯る


     疑えば卓の蟷螂褐色に           沢木欣一


     手を合はせ行き所なき枯蟷螂        細見綾子


     蟷螂の枯れて日向に仁王立ち        伊藤旅遊


     枯れてゆく蟷螂すがる指の先        栗田せつ子


     荒壁に夕日浴びゐる枯蟷螂         掛布光子


     暮れてなほ窓を離れぬ枯蟷螂        平松公代


     蟷螂の青き腹見せ果てにけり        神谷 尚


     つまみあぐ枯蟷螂のみどりの目       武山愛子


     枯れきつて蟷螂の目の赤み増す       足立サキ子


     枯蟷螂俳聖殿に斧かざす          林 尉江


     枯蟷螂ふるれば斧をふり上ぐる       垣内玲子



          



     一条のみどり残れる枯蟷螂         横山房子


     枯蟷螂落ちても構ふ石の上         山口草堂


     蟷螂の斧の先より枯れはじむ        大橋敦子


     逆しまにポストをのぞく枯蟷螂       尾沼チヨ子


     枯色も攻めの迷彩枯蟷螂          的野 雄  


     身構へて怒りしままの枯蟷螂        高橋利雄


     石に落ちて小枝となりし枯蟷螂       河野南畦
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11月 8日

2020-11-07 13:40:38 | Weblog
                        冬薔薇・冬の薔薇


     冬薔薇日の金色を分かちくるゝ          細見綾子


     待つ人あり睫毛の影と冬の薔薇          沢木欣一


     寒の薔薇一輪挿しに開ききる           中山敏彦


     問診の女医は教へ子冬薔薇            櫻井幹郎


     グラバー園茎たくましき冬薔薇          矢野愛乃


     下町や都電の柵に冬の薔薇            武藤光晴 


     日時計の影の薄さや冬の薔薇           渡辺慢房


     保育器の嬰が微笑めり冬薔薇           横井美音


     尼寺にひそと一輪冬薔薇             石川紀子


     農学部冬薔薇束で売られをり           太田滋子


     冬の薔薇抱きマネキンの薄き胸          ころころ



          



     冬薔薇や仕事で逢ひて好きな人          岡本 眸


     かりそめの色にはあらず冬薔薇          片山由美子


     夫とゐて冬薔薇に唇つけし罪           鷹羽狩行


     銀座には銀座の生活冬薔薇            高木晴子


     冬ばらや弱き人のみ傷つきて           長谷川秋子


     冬薔薇にもう泣かぬ顔あげにけり         鈴木真砂女


     三面鏡ひらきてふやす冬の薔薇          朝倉和江



          
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11月 7日

2020-11-06 13:24:35 | Weblog
                        立冬・冬立つ・今朝の冬・冬に入る

                立冬は二十四節気のひとつで、冬が立つと書くように、
                冬の兆しが見え始める頃。



     冬来れば母の手織りの紺深し            細見綾子


     立冬のことに草木のかがやける           沢木欣一


     師と並び反古焚きし庭冬に入る           栗田やすし


     誓子見し沖にタンカー冬に入る           国枝隆生


     撒餌して雀呼びけり冬立つ日            梅田 葵


     風紋にわが影長し冬に入る             栗田せつ子


     手の甲に伸ばすクリーム今朝の冬          太田滋子


     立冬や老いたる母の水仕事             伊藤旅遊


     立冬やブーツで歩く石畳              関根切子


     金魚田に水黒ぐろと冬に入る            竹中和子


     立冬の薪割る音の響きけり             加藤けい子


     水門の銹たる手摺冬来る              藤田映子


     米を研ぐ水の硬さや今朝の冬            山本悦子



          

          


     鯖雲もすでに大鱗冬立つ日             福永耕二


     ガスの炎の力揃ひて冬に入る            岡本 眸


     今朝冬の日当りそめし手水鉢            富安風生


     くづすことも積木の遊び冬来る           上田日差子


     冬立つよ古洗濯機胴震ひ              百合山羽公


     立冬や紺の上衣に紺の闇              飯田龍太


     冬に入る平等院の水の皺              原 コウ子



          
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11月 6日

2020-11-05 13:37:10 | Weblog
                        木枯し・凩 < 季=初冬 >

          東京では4日に木枯し1号の発表がありました。3年ぶりの発表です
          東京地方の木枯らし1号の条件は、次の通りです。
          ①期間:10月半ばから11月末の間。
          ②気圧配置が西高東低の冬型となり、季節風が吹くこと。
          ③東京における風向が西北西~北である。
          ④東京における最大風速が、おおむね風力5(風速8メートル以上)。(ただし、発表は最大瞬間風速)



     海の上進む木枯見えにけり         沢木欣一


     葛飾の句座木枯しが灯を強め        細見綾子


     木枯や伝言板に髑髏の絵          河原地英武


     木枯や海に船見ぬ能登の旅         櫻井幹郎


     木枯が懐に入る日暮畑           雨池志津乃


     木枯や千切れ雲吐く駒ヶ岳         中野一灯


     木枯や寺に仁吉の旅合羽          山本悦子


     木枯や鳶吹かれ鳴く海の上         武藤光晴


     木枯しに嬌声あぐる女学生         荒深美和子


     木枯の途切るる路地やピアノ鳴る      山本法子


     書を習ふ窓を木枯叩きづめ         吉川利雄


     木枯しやビルの谷間の占ひ師        下山幸重



          

          木枯しは晩秋から初冬にかけて、木の葉を吹き散らすように吹く、
          冷たい北寄りの風のことをいうが、それによって葉を散り尽くしてしまった木は
          、幹を露にまさに擂り粉木棒のような姿を呈することになる。 ..
          . 現在、木枯しは冬の季語とされているが、古くは初秋の季語とされていたこともあった。
           ( サイトから知識をお借りしました )




     凩を連れて帰るよひとりの部屋       菖蒲あや


     朝のパン外の木枯を見つつ焼く       福田蓼汀


     木枯や子を思ふとき神だのみ        岡本 眸


     もしジャズが止めば凩ばかりの夜      寺山修司


     木枯やだらりとさがる象の鼻        飯田龍太


     三椏と知る凩の熄みし枝          福永耕二


     けふは凩のはがき一枚           種田山頭火




          
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11月 5日

2020-11-04 12:44:29 | Weblog
                         暮の秋・秋暮るる・暮秋


     暮の秋きびしく白き薔薇咲ける         細見綾子


     渡し舟櫓音きします暮の秋           栗田やすし


     とどまれば風が追ひ抜く暮の秋         梅田 葵


     暮の秋チャイナタウンに栗焼く香        倉田信子


     がま飾るだらすけの店秋暮るる         河合義和


     瞬きのするどきネオン暮の秋          坂本酒呑狸


     幾度も名を問ふ母や暮の秋           高橋ミツエ


     外海へ消ゆる帆船暮の秋            伊坂壽子


     合はす手に塗香の匂ふ暮の秋          岡田佳子


     去り状に滲む一文字暮の秋           内田陽子


     人気なき魯迅旧居や暮の秋           野島秀子



          



     注射苦や暮秋が妻を消しにくる         秋元不死男


     秋暮色くらきほどもの見えてくる        能村登四郎


     大蛸の乾きて島の秋暮るる           梶山千鶴子


     来ぬバスを待つも一人や暮の秋         北岡文子


     はね藁を食み込む臼や暮の秋          内田百間


     秘事多き墨師と別れ暮の秋           角川源義


     うす虹をかけて暮秋の港かな          飯田蛇笏



          


               沢木欣一の忌日・欣一忌 (平成13年11月5日 逝去 82歳)



     師はみまかれり秋冷の十二階          栗田やすし


     風木舎立ち去り難く冬日浴ぶ          下里美恵子


     欣一忌書棚に辺戸の蘇鉄の実          国枝隆生
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11月 4日

2020-11-03 13:46:57 | Weblog
                        蜜柑・密柑山・蜜柑舟 < 季=冬 >


     お接待皺の蜜柑の甘かりき          沢木欣一 


     食卓のみかんに日さす母の家         細見綾子


     漓江下る船に寄りくる蜜柑売り        栗田せつ子


     人の名の思ひ起せず蜜柑むく         上杉和雄


     きり出せしあとの沈黙みかん剥く       梅田 葵


     蜜柑選る梁に電球付け足して         伊藤範子


     潮騒や夕日まみれの密柑山          江口ひろし


     鉄鉢へ蜜柑布施する朝市女          野島秀子


     索道で蜜柑降ろせり山の晴          中村たか


     生垣の蜜柑の熟るる紀伊の国         則竹鉄男


     石組の高き輪中のみかん小屋         澤田正子


     日暮れまで草焼く煙みかん山         白鳥光江


     蜜柑摘む湖の日ざしを背に受けて       鈴木真理子



          



     蜜柑盗みに山猿がくる雨がくる        秋元不死男


     のこりものに福あるみかん一つかな      久保田万太郎


     出湯の山のぼるにつれて蜜柑山        上村占魚


     水軍の島より蜜柑船出づる          坂本孝子


     みかん一つ机に乗せて駐在所         斉藤葉子


     海彦をときどき呼んで蜜柑摘         鷹羽狩行


     急坂を来し息見せず蜜柑採る         津田清子



          


     
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11月 3日

2020-11-02 13:17:14 | Weblog
                        文化の日・文化祭 ( 旧明治節 )


          文化の日(ぶんかのひ)は、日本の国民の祝日の一つ。
          日付は11月3日。 明治天皇の誕生日にあたり、明治期に天長節、
          昭和初期に明治節として祝日となっていた日です。



     筆立に天眼鏡や文化の日            栗田やすし


     文化の日古紙回収の車過ぐ           片山浮葉


     折皺の国旗かかげて文化の日          上杉美保子


     百円の詩集売る娘や文化祭           中野一灯


     声援に忘れし台詞文化祭            花村富美子


     豆腐屋のラッパ高高文化の日          篠田法子


     外つ国の船の汽笛や文化の日          武藤光晴


     折紙の文化勲章文化の日            河村惠光


     たらひ舟傾きて進む文化の日          岡野敦子


     校長が餅の手返し文化の日           長崎眞由美


     箸袋木綿で作る文化の日            市江律子


     軋みつつ止まる江ノ電文化の日         ころころ



          

            鴫立庵


     手話劇に手話の拍手や文化の日         篠田悦子


     教室に迷路をつくる文化祭           落合水尾


     墨すれば埴輪のゆるる文化の日         秋元不死男


     文化の日幹は画鋲をあまた刺          福永 耕二


     よその猫雑草園に文化の日           山口青邨


     明治節たからかに晴れ軽気球          成瀬桜桃子


     明治節乙女の体操胸隆く            石田波郷



          



          
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11月 2日

2020-11-01 13:16:11 | Weblog
                         山茶花 < 季=冬 >


     山茶花は咲く花よりも散つてゐる           細見綾子


     山茶花に遺影の眼鏡はし光る             沢木欣一


     烈公の蟄居の庭や白山茶花              栗田やすし


     山茶花や縁切状の女文字               矢野孝子


     葬の庭白山茶花に佇ちつくす             田畑 龍


     山茶花の白こぼれつぐ瑠璃光寺            福田邦子


     山茶花の真赤一輪朝の卓               花田紀美子


     白山茶花お百度石に薄日差す             菊山静枝


     山茶花の冷たさに触れ父を恋ふ            倉田信子


     湯けむりに濡れて山茶花艶めけり           前田昌子


     夕茜庭の山茶花白散らす               中山ユキ


     山茶花のこぼれし庭に陶の屑             神谷洋子



          



     山茶花に入日を惜しむ時津風             飯田蛇笏


     山茶花の咲くだけ咲いて星出づる           永井龍男


     山茶花の咲くか散るかの目白押し           武田和郎


     山茶花の散る月光に畳職               黒田杏子


     また逢へた山茶花も咲いてゐる            種田山頭火


     山茶花の夕日ひとひら剥がれけり           林 翔


     山茶花の暮れゆきすでに月夜なる           水原秋櫻子



          
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