岩波書店から刊行されているシリーズ「ここで生きる」の一冊として今年の1月に刊行されたこの本について、「まず『れるられる』というタイトルが思い浮かんだ」といったお話を先日のトークイベントで著者の最相葉月さんご本人から伺った。
さて、ノンフィクションライターの最相さんが書かれたこの本は
第1章 生む・生まれる
第2章 支える・支えられる
第3章 狂う・狂わされる
第4章 断つ・断たれる
第5章 聞く・聞かれる
第6章 愛する・愛される
と、、「れる」(能動)と「られる」(受動)の境目についての6章からなるエッセイだ。
最相さんは、ご自身の身近にいる方々や取材を通じて知り合った方々との間で感じられたことや経験されたことを契機に、受動と能動の境目を超えて考察を深めることで、その境目を丹念に浮き彫りにされていく。途中に挿入される取材内容が、主題を鮮やかにしていく。
軽やかな語呂のタイトルとは異なり、それぞれの内容が心の奥深くに刺さるような感覚を覚えた。そして、それぞれで提示された問題に対する方向性が提示されているという訳ではないのに、読み終えると少し心が軽やかになった気がした。それは、僕の心が折れやすいからかもしれない。
誰もが「れる」の立場に居続けるわけでもないし、また、「られる」の立場に居続ける訳でもない。普段はそんなことを考えることはないけど、この本を読んで、改めてそんなことに意識が向かったことも、心を軽やかにしてくれたのだろう。