「トワイライトエクスプレス」の、あの落ち着いた深い緑色の車体と、旅情を誘う食堂車に憧れたころはある。ただ、大阪と札幌を結ぶ列車に縁はなく、また、一人で乗るには淋しさを感じるだろうと思い、乗ろうと思ったことはなかった。
一方、夏までは臨時列車として残るという「北斗星」には、以前一度乗ったことがある。当時勤めていた会社で札幌に出張した帰りに利用した。一人用個室でそれはそれで快適ではあったけど、息苦しさを感じてロビーのソファーに陣取り、映画『シコふんじゃった』を視ていたのを思い出す。夕食は札幌駅で購入した駅弁で済ませたものの、食堂車の雰囲気を味わいたいと、パブタイムを利用しお酒とおつまみをいただいた。
越後湯沢と金沢を北越急行経由で結んでいた「はくたか」には、15年ほど前と昨年の2度乗車したことがある。ほくほく線内での160km/h運転が真っ先に思い浮かぶけど、快適な列車だった。そう、昨年黒部に行った時に長岡から「北越」を利用した。リニューアルを重ねたとはいえ国鉄時代の電車で、今思うと昔々に乗った上越線の「とき」や房総特急(これも大幅に削減されるようだけど…)の雰囲気に似ていた。
子どものころは自由に使えるお金が少なく、今で言う「乗り鉄」なんて首都圏が精いっぱいだった。一方、社会人になってからしばらくは鉄道旅行をしていたけど、飛行機を利用するようになると東京から大阪までの新幹線すら長い道のりに感じてしまっている。まあ、前後のアクセスや搭乗手続きなどを考えると新幹線のほうが便利ではあるけど…
そんな感じなので、こうした切符争奪戦を冷めた目で見てしまう。廃止される列車には「なぜもっと早く乗らなかったのか」と、また新たに登場する列車には「いつでも乗れるじゃないか」と思ってします。彼らが目指すのはメモリアル列車であることはわかっているけど。。
東北・上越新幹線が開通した1982年(昭和57)、多くの列車が廃止され、その姿を写真に収めようと友人と上野駅や両国駅を訪れ、シャッターを切った。でも、その時に感じたのは同じく写真を撮りに集まった人たちの怒号の恐ろしさだった。それ以来、そうした場所に行くことは少なくなり、やがて行かなくなった。そう、先日東京駅で記念Suicaを求め集まった人たちが購入できなかったために大騒ぎを起こしたという件があったけど、テレビに映ったその光景に似たものだった。
自分の思い通りに行かないときって、いくらでもある。そんな時、人に当たったり、酒や食べ物で誤魔化したり、内に籠ったりとさまざまな対応がある。そして、自分を見失ってしまう時がある。でも、そこを何とか踏みとどまらないと、他人を傷つけてしまうことにつながる。殴るまで行ってしまうと論外だけど、罵声を浴びせるのも暴力の範疇であり、非難されるべきものだと思う。
3月のダイヤ改正前後にはまたこうした光景が見られるだろうけど、その時、ちょっとし心遣いや譲り合いで、笑顔で去るものを送り、来るものを迎えてほしいと願う。