踊る小児科医のblog

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ニュースレーダー20150113(前編)無煙のまちづくりの日

2015年04月06日 | 禁煙・防煙

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タバコは喫煙者「3人に2人」の命を奪う 男性2.76倍、女性2.95倍も死亡率が高い

2015年03月21日 | 禁煙・防煙
twitterやFacebookでチェックしていた記事ですが、元論文の図をPDFファイルから切り取ってみました。従来の定説の1/2から2/3に大きく数字が増加しています。確かに、従来の半数というのはやや過小評価ではないかという感覚はありましたが、ここまで大きい値が出たことは驚きであり認識を新たにしなければいけません。



累積死亡リスクの比較で男性は9.0~9.6歳、女性は9.5~10.1歳も寿命が縮まる。
こんなの見て、よく平気でタバコ吸い続けられるものだと思いますが、自分だけはタバコ吸ってても早死にすることはないと思うことが、ニコチン依存症の症状そのものなのです。

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タバコは喫煙者「3人に2人」の命を奪う、という大規模調査の結果
2015.3.6 FRI

オーストラリアで、45歳以上の男女を対象に大規模な追跡調査を行ったところ、喫煙者の3人に2人が、喫煙に関連した疾患によって死亡するとの結果が出た。1日25本以上吸っている人の死亡率は、非喫煙者の4倍だという。

喫煙と疾患の関連性を示した研究で、おそらく最も大きな影響力をもつのは、1956年に発表された「British Doctors Study」だ。同研究は、喫煙者の50%以上が、喫煙に関連した疾患で死亡することを裏付ける、有力な証拠を提示している。

ところが、このほど『BMC Medicine』誌に発表された最新研究によると、喫煙による死亡率は実際にはさらに高く、66%にも達する可能性があるという。すなわち喫煙者の「3人に2人」が、喫煙に関連した疾患によって死亡する計算だ。(以下、全文は下記リンク参照)

http://wired.jp/2015/03/06/cigarettes-a-product-that-kills-two-out-of-three-of-its-users/
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記事の元論文
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Tobacco smoking and all-cause mortality in a large Australian cohort study: findings from a mature epidemic with current low smoking prevalence
http://www.biomedcentral.com/1741-7015/13/38
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「未成年の喫煙率ゼロと受動喫煙ゼロ タバコフリー社会を自ら選択するために」思春期問題連絡懇談会(2/7)

2015年02月21日 | 禁煙・防煙
第11回 八戸地区思春期問題連絡懇談会
「未成年の喫煙率ゼロと受動喫煙ゼロ タバコフリー社会を自ら選択するために」
平成27年2月7日(土)

 WHOおよび世界各国の政策はTobacco ControlからEnding the Tobacco Epidemic(タバコの流行の終焉)へと移行している。

 タバコは20世紀に大流行した疫病であり、WHOの推測では世界で毎年約600万人がタバコにより死亡し、そのうち約60万人は受動喫煙により殺されている。これは自然死ではなく外因死であり、規制政策により助かる命である。

 タバコ産業による現代版ホロコーストに対し、「喫煙および受動喫煙が健康、社会、環境及び経済に及ぼす破壊的な影響から現在及び将来の世代を保護すること」を目的に、WHOタバコ規制枠組み条約(FCTC)が2003年に採択され、2005年には我が国でも発効した。国際社会がタバコ会社の企業活動を封じ込め、タバコの非合法化以前に喫煙率をゼロに近づけ、タバコ戦争に終止符を打つための最強の武器である。

 その後の10年間で各国政府が屋内全面禁煙、大幅増税、画像警告、広告・スポンサー禁止などの規制を着実に実施しているのに対し、日本政府はFCTCをほとんど無視する姿勢を取り続けている。FCTC制定時に規制を骨抜きにしようとした日米独の三国は「悪の枢軸」と呼ばれたが、米独はすでに厳しい規制政策に転換している。2014年の喫煙大国ロシアに引き続き、2015年には韓国でも飲食店の全面禁煙や大幅増税が実施され、中国やインドネシアでも規制が進んでいる。日本が世界最低レベルの喫煙天国であることを多くの国民は認知していない。

 タバコ(喫煙)は生活習慣病ではない。食事や飲酒、運動などは「適度な生活習慣」が存在するが、適度な喫煙というのは存在しない。喫煙すること自体が病気であり、喫煙者は治療を要する患者であると9学会ガイドラインに明記されたのは2005年だが、一般社会のみならず医療関係者の間でもその認識は定着していない。

 タバコフリー世代をつくり、若者が自ら「タバコを吸わない」ことを選択するためには、無煙環境で育てることが必要であり、「子どもが吸うのは禁止されているが大人は自由だ」という認識を転換する必要がある。タバコを吸う自由や権利などではなく、タバコから自由(フリー)になることが肝要である。タバコは合法的であるが故に、麻薬や危険ドラッグより犠牲者が桁違いに多く危険だという合意が前提となる。

 未成年の喫煙率ゼロは出口の光が見えつつある。2011年の青森県の調査では、高3の喫煙経験率は2007年と比べて男女とも半分以下に低下している。一方で、中3では男女とも高3と大きな差がなく、2007年と比べても低下速度は鈍い。2015年の調査結果を期待したい。

 全国調査でも未成年の喫煙率は2000年以降直線的に低下しており、各種調査から、未成年は2020年以前、医師は2020年代前半、成人男女は2030年代前半までに喫煙率ゼロになると予測している。喫煙率を決める新規喫煙者数(未成年、成人=特に女性)、禁煙者数、死亡者数の4要素をみても、喫煙率が激減する以外の可能性はなく、タバコフリー社会の実現は夢物語ではない。ただし、青森県の子どもの父母の喫煙率は異常に高く、『最後の喫煙者』(筒井康隆)が青森県民となる蓋然性は高い。

 先の大戦、水俣病、薬害エイズ、原発事故などの歴史を見ても、この国の政府が合理的かつ国際的な判断の元に、国民の命を優先する政策に転換することを待つ猶予はない。国を置き去りにして現実を前に進めていくしかない。

 次の目標は大学生、主戦場は飲食店である。

 2013年以降、欧米では電子タバコが大流行し、米国では十代の経験率がシガレットを上回る事態となっている。日本でも流行が拡大しつつあり、20年以上にわたる国際的なタバコ規制の取り組みが無に帰する危機に瀕している。迅速かつ一致した対策が求められている。

「妊婦の喫煙と子どもの受動喫煙 タバコは最大の健康被害」県南周産期セミナー講演抄録(1/31)

2015年02月21日 | 禁煙・防煙
第37回 県南周産期セミナー
「妊婦の喫煙と子どもの受動喫煙 タバコは最大の健康被害」
平成27年1月31日(土)

 青森県の妊婦の喫煙率は2013年に4.6%と初めて5%を割り込んだ。ただし、これは妊娠判明後の公式な数字であり、実態はもう少し高いものと考えられる。一方、妊婦の同居者の喫煙率は5割を超えており、妊婦、胎児、新生児の受動喫煙は依然として深刻な状況にある。

 全国的にみても、2000年代から妊婦の喫煙率の低下傾向が明らかになっているが、年代別にみると若年層ほど高く、未成年妊婦の喫煙率は14.3%に達する(2010年)。

 近年、乳幼児突然死症候群の原因として致死的な遺伝性不整脈の関与が示されてきているが、出生前・出生後の喫煙・受動喫煙が最大のリスクファクターであることに変わりはない。

 妊婦の喫煙により流早産、周産期死亡、ダウン症を含む様々な先天異常、ADHDなどの発達障害が増加し、父親の喫煙でも二分脊椎などの先天異常が増加することは確定的となっている。

 低出生体重児の割合が2009年には9.6%に達し、平均出生体重は1940年代のレベルまで減少し続けている。その原因として妊娠前のやせや妊娠中の栄養摂取不足が指摘されているが、若年女性の喫煙率が2000年前後まで増加し続けてきた事実がしばしば忘れ去られている。

 低出生体重児が成人期の心血管疾患、高血圧、2型糖尿病のハイリスクであるというBarker仮説や、胎児期や乳幼児期の環境変化に対応してDNA塩基配列の変化を伴わないエピジェネティック変化(DNAのメチル化やヒストン修飾など)が生じて3世代まで連鎖するというDevelopmental Origins of Health and Disease(DOHaD)仮説が受け入れられてきている。妊娠中の喫煙・受動喫煙が児の成人後だけでなく次の世代にまで影響する可能性が示唆されているのである。

 喫煙者は月経困難症の頻度が有意に高く、喫煙開始年齢が早いほどリスクは高くなる。

 親の喫煙と本人(男女とも)の喫煙は不妊の大きな要因となっており、不妊治療希望者は夫婦ともに禁煙することを条件とすべきである。

 喫煙は男性で10年、女性で11年寿命を縮め、喫煙女性の死亡率は非喫煙者の3倍で、50~70歳の死亡の2/3は喫煙が原因である(いずれも英国の調査)。喫煙者の肌や容貌は40代を過ぎるとSmoker’s faceと称される特徴が明らかとなる。タバコは老化促進剤である。

 妊娠可能年齢の女性に多い子宮頸がんや乳がんは、喫煙が大きなリスクファクターであるにも関わらず、その危険性はほとんど伝えられていない。閉経前の女性では受動喫煙でも乳がんのリスクは約2倍に高まる。

 個人差が大きいが、禁煙治療後に体重は2kg程度増加することが多い。しかし、実際には喫煙者の方が肥満は多く、喫煙してやせようとすることは自殺行為と言える。

 スリム、ライト、メンソールなどのブランドや、若い女性をターゲットとした巧妙なマーケティング戦略により、ティーンエイジャーが次々と「釣り上げられていった」結果として、妊婦・母親の喫煙が増加し、子どもの受動喫煙、子どもの喫煙開始へと悪循環が続いてきた。

 WHOタバコ規制枠組み条約(2005年発効)により、世界各国でスリムなどの名称禁止、メンソールの使用禁止、スポーツやイベントへのスポンサー活動禁止など、タバコ産業への厳しい規制が加えられてきたが、日本国内では有効な対策がほとんど実施されず、女性向け景品付きのブランドがコンビニの店頭でキャンペーン商品として売られている特異な状況にある。

 大学生世代の男女の喫煙防止と、出産後の再喫煙防止対策が不足していた。運動は依存症、うつ、ストレス、加齢の特効薬であり、産後うつ予防、育児支援・虐待予防、再喫煙防止の3つと運動をセットで支援することを提案したい。

投票率と喫煙率に関連性はあるか? 2014年総選挙投票率で検証してみた

2015年02月19日 | 禁煙・防煙
仮説「喫煙率が高いほど投票率は低い」
(例:青森県、逆は島根県)

※この仮説は、青森県の投票率が最低なのと最短命県であることは偶然重なったのではない、という主張から派生したものです。

試しに都道府県別の投票率(2014年)と喫煙率(2013年)の相関をみてみましたが、都道府県によってバラつきが大きく、これだけでは全く相関がない(しかも相関係数はプラス)という結果になりました。



もちろん投票率が喫煙率だけで決まってくるわけはなく、直接の因果関係を想定しているわけでもありません。
(「タバコを吸うと投票に行きたくなくなる」といった…)

社会経済学的なファクター(最終学歴や収入や職業など)がベースにあって、社会に対する意識(→投票率)と、健康やライフスタイルの選択(→喫煙率)という別々の形で表に出てくることを想定して考えてみました。

当然、その他にも選挙区ごとの状況とか、多くのファクターがあるでしょう。
逆に、田舎選挙で加熱して、タバコ吸っているオヤジが大挙して投票に行くという現象もあるかもしれない。。

ただ、心眼かもしれないけど、青森・福島の右下の方から、島根・奈良の左上の方に帯を渡してみると、そのラインに乗っている県が多そうに見えてきませんか?

投票率は男女合計のデータしか得られなかったので、男性だけで比較してみると、もう少し関連性が見えてきそうな気もします。(…わかりませんが)

もっと直接的なフィールド調査で、年齢や階層などをコントロールして、様々な因子を多変量解析で調べれば何かわかるのかも。(あるいは既にそういった研究はされているのかもしれませんが、とりあえず私の興味はここまでで…)

「子どもの受動喫煙をゼロにするために 幼稚園・保育園の役割」(1/24講演抄録)

2015年02月01日 | 禁煙・防煙
八戸市医師会乳幼児保健講習会「子どもの受動喫煙をゼロにするために 幼稚園・保育園の役割」
平成27年1月24日(土)

 米国政府は「国内の子どもの13人に1人、560万人がタバコのために早死にする。助けることのできる輝ける命、次世代をタバコフリーに」というキャンペーンCMを流している。一方で、日本国内、青森県内の子どもたちは、外国人喫煙者が「喫煙天国」と感じる世界最低レベルのタバコ規制政策の中で育っている。

 2003年の健康増進法施行後、2004年には県立高校や八戸市などの小中学校が敷地内禁煙となったが、2014年に県内全ての小中学校が敷地内禁煙になるまで十年もの歳月を費やした。

 一方、より幼い子どもが通う幼稚園・保育園の状況はどの市町村でも把握されていなかったため、2014年3月に八戸市医師会で市内全施設の調査を実施したところ、敷地内禁煙化率は67.9%(幼稚園78.3%、保育園65.2%)と低く、職員の喫煙率は男性37.0%、女性1.3%であった。施設の禁煙化状況別に喫煙率を比較したところ、男女とも敷地内禁煙ではない施設で喫煙率が高い傾向にあり、女性では有意差を認めた。

 2006年の米国公衆衛生長官報告において「受動喫煙は健康と命を奪い、安全無害なレベルはなく、分煙や換気では防ぐことができない」と結論づけられ、医学的な論争は終結した。2007年のWHOタバコ規制枠組み条約ガイドラインでも「例外なき屋内全面禁煙を罰則のある法律や条例で実施すること」が加盟国に求められた。しかし、日本国内ではJTや文筆家、一部メディアなどによる「受動喫煙の害は証明されておらず、分煙で防げる」という誤ったキャンペーンが効を奏し、2014年改正の労働安全衛生法でも義務規定が外された。受動喫煙により世界で毎年約60万人、国内でも1万人以上の死者を出し続けている現状を国内でのみ否認する言動は、「ホロコーストはなかった」と主張することに匹敵する犯罪行為と言える。

 2020年の東京五輪も「飲食店で自由にタバコが吸える」オリンピックになる見込みである。

 受動喫煙とは第一には健康被害であり、喫煙により生じる健康被害は、エビデンスのレベルに違いはあれ受動喫煙でも生じると考えるのが合理的である。それ以上に重要なのは、受動喫煙は「子どもがタバコを吸うこと」そのものだということである。青森県の子どもの父親の5割以上、母親の約4分の1が喫煙者であり、小学生への喫煙防止教室の感想文を読んでも、親が喫煙者である児童は、タバコの煙が周囲にあることの危険性や疑問をそれまでほとんど認識していなかったことがわかる。

 そのような環境で育った子どもは、身体的にも精神的にも喫煙に対するハードルが低く、容易に喫煙者となり、世代を超えた悪循環が引き継がれていく。収入の低い家庭ほど喫煙率は高く、肥満や運動不足も多い。先進国と途上国との対比で見られる関係が、青森県にあてはまる。県民所得が低く、肥満や喫煙率が高く、最短命県である。この認識から出発すべきである。

 地元志向が強く、比較的低学歴・低収入で、車やショッピングセンターを好み、喫煙率・飲酒率が高い若年層を「マイルドヤンキー」と称する論考が注目を集めている。20代や未成年の喫煙率の低下傾向が顕著となり、30代~40代の喫煙率が最も高い現状は、この層と重なり合う部分が大きいものと推察される。

 2010年に提唱されたサードハンドスモーク(三次喫煙)も含め、子どもの受動喫煙をゼロにするためには、家族の喫煙率をゼロにする以外に方法はない。幼稚園・保育園の敷地内禁煙化はスタートライン以前の問題で、保育士、教師、医師など子どもに関わる人の喫煙率ゼロと、WHOの求める公共的施設の屋内全面禁煙、タバコ税増税、画像警告、広告・スポンサー禁止などの有効な規制政策を早急に実施するという簡単な解決策が目の前に存在している。

「小中学校における喫煙防止教育 喫煙率ゼロと受動喫煙ゼロを達成するために」(11/29講演抄録)

2015年01月30日 | 禁煙・防煙
八戸市医師会学校医研修会「小中学校における喫煙防止教育 喫煙率ゼロと受動喫煙ゼロを達成するために」
平成26年11月29日(土)

 未成年の喫煙率ゼロという「お題目」の本質は、学校教育や家庭のしつけの問題ではない。教職員、両親や家族、大人社会が「タバコを吸ってはいけない」という共通認識の元に、自らの喫煙率ゼロを目指さない限り達成できない。

 喫煙は人とメディアを介して広がる流行病(epidemic)であり、20世紀には1億人が死亡し、このまま放置すれば21世紀には10億人が殺される。青森県は最短命県で喫煙率は男性1位、女性2位(いずれも2010年)であり、小中高生の父親の5割以上、母親の4分の1が喫煙者である。親が喫煙者だと子どもの喫煙経験率は倍増し、母親が吸うとその傾向はさらに強まる。子どもの喫煙は大人が原因である。

 日本人の死亡原因のトップは高血圧や運動、食塩などを引き離して「喫煙」であり、青森県の脱短命県政策は順序が間違っている。喫煙はそれ自体が病気(ニコチン依存症+喫煙関連疾患)で、喫煙者は積極的治療を要する患者であり、禁煙は最も確実かつ短期間に大量の疾病や死亡を劇的に減らすことのできる方法である。

 英国医師は自らの調査で「タバコは寿命を10年縮める」ことが判明し、1960年代にタバコと決別したが、日本では1970年代末にようやくピークを過ぎ、そのツケを現在支払わされている。タバコは老化促進剤であり、非喫煙者の倍のペースで死亡していく。35~69歳の喫煙死者の平均損失余命は22年である。

 喫煙者がだまされている最大の嘘は「ストレス解消神話」である。ニコチンによる一時的な多幸感は、反復摂取によって耐性を生じ、摂取回数や量が増加してニコチン依存症が形成される。同時に、二次的な環境刺激による「条件づけ(条件反射)」によって心理的依存が生まれ、ニコチン欠乏時の渇望(ストレス)が増強される。非喫煙者にはこのストレスは存在しない。タバコはストレスを増加させ、禁煙するとストレスは減少するというのが真実である。

 受動喫煙により世界で毎年約60万人が死亡しており、そのうち約16万人は小児である。乳幼児突然死症候群により国内で毎年150人前後の乳児が死亡しているが、現在ではタバコの関与が最も大きいと推測されている。喫煙者の家庭のPM2.5は平均30μg/m3高く、受動喫煙による生涯死亡リスクは10~20%に達する。これは「放射線被曝100mSvによる0.5%増加」の20倍以上のリスクであり、環境基準(10万人に1人)にするには全面禁煙しかない。

 WHOタバコ規制枠組み条約(FCTC)受動喫煙防止ガイドラインの求める「例外なき全面禁煙」の実施期限が2010年だったにも関わらず、日本では飲食店などの公共的施設の喫煙が放置されている。飲食店を全面禁煙にした国では心筋梗塞や脳卒中が15~20%減少したと報告されている。水俣病やアスベストなどと同様に、命よりも金が優先される政治が続いている。

「タバコは嗜好品で依存性は弱い。分煙で受動喫煙は防げる。タバコ税で社会に貢献」などといった神話はいずれも意図的な嘘や詭弁である。「タバコを吸う権利なんぞガキと貧乏人と黒人とバカにくれてやる」というタバコ会社重役の発言をビデオで紹介し、真実を学んでいる。

 FCTCの求めるタバコ税大幅増税や画像警告により莫大な数の命が救えるにも関わらず実施されない。タバコ会社から広告収入を得ているメディアは、FCTCでタバコ産業の広告やスポンサーシップが禁止されていることを報じない。

「タバコに害があるから吸わないようにしよう」ではなく、タバコで誰が儲けて誰が損をしているか、どんな真実が隠されているのかを自分で判断できるようになることが重要であり、危険ドラッグなどの様々な問題にも通じる。

 禁煙治療により楽に禁煙できる。喫煙する親には子どもから直接伝えるのが効果的である。

「健診で何も異常がなかったら吸っていても大丈夫でしょうか?」=小学生の疑問に答える (10)

2015年01月23日 | 禁煙・防煙
 病気で亡くなった人も、病気が発見される前までは健診で異常が発見されなかったわけですから、健診で何も異常がなかったからといって吸い続けても大丈夫ということは言えません。

 タバコを吸い続けていると、40代後半から70代まで、タバコを吸わない人と比べて約2倍のペースで死亡者が増え続けます。一つ前の質問「禁煙したら健康への影響は減りますか」に書いたように、40代前半までに禁煙すれば、吸わない人との差は明らかではなくなりますので、「健診で異常が発見される前に」できるだけ早く禁煙するようにしましょう。

 病気が発見されてから禁煙するのでは遅いのです。

「禁煙したら健康への影響は減りますか?」=小学生の疑問に答える (9)

2015年01月23日 | 禁煙・防煙
 もちろん、禁煙すれば確実に病気のリスク(病気になる危険性)は下がり、禁煙してからの年数が長ければ長いほど、タバコを吸わない人のレベルに近づきます。ただし、その下がり方には病気によって差があり、虚血性心疾患(心筋梗塞など)は10年たてば吸わない人に近いレベルまで下がりますが、肺がんは10年たった後でも吸わない人の1.4倍程度のリスクが残ります(毎日吸っていれば4.5倍も高いので十分下がったとは言えますが)。

 当然のことながら、若いうちに禁煙すれば健康への影響は少なくてすみ、歳をとってから禁煙すると影響は残ります。「寿命が10年縮む」という英国医師の調査でも、40代前半までに禁煙した人は、吸わない人とあまり差がない程度に寿命が回復しています。

 「肺が黒くなったのが元に戻るのか?」という質問を受けたこともありますが、生きている人の肺を定期的にのぞいてみることはできないので、直接確かめた人はいないと思います。人間の体には異物を除去する機能がありますが、おそらく全部元通りになるのは難しいだろうと思います。ですから、禁煙するのは早ければ早いほど良いのです。

「ニコチンを他の目的に活用できませんか?」=小学生の疑問に答える (8)

2015年01月18日 | 禁煙・防煙
 ニコチンの薬としての作用を医療のために使うことができないか、という考えはこれまでもありましたが、現実には禁煙治療で使われるニコチンパッチ(貼り薬)やニコチンガム以外には何の役にも立っていません。

 ニコチンそのものは、授業でお伝えしたよう、タバコ1本で赤ちゃんが死亡し、3本で大人が死亡するほどの猛毒です。禁煙治療のためのニコチンパッチも、体重や喫煙本数によって薬の量の調節をしないと、頭痛や吐き気、倦怠感(けんたいかん)などが強く出ることがあり、微量でもニコチンを体に入れるのは危険なことなのだと実感しました。

 なお、ニコチンの毒性を低減してつくられたネオニコチノイドという種類の物質が農薬や殺虫剤として世界中で使用されるようになり、環境への影響が新たな議論になってきています。ニュースでも伝えられた「ミツバチの大量死」との関連が指摘され、ヨーロッパでは規制が強化されてきていますが、日本では逆に規制を緩和する方向になっているようです。この点についての議論はまだ決着していませんが、注意を払っておくべき問題としてここに追加させていただきました。

「タバコの種類によって害に違いは?有害物質のないタバコは?電子タバコは?」=小学生の疑問に答える (7)

2015年01月18日 | 禁煙・防煙
 タバコの種類による害の違いはありません。全てのタバコは有害です。この点については、『タバコと健康』というパンフレットでも説明されているので省略しますが、マイルドとかライト、スリム、低タールなどといったタバコの商品名や説明にだまされてはいけません。

 授業でもお話ししたように、日本で一番売れていた「マイルドセブン」が「メビウス」に名称を変更したのは、「ブランドイメージを一新するため」ではなく、ヨーロッパやアメリカでは「マイルド」という名称を使うことが禁じられたからなのです。そんなことは、新聞でもテレビでも報じられません。一番大切なことは、表立って報じられないのだという例として覚えておいて下さい。(別の例として原発事故の時の政府の説明をお示ししたことを覚えているかと思います。)

 ここ1~2年で、アメリカやヨーロッパ諸国では、中国製の電子タバコが未成年や若者の間で流行してきて大きな問題になっています。電子タバコにも程度の違いはあれニコチンや発がん物質などの有害物質が含まれているので危険です。

 紙巻きタバコ(シガレット)や電子タバコだけでなく、「噛みタバコ」などを含めて、全てのタバコ製品は有害であり、安全なタバコというものは存在しません。

 全てのタバコ製品は、「喫煙者の健康のため」でも、「喫煙者が禁煙しやすくするため」でもなく、タバコ会社が利益を得るために売られているのだということを忘れないようにして下さい。

「タバコはなぜ生まれたのですか? 国とタバコ会社の関係は?」=小学生の疑問に答える (6)

2015年01月09日 | 禁煙・防煙
 タバコの歴史は、コロンブスがアメリカ大陸から持ち帰ったところから始まるようです。当時のアメリカ大陸では、先住民が宗教的な儀式のときに用いていたと考えられています。日本には、戦国時代(別の説によると江戸時代初期)に鉄砲やキリスト教などと一緒に伝来しました。戦争の道具である鉄砲とタバコがセットになって来たことに因縁を感じます。(戦争とタバコ-1)

 江戸時代には浮世絵に描かれているように「キセル」という道具に詰めて吸われていました。この時代に、貝原益軒というお医者さんは『養生訓』(1712年)という有名な本の中に「タバコには習慣性があってやめられなくなり、病気になりやすく、貧乏人には出費が多いので、最初から吸わない方が良い」と記載しています。タバコの害や依存性が科学的に解明されてきたのが1950~60年代ですから、その250年も前に世界に先駆けて現代にも通用する警告を発していたことに驚かされます。

 明治時代になって、日露戦争で大国ロシアと戦うためにお金が足りなくなり、それまで民間会社が作っていたタバコ(紙巻きタバコ)を、国が独占して販売して、その利益を戦費にあてることになりました。(戦争とタバコ-2)

 その後も、国が一貫して製造販売し続け、第二次大戦後は「専売公社」という国営企業で売られていました。

 1985年(昭和60年)に、国鉄(現在のJR各社)や電電公社(現在のNTT各社)などと共に民営化され、日本たばこ産業(JT)という民間会社になったのですが、実際には財務大臣が株式の2分の1を保有し、「たばこ事業法」という法律でタバコ産業を振興していくことが定められた、実質的な準国営企業と言える形態が続いています。(東日本大震災の後に復興財源のために株式の6分の1が売却され、現在では3分の1の保有になっています)

 現在、タバコによる健康被害から国民を守る政策は「厚生労働省」が担当し、タバコを売って税収を確保する政策は「財務省」が担当しています。

 つまり、国は片方の手でタバコを売り、もう片方の手でタバコの規制をしようとしているという、他の国ではあり得ない構造になっているのです。実際には、財務省は全ての省庁の予算を握っているため権力が強く、他の国で実施されているようなタバコ規制政策がほとんど実現できないという状況にあります。

 世界で毎年600万人もの犠牲者を出し続けているタバコ産業と、各国政府や保健・医療関係者との戦いを「タバコ戦争」と呼んでいます。(戦争とタバコ-3)

 この続きは「なぜ日本では外国と同じような対策がなされていないのでしょうか?」という質問のところでお答えします。

「なぜタバコを売るのですか? タバコを作っても違法にならないのですか?」=小学生の疑問に答える (5)

2015年01月09日 | 禁煙・防煙
 これが一番大切な疑問で、毎年同じような感想や疑問を書いてくれる子が何人もいますが、そう感じてもらえるようにお話をしたつもりなのです。

 タバコは医学的に言えば禁止薬物に指定されるべきで、本来なら法律で禁止しなくてはいけない製品です。タバコにはニコチンという依存性のある薬物が入っていて多くの人がやめられなくなる上に、吸い続けると半数の人を死亡させます。もし、このような消費者向けの商品がタバコ以外にあったら、タバコと同じように何の規制もなく自由に売られているでしょうか。

 タバコが違法ではない理由の一つは、タバコの害や依存性がわかる前からタバコが売られていたからなのですが、問題はそんなに簡単ではありません。

 世界中の国でタバコを法律で禁止している国はまだありません。ブータンは唯一タバコの国内販売を禁じていますが、これは仏教の教えによるもので、首都では「抜け道」から入手する手段はあるようです。(同じ仏教徒の多い日本では、一般国民だけでなくお坊さんでもタバコを吸っている人が結構いるのはどうしたわけでしょう。)

 『タバコと健康』というパンフレットで説明されている「WHOタバコ規制枠組み条約」には、日本も含めて世界のほとんどの国が参加しています。この条約は、タバコ会社が世界中で販売を拡大して被害が広がるのを防ぐために、タバコの価格、販売、広告、受動喫煙防止などのあらゆる面での規制を徹底的に行い、結果的にタバコを非合法化するよりも前に喫煙率がゼロに近づくことを優先しているようです。
 その背景には、タバコ会社の莫大なお金(タバコマネー)を元手とした強大な政治的圧力に対して、各国政府が十分に対抗することができていないという現実があります。(それに対抗するために条約がつくられたのです)

 さらに、日本では国とタバコ会社が非常に特殊で密接な関係にあるため、規制が全く進まないという事情があります。これについては、次のタバコの歴史のところで続きを書きます。

「子どもがタバコを吸っても許されるのですか? 脳に害があるのでは?」=小学生の疑問に答える (4)

2015年01月08日 | 禁煙・防煙
 日本には「未成年者喫煙禁止法」という、明治33年(1900年)に世界に先駆けて制定された法律があり、20歳未満の未成年者がタバコを吸うことが禁じられています。ただし、この法律では、子どもがタバコを吸うと、その子が捕まったり罰せられるのではなく、親や販売した商店が罰金刑になるのです。

 子どもがタバコを吸ってはいけないのは、授業で話したように、まだ発育途上の子どもがタバコを吸うと、脳の発達だけでなく肺や全身に対する悪影響が強くなり、33歳で肺がんになったブライアンさんのように、若いうちに病気になって死んでしまったり、ニコチン依存症の程度が強くなって、禁煙しようとしてもやめられなくなるからです。

 子どもは法律で決まってるからダメで、20歳になったら吸ってもいいということでは決してありません。

 また、授業では話しませんでしたが、子どもの頃からタバコを吸っていると、その次に大麻(マリファナ)や危険ドラッグなどの禁止薬物に手を出しやすくなるので、その入口になるという意味で、タバコは「ゲートウェイ・ドラッグ」と呼ばれているのです。

「タバコの本数を減らせば害は減りますか?」=小学生の疑問に答える (3)

2015年01月07日 | 禁煙・防煙
 結論から言うと、害はほとんど減りません。禁煙するしかないのです。

 今すぐに禁煙する気はないけれど、健康のために本数を減らすという人がいます。確かに同じ喫煙者の中でも、1日に吸う本数が多いほど、あるいは吸っていた年数が長いほど、タバコによる病気や死亡のリスクは高くなるので、本数を減らせば少しはマシなように思えるのかもしれません。ただし、ここには大きな落とし穴があります。

 一日中我慢してガマンして、ニコチン切れの状態が続いてからタバコを吸うと、タバコが「よりおいしく」感じられ(錯覚)、ストレスが解消されて(これも錯覚)、自分にとって「なくてはならないものだ」という潜在意識が高められてしまい、結果的に禁煙することが難しくなる可能性が高いのです。

 しかも、そのようにしてニコチン依存症が強化されてしまうと、少ない本数で維持することができなくなり、結果的に元の本数に戻ったり、さらに吸う本数が増えてしまう可能性もあります。

 昔は本数を減らしながら禁煙するという方法をすすめる人もいましたが、今はむしろ禁煙が難しくなる「良くない方法」と考えられています。

 それに加えて、家族に対する受動喫煙の害もあります。タバコは1本でも有害ですので、受動喫煙をゼロにするには家族全員が禁煙するしか方法はありません。