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「未成年の喫煙率ゼロと受動喫煙ゼロ タバコフリー社会を自ら選択するために」思春期問題連絡懇談会(2/7)

2015年02月21日 | 禁煙・防煙
第11回 八戸地区思春期問題連絡懇談会
「未成年の喫煙率ゼロと受動喫煙ゼロ タバコフリー社会を自ら選択するために」
平成27年2月7日(土)

 WHOおよび世界各国の政策はTobacco ControlからEnding the Tobacco Epidemic(タバコの流行の終焉)へと移行している。

 タバコは20世紀に大流行した疫病であり、WHOの推測では世界で毎年約600万人がタバコにより死亡し、そのうち約60万人は受動喫煙により殺されている。これは自然死ではなく外因死であり、規制政策により助かる命である。

 タバコ産業による現代版ホロコーストに対し、「喫煙および受動喫煙が健康、社会、環境及び経済に及ぼす破壊的な影響から現在及び将来の世代を保護すること」を目的に、WHOタバコ規制枠組み条約(FCTC)が2003年に採択され、2005年には我が国でも発効した。国際社会がタバコ会社の企業活動を封じ込め、タバコの非合法化以前に喫煙率をゼロに近づけ、タバコ戦争に終止符を打つための最強の武器である。

 その後の10年間で各国政府が屋内全面禁煙、大幅増税、画像警告、広告・スポンサー禁止などの規制を着実に実施しているのに対し、日本政府はFCTCをほとんど無視する姿勢を取り続けている。FCTC制定時に規制を骨抜きにしようとした日米独の三国は「悪の枢軸」と呼ばれたが、米独はすでに厳しい規制政策に転換している。2014年の喫煙大国ロシアに引き続き、2015年には韓国でも飲食店の全面禁煙や大幅増税が実施され、中国やインドネシアでも規制が進んでいる。日本が世界最低レベルの喫煙天国であることを多くの国民は認知していない。

 タバコ(喫煙)は生活習慣病ではない。食事や飲酒、運動などは「適度な生活習慣」が存在するが、適度な喫煙というのは存在しない。喫煙すること自体が病気であり、喫煙者は治療を要する患者であると9学会ガイドラインに明記されたのは2005年だが、一般社会のみならず医療関係者の間でもその認識は定着していない。

 タバコフリー世代をつくり、若者が自ら「タバコを吸わない」ことを選択するためには、無煙環境で育てることが必要であり、「子どもが吸うのは禁止されているが大人は自由だ」という認識を転換する必要がある。タバコを吸う自由や権利などではなく、タバコから自由(フリー)になることが肝要である。タバコは合法的であるが故に、麻薬や危険ドラッグより犠牲者が桁違いに多く危険だという合意が前提となる。

 未成年の喫煙率ゼロは出口の光が見えつつある。2011年の青森県の調査では、高3の喫煙経験率は2007年と比べて男女とも半分以下に低下している。一方で、中3では男女とも高3と大きな差がなく、2007年と比べても低下速度は鈍い。2015年の調査結果を期待したい。

 全国調査でも未成年の喫煙率は2000年以降直線的に低下しており、各種調査から、未成年は2020年以前、医師は2020年代前半、成人男女は2030年代前半までに喫煙率ゼロになると予測している。喫煙率を決める新規喫煙者数(未成年、成人=特に女性)、禁煙者数、死亡者数の4要素をみても、喫煙率が激減する以外の可能性はなく、タバコフリー社会の実現は夢物語ではない。ただし、青森県の子どもの父母の喫煙率は異常に高く、『最後の喫煙者』(筒井康隆)が青森県民となる蓋然性は高い。

 先の大戦、水俣病、薬害エイズ、原発事故などの歴史を見ても、この国の政府が合理的かつ国際的な判断の元に、国民の命を優先する政策に転換することを待つ猶予はない。国を置き去りにして現実を前に進めていくしかない。

 次の目標は大学生、主戦場は飲食店である。

 2013年以降、欧米では電子タバコが大流行し、米国では十代の経験率がシガレットを上回る事態となっている。日本でも流行が拡大しつつあり、20年以上にわたる国際的なタバコ規制の取り組みが無に帰する危機に瀕している。迅速かつ一致した対策が求められている。

「妊婦の喫煙と子どもの受動喫煙 タバコは最大の健康被害」県南周産期セミナー講演抄録(1/31)

2015年02月21日 | 禁煙・防煙
第37回 県南周産期セミナー
「妊婦の喫煙と子どもの受動喫煙 タバコは最大の健康被害」
平成27年1月31日(土)

 青森県の妊婦の喫煙率は2013年に4.6%と初めて5%を割り込んだ。ただし、これは妊娠判明後の公式な数字であり、実態はもう少し高いものと考えられる。一方、妊婦の同居者の喫煙率は5割を超えており、妊婦、胎児、新生児の受動喫煙は依然として深刻な状況にある。

 全国的にみても、2000年代から妊婦の喫煙率の低下傾向が明らかになっているが、年代別にみると若年層ほど高く、未成年妊婦の喫煙率は14.3%に達する(2010年)。

 近年、乳幼児突然死症候群の原因として致死的な遺伝性不整脈の関与が示されてきているが、出生前・出生後の喫煙・受動喫煙が最大のリスクファクターであることに変わりはない。

 妊婦の喫煙により流早産、周産期死亡、ダウン症を含む様々な先天異常、ADHDなどの発達障害が増加し、父親の喫煙でも二分脊椎などの先天異常が増加することは確定的となっている。

 低出生体重児の割合が2009年には9.6%に達し、平均出生体重は1940年代のレベルまで減少し続けている。その原因として妊娠前のやせや妊娠中の栄養摂取不足が指摘されているが、若年女性の喫煙率が2000年前後まで増加し続けてきた事実がしばしば忘れ去られている。

 低出生体重児が成人期の心血管疾患、高血圧、2型糖尿病のハイリスクであるというBarker仮説や、胎児期や乳幼児期の環境変化に対応してDNA塩基配列の変化を伴わないエピジェネティック変化(DNAのメチル化やヒストン修飾など)が生じて3世代まで連鎖するというDevelopmental Origins of Health and Disease(DOHaD)仮説が受け入れられてきている。妊娠中の喫煙・受動喫煙が児の成人後だけでなく次の世代にまで影響する可能性が示唆されているのである。

 喫煙者は月経困難症の頻度が有意に高く、喫煙開始年齢が早いほどリスクは高くなる。

 親の喫煙と本人(男女とも)の喫煙は不妊の大きな要因となっており、不妊治療希望者は夫婦ともに禁煙することを条件とすべきである。

 喫煙は男性で10年、女性で11年寿命を縮め、喫煙女性の死亡率は非喫煙者の3倍で、50~70歳の死亡の2/3は喫煙が原因である(いずれも英国の調査)。喫煙者の肌や容貌は40代を過ぎるとSmoker’s faceと称される特徴が明らかとなる。タバコは老化促進剤である。

 妊娠可能年齢の女性に多い子宮頸がんや乳がんは、喫煙が大きなリスクファクターであるにも関わらず、その危険性はほとんど伝えられていない。閉経前の女性では受動喫煙でも乳がんのリスクは約2倍に高まる。

 個人差が大きいが、禁煙治療後に体重は2kg程度増加することが多い。しかし、実際には喫煙者の方が肥満は多く、喫煙してやせようとすることは自殺行為と言える。

 スリム、ライト、メンソールなどのブランドや、若い女性をターゲットとした巧妙なマーケティング戦略により、ティーンエイジャーが次々と「釣り上げられていった」結果として、妊婦・母親の喫煙が増加し、子どもの受動喫煙、子どもの喫煙開始へと悪循環が続いてきた。

 WHOタバコ規制枠組み条約(2005年発効)により、世界各国でスリムなどの名称禁止、メンソールの使用禁止、スポーツやイベントへのスポンサー活動禁止など、タバコ産業への厳しい規制が加えられてきたが、日本国内では有効な対策がほとんど実施されず、女性向け景品付きのブランドがコンビニの店頭でキャンペーン商品として売られている特異な状況にある。

 大学生世代の男女の喫煙防止と、出産後の再喫煙防止対策が不足していた。運動は依存症、うつ、ストレス、加齢の特効薬であり、産後うつ予防、育児支援・虐待予防、再喫煙防止の3つと運動をセットで支援することを提案したい。