踊る小児科医のblog

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「禁煙治療+運動」で脳内ドーパミン回復(下) 禁煙には運動が特効薬・ストレス解消・アンチエイジング

2015年07月17日 | 禁煙・防煙
#後半は禁煙に運動を併用することで悪循環を脱して一石三鳥以上の効果が期待できるということの説明です。
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●「禁煙治療+運動」が特効薬 生理的ドーパミン回復 ストレス解消 アンチエイジング



a. ただ普通に禁煙すればドーパミン欠乏のため失敗する可能性が高い。依存症という病気のためで、意志とは無関係。

b. 禁煙補助薬によってドーパミン欠乏を補いながら禁煙すれば、楽に禁煙できて成功率も高くなります。失敗しやすいのは「ストレス解消神話」から解放されていない人です。

c. 12週間の禁煙治療の期間の間に、タバコのニコチンにより失われていた「自分でドーパミンを出す能力」が回復してきます。ニコチンがなくても安定したドーパミンのレベルが維持され、イライラやストレスを感じなくなり、最後に薬を中止してもリバウンドはありません。

d. 禁煙のスタートと一緒に運動を始めるようにすると、禁煙初期の喫煙欲求を運動によるドーパミン分泌で解消することができます。運動はニコチン依存症だけでなく、ほとんどの依存症の特効薬なのです。

e. 依存症患者は一般に自己肯定感が低く、何かあるとタバコや酒などに頼ろうとする傾向がありますが、運動による達成感の積み重ねにより、自信と自己肯定感が高まり、再び喫煙する可能性が減少します。

f. 結果的に、禁煙補助薬と運動を併用することにより、禁煙の成功率も高くなることが期待できます。

g. 禁煙すると、一時的な口寂しさから食べる量が増えて、体重が 3kg 程度増えることがありますが、禁煙と一緒に運動を始めることで、この一時的な体重増加を防ぐことができます。

h. 禁煙で味覚が回復し、薄味やだしの味がわかるようになり、塩分や糖分の摂取が減ります。運動が習慣化するとライフスタイルも自然に改善し、ヘルシーな食べ物を好むようになり、肥満も減少します。

i. うつ病や抑うつ傾向の人は、ストレスへの対処能力が低く、身体活動も低下しています。タバコを吸いながら薬を飲んだりストレス対処法を学んでも良くなりません。「禁煙+運動」により悪循環から脱出して、ストレス対処能力も高まり、うつ病の程度を軽くしたり薬を少なくすることも可能になります。

j. 産後の再喫煙の予防にも運動が有効です。産科や育児サークルなどの教室への参加もお勧めできます。

k. 運動の種類は何でも構いません。短時間の喫煙欲求を解消するためなら、体操や運動器具による軽い運動でも効果があります。ある程度の達成感を得てストレスを解消するためには、30~40分以上の有酸素運動(ウォーキングやジョギングなど)がお勧めです。無理なく続けられるものを選択して下さい。

l. 息切れしない程度の運動量から徐々に増やしていけば、若い頃の運動能力に近づいていきます。

m. 最終的に、「ストレス解消神話」がウソだということを、紙の上の知識だけでなく、自らのドーパミン分泌が回復して「タバコは全く不要のもので百害あって一利なしだった」と体感することにより理解できれば、「心理的依存」という「タバコの呪縛」から解き放たれ、一生後戻りすることはなくなります。それを実感して維持していくためには、運動習慣が最も有効だと考えられます。

n. 青森県が最短命県から脱出するためには、食事(塩分・糖分)、飲酒、運動、ストレス対策などを別々に行うのではなく、喫煙者は必ず禁煙するところからスタートし、「喫煙・肥満・うつ」の三角形を好循環に変えるために、「禁煙治療+運動」をベースにして他の対策を積み重ねていくことが必要です。

o. 運動には老化防止効果があり、「禁煙+運動」は認知症予防、アンチエイジングの特効薬と言えます。

「禁煙治療+運動」で脳内ドーパミン回復(上)「タバコでストレス解消」はウソ 喫煙・肥満・うつの悪循環

2015年07月17日 | 禁煙・防煙
#患者さんだけでなく、一般、教育(子供・親)、行政、医療関係者にも説明するための資料(裏表2ページ)を作成したので、2回に分けて掲載します。前半は「ストレス解消」はウソで、タバコを吸いながら悪循環に陥っている状態についての説明。後半は禁煙+運動が悪循環脱出の特効薬であることについて。
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●「タバコでストレス解消」は真っ赤なウソ 喫煙でストレス増加 禁煙でストレス減少

喫煙者も非喫煙者もだまされている「ストレス解消神話」から解放されることが、スタートでもありゴールでもあります。



a. タバコを吸うと、吸収されたニコチンが脳の中でドーパミンという神経伝達物質を増やします。ドーパミンが脳の特定の部位を刺激すると、快感や達成感などを感じます。

b. やはりタバコでストレスを解消しているのではないかと思うかもしれませんが、ここでだまされてはいけません。元々ドーパミンを出す能力は全ての人が持っています。運動後の爽快感、受験に合格した時の達成感、美味しいものを食べた時や性的快感などにもドーパミンは関与しています。

c. ところが、喫煙者は外から摂取したニコチンによる強い刺激でドーパミンを出すことを繰り返していると、ニコチンが切れた時に自分でドーパミンを出す能力がなくなってしまい、ドーパミン欠乏のため常にイライラして満足感が得られない状態に陥ります。そして、タバコを吸った時だけ一時的にニコチンが供給されてドーパミン不足が補われると「ストレスが解消された」と感じるのです。

d. これは麻薬などの薬物依存症の離脱症状と同じで、ニコチン依存症という病気の症状そのものです。

e. この「ニコチン切れのストレス」は、非喫煙者にはありません。喫煙によって増えたストレスです。

f. 実際にストレスの程度を測定すると喫煙者の方がストレスは多く、禁煙するとストレスは減少します。(禁煙するとストレスが増えると感じるのは、上記の「ニコチン切れのストレス」のことです)

g. うつ病や抑うつ傾向の人はドーパミンが低下しており、喫煙者にはうつ病が多く、うつ病の人には喫煙者が多い。喫煙本数が多いほど抑うつ傾向は強く、自殺率も高くなります。喫煙とうつの悪循環です。

h. 妊娠中に禁煙しても、出産後に「育児ストレス」から再び吸い始める人が多く、ストレスを解消するつもりが実際にはストレスは増加し、育児不安が高まって虐待へと繋がっていきます。データは公表されていませんが、報道されるような虐待事例の両親のほとんどは喫煙者だと関係者は口を揃えます。

i. 喫煙者は、ドーパミン欠乏がタバコで一時的に解消されるという体験を繰り返すことにより、アルコールや危険ドラッグなどの依存症を合併する頻度が高くなります。これも公表されていませんが、ドラッグで検挙される人のほとんどは喫煙者であり、タバコはゲートウェイ・ドラッグと呼ばれています。

j. 喫煙者は薄味やだしの味がわからず、味が濃くて糖分の多いラーメンや牛丼のような食べ物を好みます。やせるためにタバコを吸い始める人もいますが、喫煙者の方が肥満や糖尿病の割合が高いのです。

k. 運動によりドーパミンは高まりますが、うつ病の人は運動不足で、喫煙者も運動習慣のない人が多い。喫煙者は呼吸機能が低下しており、すぐに息切れがして、運動を続けることができなくなっています。

l. 「喫煙・肥満・うつ」の三つはお互いに悪影響を及ぼし、悪循環に陥っています。この「三角形」が、青森県が最短命県である原因であり、別々に対策を取っていたのでは改善は期待できません。

m. 「喫煙・肥満・うつ」の三角形は、早死にだけでなく老化や認知症の早期発症にもつながります。喫煙者はスモーカーズ・フェイスと呼ばれるように顔貌も肌も早くに老化し、認知症の頻度も高いのです。